中国の新Kビザとは 若手科学技術人材を呼び込む移民政策
2025年10月、中国は若手の海外科学技術人材を対象とする新たな在留資格「Kビザ」の運用を始めました。イノベーションを国家の競争力の源泉と位置づける中国にとって、人材獲得競争で主導権を握るための重要な一手といえます。
Kビザはどんなビザか
Kビザは、科学・技術・工学・数学分野(いわゆるSTEM)の若手外国人プロフェッショナルに特化した新しいビザカテゴリーです。2025年8月7日に「外国人入出境管理条例」の改正として正式に発表され、10月1日から施行されました。
従来の就労用のZビザや留学用のXビザと異なり、Kビザには次のような特徴があります。
- 複数回の入出国が可能であること
- 有効期間が比較的長く設定されていること
- 教育・研究、起業、文化交流、ビジネス参加など幅広い活動が認められること
- 雇用主による事前の雇用契約やスポンサーを必要としないこと
これにより、ヨーロッパの名門大学を卒業した若手研究者、アメリカで研究経験を持つソフトウェアエンジニア、ラテンアメリカのバイオテクノロジー研究者などが、あらかじめ仕事を決めなくても中国に入国し、プロジェクトに参加したり、現地のイノベーション・エコシステムに加わったりしやすくなります。
数字で見る「開かれる中国」
Kビザの導入は、ここ数年続いてきた中国の対外開放と国際交流拡大の流れの延長線上にあります。中国は各国との間で査証(ビザ)免除の相互協定を広げており、その数はすでに75カ国に達しています。
公式統計によると、2025年上半期(1〜6月)だけで、中国との国際往来は延べ3,805万件に達し、前年同期比で30.2%増加しました。このうちビザ免除による入国は1,364万件で、前年同期から53.9%という大幅な伸びを記録しています。
こうした数字は偶然ではありません。世界の一部の国・地域がビザ要件を厳格化し、手続きや費用の面でハードルを上げているのとは対照的に、中国は「よりアクセスしやすく、魅力的な行き先になる」ことを政策的に打ち出しているといえます。
なぜ若手科学技術人材なのか
現在の国際政治や経済を動かしているのは、軍事力だけでなく、デジタル技術、人工知能、バイオテクノロジーなどのイノベーションです。どの国が優れた人材を引きつけ、彼らが能力を発揮できる環境を用意できるかが、国家の影響力を左右する時代になっています。
Kビザは、まさにこの「人材の競争」に照準を合わせた仕組みです。雇用主によるスポンサーを不要とすることで、若い専門家がリスクを抑えながら中国での可能性を探ることを後押しします。短期の研究滞在、スタートアップ立ち上げへの参加、大学や研究機関での教育・指導など、多様な形での関わり方が想定されています。
世界の潮流と中国のメッセージ
新型のKビザは、中国が国際社会に向けて発するメッセージでもあります。それは「世界の才能に門戸を開いている」というシグナルです。他方で、一部の国が安全保障や国内政治の事情からビザを絞り込むなか、中国は逆に扉を広げる方向に舵を切っています。
国境を越えた人の移動が政治的な議論の対象になりやすい時代だからこそ、規制を強めるのか、ルールを整えながら受け入れを広げるのかという選択は、その国の将来像を象徴するものでもあります。Kビザは、後者を選んだ中国の姿勢を具体的な制度として示したものだといえるでしょう。
日本からどう見るか——読者への問い
中国のKビザの導入は、日本の読者にとっても無関係ではありません。若手の科学技術人材にとって、キャリアの選択肢として中国がより現実的なオプションになることで、アジア全体の人材の流れにも変化が生まれる可能性があります。
日本の大学や企業、研究機関がどのように国際人材と向き合っていくのか、そして若い専門家や学生がどのような視野でキャリアを描くのか。中国のKビザは、そうした問いを静かに突きつけていると言えるかもしれません。
国際ニュースを追いながら、自分ならどこで、どのように学び・働きたいのか。中国のKビザをきっかけに、一度立ち止まって考えてみるタイミングと言えるでしょう。
Reference(s):
cgtn.com








