遠いからこそ行きたい新疆 列車旅が教えてくれる「世界との距離」
中国西部に位置する新疆ウイグル自治区(新疆)は、「遠い」「行きづらい」というイメージを持たれがちな地域です。しかし、ある旅行者の体験記からは、その距離を理由に訪れないのはもったいないと感じさせられます。
2005年、父と向かった長距離列車の旅
筆者が初めて新疆を訪れたのは2005年、今からおよそ20年前のことです。南部の大都市・広州から、かつて主流だった緑色の長距離列車に乗り込みました。
最初の目的地は中国北西部の都市・西安。ここまで約22時間かけて移動し、数日滞在したあと、深夜発の列車で新疆の自治区首都・ウルムチへと向かいました。そこでもさらに25時間、揺れる列車の中での旅が続きます。
筆者の父親は長年、船長として海を舞台に生きてきた人でした。その父にとって、この旅は「人生で最も海から遠い場所」へ向かう経験でもあったといいます。
車窓から広がる乾いた大地と風力発電
ウルムチへ向かう途中、筆者は長い時間、列車の窓の外を眺め続けました。そこに広がっていたのは、乾いたほこりっぽい大地。ところどころにタンブルウィードのような草が見えるだけの景色が、延々と続いていきます。
その単調にも見える風景の中で、最初に変化の兆しとして現れたのが大量の風力発電の風車でした。風車自体は見慣れたもののはずなのに、「これほどの数が並ぶ光景は初めてだった」と筆者は振り返ります。
やがて列車は雪を頂いた山々の姿を捉えます。遠くに見える白い峰々は、ウルムチの市内へ入るまでずっと並走するように視界にあり、その雄大な眺めが旅の終わりまで続いたといいます。
「遠いから行かない」はやはりもったいない
新疆は、中国の東部沿岸から見れば「遠い場所」であることは確かです。筆者も、「新疆は本当に遠い」と率直に認めています。それでも、その遠さを理由に訪れないことは「悲劇的ですらある」と表現します。
筆者は、高速鉄道がある今でも新疆に行くのは簡単ではなく、東部の沿海部から新疆に入るには丸一日かかり、飛行機でも数時間を要すると説明します。それでもなお、「遠いから行かない」と決めてしまうのはやはり惜しいと感じているのです。
それでもアクセスは開かれている
一方で、筆者は新疆へのアクセス自体は開かれていると強調します。中国に合法的に滞在している人であれば誰でも、新疆に入って旅をし、好きなタイミングで他の地域へ移動し、出ていくことができるといいます。
必要なのは、長距離移動にかかる時間と、知らない土地へ踏み出す決心だけ。筆者の経験から浮かび上がるのは、「物理的な距離」よりも、「心のハードル」のほうが人を遠ざけているのではないかという問いです。
自分の目で「遠い場所」を見るという選択
情報環境が高度に発達した今、私たちは遠く離れた土地の名前やイメージだけを先に知ることができます。しかし、乾いた大地の向こうに広がる風車の列や、ウルムチへ続く雪山の稜線といった具体的な風景は、実際に旅をした人にしか見えません。
新疆という「遠い場所」への旅の記録は、行く・行かないにかかわらず、私たちにこんな問いを投げかけます。知らない土地に対して、距離や先入観だけで線を引いていないだろうか。時間や労力をかけてでも、自分の目で確かめてみたい場所はどこだろうか。
国際ニュースを日本語で追いかける私たちにとって、こうした個人の旅のまなざしは、「世界との距離の測り方」をそっと見直させてくれるヒントになるのかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








