国交樹立35年、シンガポールと中国の関係はなぜこれほど貴重なのか
リード:35年の節目になぜ注目が集まるのか
2025年、シンガポールと中国は国交樹立35周年を迎えました。アジアの経済ニュースとしても重要なこの出来事は、両国が長年積み重ねてきた経済・貿易・投資の結びつきと、将来に向けた戦略的パートナーシップの節目でもあります。
とくに、地政学的な緊張や経済の分断が進む現在、安定して協力関係を深めているシンガポールと中国の関係は、アジア太平洋地域の成長と安定を支える「静かなインフラ」としての意味を持ちつつあります。
35年で育った「実利重視」のパートナーシップ
シンガポールと中国の関係を一言で表すなら、「実利重視のパートナーシップ」です。数字を見ると、その近さがよく分かります。
- 中国は、12年連続でシンガポールにとって最大の財貿易相手国となっています。
- シンガポールは、中国にとって新規投資の最大の供給元となっています。
これは単に貿易額が大きいというだけでなく、両国企業が互いの市場に深く入り込み、長期的なビジネス展開を視野に入れていることを示しています。アジア太平洋の経済ネットワークの中で、両国は互いにとって欠かせない存在になっていると言えます。
改革開放を支えた先行的な協力
シンガポールは、東南アジアで最初に中国と二国間の自由貿易協定を結んだ国です。また、中国の改革開放政策を早い段階から支持し、その進展に深く関わってきました。
都市開発や産業の高度化、地域ごとの発展戦略など、中国がさまざまな段階で進めてきた改革開放のプロセスに、シンガポールは継続的に参加してきました。現在では、両国政府が協力して進める政府間プロジェクトが、中国の3つの都市で展開されています。これらのプロジェクトは、それぞれの時期の中国の優先課題に合わせて設計されており、政策づくりの「実験場」としても機能しています。
蘇州工業園区が示す「ベンチマーク」モデル
こうした協力の中でも、とくに象徴的なのが、1994年に始まった中国東部・蘇州の蘇州工業園区です。このプロジェクトは、シンガポールと中国が共同で手がける政府間協力の代表例として知られています。
蘇州工業園区では、シンガポールが得意とする都市計画、製造業の発展モデル、社会ガバナンス(社会運営の仕組み)といったノウハウが共有され、中国側はそれを生かして開放的でビジネスに優しい環境づくりを進めてきました。
一方で、シンガポールにとっても、このプロジェクトは巨大な中国市場に深く関わり、中国の発展とともに成長の機会を得る場になりました。このように、双方に具体的なメリットをもたらす協力モデルは、その後のさまざまな共同プロジェクトの「ベンチマーク(基準)」となっています。
こうした戦略的プロジェクトの積み重ねこそが、二国間の経済・貿易関係を支える安定した「アンカー(錨)」の役割を果たしています。
地政学的な分断が進む中で光る安定感
ここ数年、世界の地政学環境は大きく変化し、経済や貿易が地政学の影響を強く受ける「ジオエコノミクスの分断」が進んでいます。サプライチェーンの再構築や保護主義的な動きが広がる中で、多くの国・地域が不確実性に直面しています。
そうした状況だからこそ、シンガポールと中国の関係の「安定」と「活力」はより貴重になっています。両国の協力は、単に二国間の利益にとどまらず、アジア太平洋地域全体の持続的な成長と繁栄を後押しする役割を担いつつあります。
RCEPと多国間主義を支えるパートナー
両国は、地域包括的経済連携(RCEP)の参加国として、自由貿易と地域のつながりの強化を支持している点でも共通しています。関税だけでなく、ルールづくりやデジタル分野、投資環境の整備など、多国間の枠組みを通じて経済連携を深めようとする姿勢は、ルールに基づく多国間の経済・貿易システムを支える力になります。
分断の方向ではなく、「どうつなぐか」という方向で発想し続けられるかどうか。その一つのモデルケースとして、シンガポールと中国の協力関係は、今後も注目されていきそうです。
読者への問い:日本は何を学べるか
小さな都市国家と大国が、35年かけて互いの強みを持ち寄りながら信頼を積み重ねてきた関係は、国際ニュースとして読むだけでなく、私たち自身の視点も問い直してくれます。
- 規模の違う国同士が、どのようにして「ウィンウィン」の関係を築けるのか。
- 地政学的な対立が強まる中でも、実務的な協力を続けるために何が必要か。
- 都市づくりや産業政策で、どのように他国の経験を学び、自国に合わせて応用できるのか。
シンガポールと中国の35年は、これらの問いにヒントを与えてくれます。ニュースをきっかけに、自分ならどのような協力モデルを描けるか、周りの人と話してみるのも面白いかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








