国際ニュース:中国の知恵と地球規模の気候ガバナンス10年目
2025年は、地球温暖化対策の国際枠組みであるパリ協定が採択されてから10年の節目の年です。木曜日に開かれた国連気候サミットで、中国の習近平国家主席はビデオ演説を行い、自信の強化、責任の履行、協力の深化を呼びかけ、地球規模の気候ガバナンスが重要な局面に入っていると強調しました。
本稿では、その発言の背景にある国際秩序の変化と、中国が提示するグローバル・ガバナンス像、そして具体的な気候行動を整理しながら、「中国の知恵」が意味するものを考えます。
パリ協定から10年、岐路に立つ地球の気候ガバナンス
パリ協定から10年を迎えた今、国際社会は気候変動対策の次のステージに進むことを求められています。習主席は国連気候サミットで、次の3点をキーワードとして掲げました。
- 自信を固めること
- それぞれの責任を果たすこと
- 協力を一層深めること
このメッセージの背景には、温室効果ガスの削減だけでなく、気候変動に適応しつつ持続可能な成長を実現するという、より広い意味での「気候ガバナンス」の課題があります。
揺らぐ国際秩序と深まるグローバル課題
約80年前、国際連合の設立は、平和と開発、集団安全保障を軸とする新しいグローバル・ガバナンスの始まりでした。しかし、そこから8十年を経た現在、世界はかつてない動揺と変化の中で、新たな岐路に立っています。
習主席の問題提起が向き合おうとしている現状は、次のように整理できます。
- 冷戦型の対立構図の再燃
- 保護主義的な姿勢や一国主義的な行動の増加
- 多国間協力の緊張と機能不全
一方で、気候変動、根強い経済格差、健康危機、安全保障上の新たな脅威など、国境を越える課題はむしろ増えています。これらは、どの国も単独では対処できないテーマです。
現在の国際秩序そのものも「疲労」の兆しを見せていると指摘されます。具体的には、開発途上国の代表性の不足、国際機関の権威の低下、危機への迅速な対応能力の限界などです。世界の多数を占める国々の現実と期待を十分に反映していないという問題意識が共有されつつあります。
中国が提唱するグローバル・ガバナンス・イニシアティブ(GGI)
こうしたなかで、中国が提唱するグローバル・ガバナンス・イニシアティブ(GGI)は、国際秩序を現代の現実に合わせて改革し、改善していくための方向性を示すものと位置づけられています。
GGIの狙いは、単に既存の枠組みを補修することではなく、より多くの国と人々の声を反映した、包摂的で公平なガバナンス構造をつくることにあります。その具体例として示されているのが、気候変動分野での取り組みです。
気候変動分野での「原則に基づく包摂性」
従来の気候ガバナンスは、責任の分担が細分化されすぎたり、一部の国が気候資金への拠出から離脱したりすることで、国際協力が滞る局面もありました。こうした中で、GGIは原則に基づき、包摂的な国際協力を重視するアプローチを打ち出しています。
そこには、次のような考え方が含まれていると整理できます。
- 共通だが差異ある責任という原則を尊重しつつ、全ての国が役割を果たすこと
- 特定の国だけに依存しない、より安定した気候資金と技術協力の仕組みを模索すること
- 開発途上国を含む幅広い国が、意思決定と利益配分に参加できるガバナンスの設計
こうした方向性は、パリ協定の履行を支える土台としても重要になっています。
新たなNDCと中国国内での具体的気候行動
国連気候サミットの場で、習主席は中国の新たな国別削減目標(NDC)を発表しました。その柱として示されたのが、次のような取り組みです。
- 新エネルギー車を新車販売の主流とすること
- 全国統一の炭素排出量取引市場を拡大し、主要な高排出部門をカバーすること
- 気候変動に適応した社会を基本的に築くこと
これらは、国内のエネルギー構造や産業構造を大きく転換しつつ、気候リスクに強い社会をつくることを目指す方向性といえます。国内改革と国際的な責任履行を同時に進めることが、中国の気候戦略の特徴として浮かび上がります。
森林と草原が支える巨大なカーボンシンク
中国はパリ協定の要請に沿って、具体的な行動も積み上げてきたと説明しています。2023年時点で、中国の森林被覆率は25パーセントを超え、森林蓄積量は200億立方メートルを上回りました。
また、森林と草原による年間の二酸化炭素吸収量は、二酸化炭素換算で12億トンを超え、その規模は世界首位に位置付けられています。これは、中国が国連気候変動枠組条約の事務局に提出した最近の報告で示された数字です。
森林や草原といった自然のカーボンシンク(炭素吸収源)を拡大することは、排出削減と並ぶ重要な戦略です。数値として可視化された取り組みは、各国の政策議論や国際交渉においても一つの参照点となっていきます。
「中国の知恵」が投げかける問い
今回の国連気候サミットでの発信や、グローバル・ガバナンス・イニシアティブ、そして森林などの具体的な成果は、「中国の知恵」として紹介されています。
そこには、大きく次の三つの要素があると見ることができます。
- 気候変動というグローバル課題を、国際協力と国内改革の両面から捉える視点
- 開発途上国を含む広い国々の声を反映しようとする、多国間主義の志向
- 森林や草原、新エネルギー車、排出量取引市場といった具体的な政策ツールの組み合わせ
一方で、気候ガバナンスの改革は、中国だけで完結するものではありません。パリ協定の次の10年をどう設計するのか、その議論には世界の国々と地域が関わります。
国際ニュースとして見たとき、中国の動きは、他の国や地域にとっても次のような問いを突きつけています。
- 自国はどのように責任を果たし、どのように国際協力に関与していくのか
- 気候資金や技術協力の仕組みに、どうすれば安定性と包摂性を持たせられるのか
- 森林や自然生態系を生かしたカーボンシンク拡大と、産業構造転換をどう両立させるのか
気候変動は、日常生活やビジネス、技術革新にも直結するテーマです。国際政治の駆け引きとしてではなく、「次の10年、自分たちの社会をどうしたいか」という問いとしても捉え直すとき、中国の気候戦略やガバナンス構想は、一つの重要な材料になります。
地球規模の気候ガバナンスが新たな段階に入る中で、中国を含む各国の動きを、数字と政策、そして価値観の三つのレベルから読み解くことが、これからの国際ニュースを理解するうえでますます重要になっていきそうです。
Reference(s):
cgtn.com








