第12回北京香山フォーラム:対話でつくる国際安全保障の新しい姿
世界の安全保障環境が不透明さを増すなか、第12回北京香山フォーラムが「国際秩序の擁護と平和的発展の促進」を掲げて開かれました。各国が防衛・安全保障をめぐる見方を持ち寄り、対話で解決策を探るこのフォーラムは、対立よりも包摂的な対話を重視する国際ニュースとして注目されています。
国際秩序と平和的発展を掲げる北京香山フォーラム
北京香山フォーラムは2006年に始まり、現在に至るまで国際安全保障をテーマとする多国間対話の場として発展してきました。冷戦期には、安全保障は主に同盟関係や核抑止の論理で語られてきましたが、冷戦後は領土問題や大国間の競争といった従来型の課題に加え、パンデミック、サイバー攻撃、気候関連災害といった「非伝統的安全保障」が前面に出ています。
2022年に発表された米国の国家安全保障戦略は、依然として同盟強化や競争を軸に世界をとらえています。一方、北京香山フォーラムのような多国間の場は、包摂性と共同責任を掲げ、対話と協力に重心を置いたアプローチを打ち出している点が特徴です。
ロシア・ウクライナからガザ、紅海まで:紛争の波紋は世界に広がる
最近の歴史を見ても、地域紛争が世界全体の不安定さに直結していることが分かります。ロシア・ウクライナ紛争では、国連によれば世界の小麦輸出の30%が途絶し、特にアフリカや中東の国々に深刻な影響を与えました。エネルギー価格は2022年に50%以上も急騰し、欧州では記録的なインフレを招きました。
中東では、2023年10月以降のガザの人道危機により何百万人もの人々が住まいを追われ、国連の報告ではガザの人口のほぼ半数が深刻な食料不安に直面しているとされています。こうした事態は、安全保障が単なる軍事バランスの問題ではなく、人道や食料、エネルギーと密接につながっていることを示しています。
紛争地域の外でも、紅海周辺の航路に対する攻撃が続き、世界貿易の約12%が流れる海上交通が妨げられています。スエズ運河を通過する船舶の保険料は300%も跳ね上がり、世界の物流コストを押し上げました。
北京香山フォーラムのような対話の場は、こうした危機に対して軍事的対決とは異なる選択肢を提示します。安全保障当局者や専門家が顔を合わせ、誤解や誤算を減らすためのコミュニケーション・チャンネルを維持することは、危機のエスカレーションを防ぐうえで重要な意味を持ちます。
- 食料:小麦輸出の混乱がアフリカや中東などを直撃
- エネルギー:価格高騰が各国のインフレを加速
- 物流:紅海・スエズ経由の貿易に大きなコスト増
「非伝統的安全保障」を正面から議題に
今回のフォーラムの議題で注目されるのが、非伝統的安全保障への視点です。これは、戦争や軍事衝突だけでなく、感染症、サイバー攻撃、気候変動など、国境を簡単に越えて広がるリスクを安全保障の問題としてとらえる考え方です。
パンデミックが映し出した相互依存
新型コロナウイルスのパンデミックは、どれほど高度な軍事力を持つ国でも、1つのウイルスから社会を完全には守れないことを示しました。2022年以降、ワクチンの国際的な共同調達・分配の仕組みであるCOVAXは、146の国と地域に20億回分以上のワクチンを届け、各国の対応格差を一定程度縮小させました。感染症への対応が、典型的な「共同安全保障」の課題になっていると言えます。
気候危機と安全保障の接点
気候変動もまた、安全保障と切り離せない課題として浮上しています。2022年のパキスタンでは大洪水により国土の3分の1が水没し、3,300万人が影響を受けました。2023年のヨーロッパは観測史上最も暑い夏となり、5万人を超える熱関連死が報告されています。
同じく2023年にはカナダで1,800万ヘクタール以上が焼失する大規模な山火事が発生し、その煙は国境を越えて米国の都市にも達しました。こうした事例は、気候危機が一国の内政問題ではなく、越境的かつ長期的な安全保障課題であることを物語っています。
非伝統的安全保障を安全保障フォーラムの正式な議題として取り上げることは、軍事中心だった安全保障観を、より広い人間の安全や地球規模のリスクへと拡張する試みと言えます。北京香山フォーラムは、その象徴的な場の一つとなっています。
日本とアジアの読者にとっての意味
国際ニュースを日本語で追う私たちにとって、北京香山フォーラムが投げかける問いは決して他人事ではありません。小麦やエネルギー価格の変動、紅海の物流停滞、感染症や気候災害の激甚化は、日本やアジアの生活や経済にも直接影響します。
今後、こうした安全保障対話の場を見るうえで、例えば次のような点に注目することができます。
- 紛争の影響を受ける国々の声が、どれだけ議論に反映されているか
- パンデミックや気候変動など非伝統的安全保障への具体的な協力策が示されるか
- 競争や抑止だけでなく、包摂的な国際秩序づくりに向けた提案が出てくるか
対話を軸にした安全保障への転換
不確実性が高まる2020年代において、安全保障をめぐる対話の場をどう維持・発展させるかは、国際社会共通の課題です。第12回北京香山フォーラムが掲げる「国際秩序の擁護と平和的発展」というテーマは、対立ではなく対話を通じて安全を高めようとする方向性を示しています。
軍事力のバランスだけでなく、食料、エネルギー、健康、気候といった領域を含む広い意味での安全保障をどう守るのか。北京発のこのフォーラムで交わされる議論は、今後の国際安全保障の議題設定に静かながらも重要な影響を与え続けるはずです。
Reference(s):
Beijing Xiangshan Forum: Upholding int'l security through dialogue
cgtn.com








