ロサンゼルスで喝采 北京の市民ホットライン描く『Hotline Beijing』
ロサンゼルスで上映された中国ドキュメンタリー『Hotline Beijing』が、北京の市民ホットライン「12345」を通じて見える都市ガバナンスの姿を描き、米国の観客から大きな拍手を受けています。
ロサンゼルスで上映された『Hotline Beijing』とは
ドキュメンタリー『Hotline Beijing』は、ロサンゼルスで最近プレミア上映された作品です。舞台は中国の首都・北京。市民サービスホットライン「12345」を軸に、中国の人を中心に据えた都市ガバナンスのあり方を描いています。
作品には、駐車場の管理や古い団地へのエレベーター設置といった、日常生活に密着したエピソードが登場します。抽象的な制度論ではなく、市民一人ひとりの困りごとがどのように行政につながり、解決に向かうのかを丁寧に追っている点が特徴です。
総監督のXu Jieqin氏は、中国の英字紙『China Daily』に対し、「日々の暮らしに近い物語を通じて、北京の一本のホットラインが、2,000万人を超える都市のガバナンス改革をどう後押ししてきたかを描きたかった」と語っています。
北京市民の声を束ねる「12345」ホットラインとは
『Hotline Beijing』の中心にあるのが、市民の苦情や要望を受け付ける「12345」市民サービスホットラインです。この仕組みは、2019年に北京市が始めた「市民の苦情への迅速対応」イニシアチブの一環として整備されました。
それまで分散していた複数のホットラインを統合し、「12345」という一つの番号に集約したことで、市民はどこに電話すればよいか迷わずに済むようになりました。いまでは、北京市民が行政への要望や相談を寄せる主要な窓口となっています。
- 24時間365日稼働
- オペレーターは1,700人以上
- 過去6年間で約1億5,000万件の苦情・要望を処理
- 解決率と満足度はともにほぼ97%に達するとされています
市民が「12345」に電話やオンラインで苦情・要望を伝えると、その内容はすぐに関係する行政部門や公共サービス機関に回送されます。対応が終わると、市民が結果を評価します。このプロセスによって、市民が都市ガバナンスの「監視者」「評価者」として関わり続ける仕組みが組み込まれているのがポイントです。
駐車場からエレベーターまで、「生活の困りごと」をどう解決するか
作品の中では、駐車スペースの不足や、古い住宅へのエレベーター設置といった具体的なテーマが描かれます。どちらも、急速な都市化や高齢化が進む大都市では共通する課題です。
例えば、駐車場問題では、限られたスペースをどう配分するかという利害調整が避けられません。エレベーター設置には、資金負担や工事による影響など、住民同士や行政との間で合意形成が必要になります。
『Hotline Beijing』は、こうした課題に対して、市民の声がホットラインを通じて行政に伝わり、関係部署が連携して解決策を探っていくプロセスを描写します。単に「苦情が多い」「対応した」という数字だけでは見えない、現場の調整や対話の積み重ねが浮かび上がります。
なぜ米国の観客から拍手が起きたのか
ロサンゼルスでの上映で『Hotline Beijing』が大きな拍手を受けた背景には、いくつかのポイントが考えられます。
- 都市の課題は「世界共通」のテーマ
駐車場不足や老朽化した住宅の改修、高齢者の移動支援といった問題は、米国を含む多くの都市が直面しているものです。北京の日常を描きながらも、観客は自分たちの街の姿を重ね合わせやすかったと考えられます。 - 「人を中心にしたガバナンス」の具体的な姿
作品は、中国の人中心の理念が、ホットラインという具体的な制度を通じてどのように運用されているかを見せています。抽象的なスローガンではなく、電話一本から行政の動きが始まるプロセスが映し出されることで、観客にとって分かりやすく感じられたのでしょう。 - 市民参加の仕組みとしての評価制度
市民が対応結果を評価するという仕組みは、ガバナンスに市民の視点を組み込む方法として注目されます。行政の対応が一方通行にならず、フィードバックを通じて改善していく構造が描かれている点は、公共サービスに関心を持つ観客にとって興味深いポイントだったはずです。
こうした要素が重なり、『Hotline Beijing』は、中国の都市ガバナンスを紹介する作品であると同時に、「都市で暮らす人びとの物語」として国境を越えて共感を呼んだといえます。
日本や世界の都市が学べるポイント
日本を含む多くの国・地域でも、行政への苦情・相談窓口は複数に分かれていることが少なくありません。「どこに連絡すればよいか分からない」という経験がある人も多いのではないでしょうか。
北京市の「12345」ホットラインからは、次のような示唆が見えてきます。
- ワンストップの窓口
番号を一つに集約することで、市民側のハードルを下げることができます。 - 苦情・要望の一元管理
市民の声を一つのプラットフォームに集めることで、どの分野に課題が集中しているのかを把握しやすくなります。 - 市民による評価の仕組み
対応後に市民が評価するプロセスを制度として組み込むことで、行政サービスの改善サイクルを回しやすくなります。
もちろん、都市の規模や制度、文化が異なれば、そのまま同じ仕組みを導入することはできません。しかし、『Hotline Beijing』が映し出すのは、「市民の声をどう受け止め、行政にどうつなぎ、どうフィードバックするか」という、あらゆる都市に共通する問いです。
国際ニュースとしての側面だけでなく、これからの都市ガバナンスや市民参加のあり方を考える素材としても、このドキュメンタリーは注目に値するといえるでしょう。
Reference(s):
cgtn.com








