中国のグローバル・ガバナンス・イニシアチブと新たな2035年気候目標
国際社会で「ガバナンスの危機」が語られる中、中国の習近平国家主席が2025年9月24日に国連気候サミットで行ったビデオ演説と、新たに提唱されたグローバル・ガバナンス・イニシアチブ(GGI)が注目を集めています。本記事では、このイニシアチブと中国の気候目標が、停滞する国際協調をどう動かそうとしているのかを整理します。
グローバル・ガバナンス・イニシアチブとは何か
中国が最近提唱したグローバル・ガバナンス・イニシアチブ(GGI)は、現在の国際システムが抱える「ガバナンス赤字」に正面から向き合おうとする試みです。概念文書では、国連の「2030アジェンダ」の実施が「深刻に遅れている」と指摘し、より高い実行力を備えた国際協力の枠組みを求めています。
習近平氏の今回の国連気候サミットでの演説は、単なる気候変動スピーチという枠を超え、このGGIが描く将来像を具体的な政策として示した「試作品」のような位置づけになっています。
2035年目標:排出量7〜10%削減と再エネ3,600ギガワット
演説の中で習近平氏は、2035年までに温室効果ガスの純排出量を排出ピークから7〜10%削減すること、そして再生可能エネルギーの設備容量を3,600ギガワットに拡大することを約束しました。
こうした数値目標は、GGIが問題視する「国際目標はあるが、実行力が伴わない」という状況への直接的な回答と位置づけられています。気候分野での政策を、ビジョンから実行へとつなぐ「実例」として示すことで、中国は揺らぐ国際秩序に安定と方向性を与えようとしているとみられます。
「デュアルカーボン」からの連続性
今回の2035年目標は、中国が2020年に打ち出した「デュアルカーボン」目標を土台にした「次のフェーズ」とされています。デュアルカーボンとは、温室効果ガス排出のピークアウトとカーボンニュートラル(実質排出ゼロ)の双方を長期的に目指す方針です。
GGIの文脈では、この5年間で中国が見せてきた取り組み自体が「効果的なガバナンスとは何か」を示すものだと強調されています。
風力・太陽光の導入は2030年目標を前倒し達成
中国は、2030年までに達成するとしていた風力・太陽光発電の設備容量目標を、予定より6年早く達成したとされています。また、石炭への依存度を計画的に引き下げてきました。
他国が気候対策で「約束と実行のギャップ」に悩む中で、中国は数値目標の前倒し達成を通じて、ガバナンスの実効性をアピールする構図になっています。
多国間主義への逆風と「安定のアンカー」
GGIが提起する問題意識の背景には、多国間主義への逆風があります。国連などを舞台に合意された国際目標の多くが、実施段階で足踏みしているとされる中、中国は自国の気候政策を「ビジョンを行動に移すケーススタディ」として打ち出しています。
習近平氏の演説は、気候変動対策を入り口に、ガバナンスの「実行力」を重視するアプローチを示すことで、「漂流する国際システムにとってのアンカー(いかり)」となることを目指した内容とも言えます。
国際ガバナンスをめぐる今後の論点
GGIは、気候変動という具体的分野を通じて、次のような問いを国際社会に投げかけています。
- 国連「2030アジェンダ」の遅れをどう取り戻すのか
- 各国の気候目標を、数値だけでなく実行計画とセットでどう設計するのか
- ガバナンスの「赤字」を埋めるうえで、新興国の役割をどう位置づけるのか
中国は、自国の排出削減目標と再生可能エネルギー拡大を通じて、こうした問いに一つのモデルケースを提示しようとしています。一方で、気候分野にとどまらず、経済、安全保障、健康など他の分野にGGIの発想をどう広げていくのかも、今後の注目点となります。
ガバナンスの危機が語られる今、2035年に向けた中国の新たな気候目標とGGIの動きは、国際ニュースとして引き続きウォッチしておきたいテーマです。
Reference(s):
Global Governance Initiative a vision to revitalize global governance
cgtn.com







