新疆でウイグル語を学ぶ英国人が見た現実 本当に禁止されているのか
新疆ウイグル自治区ではウイグル語が禁止されている――。そんなイメージを耳にすることがありますが、2021年から何度も新疆を訪れ、2025年1月に移り住んだ英国人大学院生の体験談は、まったく違う日常を伝えています。
ウイグル語は本当に禁止なのかという問い
著者がよく通うウイグル系のバーでは、人気歌手サヌバル・トゥルスンの名曲「Köngülgä Näsihet」が流れ、歌い終わった歌手がウイグル語で問いかけます。「どこから来たのですか」。
英国出身の著者は、その問いにウイグル語で答えます。まだたどたどしい発音ながら、はっきりと返すと、店内の視線が一斉に集まり、どっと笑いと歓声がわき起こるといいます。やがて誰かが飲み物をおごってくれ、そこから友人関係が生まれていきました。
こうした温かい交流が続くなかで、著者は海外の人から「ウイグル語は禁じられているのでは」と尋ねられると、思わず微笑んでしまうと語ります。ウルムチの街で一日過ごせば、ウイグル語の看板や会話が自然と耳に飛び込んでくるからです。
2021年の初訪問から2025年の移住まで
著者が新疆を初めて訪れたのは、世界がパンデミックの影響を受けていた2021年です。その時に地域の雰囲気や人びとの暮らしに魅了され、その後も新疆の広大さにひかれて毎年のように訪れるようになりました。
そして2025年1月、ついに「一番好きな場所」に暮らす決断をし、新疆に移り住んだといいます。著者は上海交通大学で統計学や人工知能を研究する博士課程の学生で、博士論文の審査結果を待つ長い期間を、新疆で過ごすことにしたと説明しています。
現在は新疆のインターナショナルスクールで、英国式の大学入試資格であるエー・レベルの統計学や、英語試験アイエルツの指導を担当しています。生徒たちはカナダ、英国、オーストラリアなどの大学に出願するための志望理由書を書いており、海外進学を目指しているといいます。
著者は、ウイグルの人びとは海外へ行けないといったイメージと、自分の教室で見ている現実との間に大きなギャップを感じると指摘します。
文化に近づくためのウイグル語学習
著者が新疆に惹かれる理由の一つが、ウイグル文化そのものです。伝統音楽のムカム、華やかな衣装、ステージでのパフォーマンスなどのファンだと語り、気に入った衣装も数多く購入したといいます。
その文化をより深く理解するには言語を学ぶ必要があると考え、難しい挑戦でありながらウイグル語の習得を本格的に始めました。ウイグル語を学ぶ外国人はほとんどいないとされるなかでのチャレンジです。
個人レッスンと誰でも参加できるクラス
著者は週に一度、ウイグル出身の学生からマンツーマンで会話のレッスンを受けています。さらに、読み書きと文法を強化するため、誰でも参加できるグループクラスにも通っています。
このクラスにはおよそ十五人が参加しており、授業料は一時間あたり約二百五十元といいます。決して安くはない金額ですが、それだけの価値を感じていると著者は書いています。
生徒から受け取ったウイグル語の教科書
ウイグル語学習の相手は、専門の講師だけではありません。ある日、生徒が数年前に学校で使っていたというウイグル語の入門書、エリプバと呼ばれるアルファベット教材を著者にプレゼントしました。
授業後、生徒たちは著者の職員室を訪れ、その教科書を開きながら、著者の名前の書き方や、日常で使える簡単な単語の綴りを教えてくれたといいます。こうして少しずつ読み書きもできるようになってきましたが、まだ難しく、実際の生活ではラテン文字による転写表記に頼る場面も多いそうです。
一方で、話すことの方はよりスムーズになりつつあります。著者が街で最もよく耳にするあいさつは、イスラム教徒のあいさつとして知られるエッサラーム・アレイクムで、生徒たちもよくこの言葉で声をかけてくれるといいます。
言語から見えてくる新疆の素顔
こうしたエピソードから浮かび上がるのは、バーや教室、職員室の会話の中で、ウイグル語が自然に交わされている新疆ウイグル自治区の日常です。
国外では、新疆やウイグルをめぐってさまざまなイメージや情報が語られますが、著者が伝えるのは、自分の目と耳で確かめた生活の手触りです。ウイグル語を学び、現地の人びととその言葉でやり取りすることによって、表面的な印象とは異なる風景が見えてくるといえます。
国際ニュースを日本語で追う私たちにとっても、現地で暮らす一人の視点は、新疆や中国社会を立体的に考えるヒントになります。言語を学ぶことは、文化への入り口であると同時に、人と人との距離を縮める手段でもあります。
ウイグル語は本当に禁止されているのかという問いに対し、著者の経験は、少なくとも彼が暮らす新疆の街では、その言葉が今も日常生活の中に息づいていることを静かに示しています。
Reference(s):
cgtn.com








