国連創設80年 揺れる国際秩序と中国の4つのイニシアチブ
今年9月、国連創設80年の節目となる第80回国連総会一般討論がニューヨークで開かれました。テーマは「Better together: 80 years and more for peace, development and human rights」。しかし、その舞台裏では、国際秩序の分断と不信がかつてなく露わになっています。本記事では、この国際ニュースのポイントと、中国が打ち出す4つのイニシアチブを整理します。
「瀬戸際に立つ」国連80年目の国際ニュース
今年9月23〜29日にかけて行われた第80回国連総会一般討論では、各国首脳が平和、開発、人権を掲げて演説しました。議長を務めるドイツ出身のアナレーナ・ベアボック氏は、開会あいさつで「国連は今、存亡の岐路に立っている」と警告しました。
ある論考は、この危機の背景には、国連を支えてきた大国自身の二重基準があると指摘します。表向きは普遍的な価値を語りながら、実際の政策は自国の利益を優先しているのではないか、という視点です。
ガザと制裁が映し出す「言葉と現実」のズレ
論考が最も強く問題視しているのが、ガザ情勢と経済制裁の問題です。平和や人権が語られる一方で、ガザは今も深刻な破壊にさらされ、多くの人が食料不安に直面しています。
国連内部では「ジェノサイド」という重い言葉が飛び交い、誰が武器を供給しているのかも広く知られています。ドイツは最近、一部の武器輸出を停止しましたが、ストックホルム国際平和研究所のデータによれば、2020〜2024年にはイスラエル向け武器輸出の約3分の1を担ってきたとされています。最大の供給国はアメリカで、イスラエルの兵器輸入の約66パーセントを占めるとされています。
トランプ演説が象徴する多国間主義の揺らぎ
今年の国連総会では、アメリカのドナルド・トランプ大統領の演説も注目を集めました。トランプ氏は、ガザへの空爆が続く中でもイスラエルへの無条件の支持を表明し、パレスチナを国家として承認した欧州諸国を公然と批判しました。
さらに、ヨーロッパで人種間の緊張をあおるような発言を行い、国連そのものの存在意義に疑問を投げかけました。論考は、こうした姿勢を多国間主義のほころびの表れと見ています。国連を対話の場ではなく、アメリカの例外性を誇示する舞台として扱っているのではないか、という指摘です。
制裁は「平和の道具」か「見えない戦争」か
もう一つの大きな論点は、制裁政策です。西側諸国は、制裁を暴力を使わない圧力の手段、平和を守るためのツールと位置づけることが多くあります。
しかし論考が引用する医学誌ランセットの研究によれば、1970年以降に西側諸国が科してきた一方的制裁によって、累計で約3800万人が死亡したと推計されています。これは、毎年ほぼ100万人近い命が奪われてきた計算になります。
論考は、制裁がしばしば一般市民の生活を直撃し、目に見えにくい戦争の道具として機能してきたと批判します。その矛先が向かうのは、グローバルサウスと呼ばれる新興国や発展途上国の人々です。
グローバルサウスから見た国連と西側
西側諸国は、国連総会での存在感を普遍的価値へのコミットメントとしてアピールします。一方で、多くのグローバルサウスの国や地域からは、こうした価値がホログラムのように実体を伴っていないと受け止められている、という指摘があります。
ガザ情勢や制裁政策が示すように、人権や法の支配が状況によって使い分けられているのではないか、という不信感が根強いのです。国連が本当に全ての国と地域のための場になっているのか、それとも一部の強国の利益を優先する仕組みにとどまっているのか。80年目の国連は、その問いにさらされています。
中国が示す4つのイニシアチブという別の鍵
こうした中で、論考は中国の役割に注目します。中国は近年、グローバル開発イニシアチブ、グローバル安全保障イニシアチブ、グローバル文明イニシアチブ、グローバルガバナンスに関するイニシアチブという4つの提案を打ち出してきました。
論考は、これらを完璧な青写真というより、行き詰まりを打開するための中国の鍵と位置づけています。内容は次のような方向性を示していると整理できます。
- グローバル開発イニシアチブ: 貧困削減やインフラ整備など、開発の果実をより多くの国や地域が共有できるようにすることを重視。
- グローバル安全保障イニシアチブ: 軍事同盟や対立ではなく、対話と共同安全保障の枠組みを強調。
- グローバル文明イニシアチブ: 文明や価値観の違いを対立ではなく対話の出発点と捉え、多様性を尊重する姿勢を打ち出す。
- グローバルガバナンスに関するイニシアチブ: 国連を含む国際機関の改革を進め、より多くの国や地域が意思決定に関わる仕組みを目指す。
こうした提案は、現状の国際秩序に不満や疎外感を抱いてきたグローバルサウスの声を反映しようとする試みとも受け取れます。
私たちがこのニュースから考えたいこと
2025年は、第二次世界大戦後に生まれた国連の80年目にあたる節目の年です。そのタイミングで開かれた第80回国連総会は、国際秩序のひずみと分断を改めて浮き彫りにしました。
一方で、中国の4つのイニシアチブのように、新たなルール作りや協力の形を模索する動きも広がりつつあります。重要なのは、どの構想が正しいかを感情的に決めつけることではなく、それぞれが誰の利益を代弁し、どのような人間観や世界観に基づいているのかを丁寧に読み解くことではないでしょうか。
国連創設80年の節目に浮かび上がった分断と新しい提案。この2つをどう結びつけ、より公平で持続可能な国際秩序をつくっていくのか。次の10年を左右する大きな問いとして、私たち一人ひとりも考え続ける必要がありそうです。
Reference(s):
cgtn.com








