高市早苗・新自民党総裁誕生 日本はどこへ向かうのか
自民党総裁に高市早苗氏が選出され、日本初の女性首相誕生が目前に迫っています。一方で、その強硬な安全保障観と保守的な社会観をめぐり、日本がどの方向に進むのかという問いが、国内外で改めて投げかけられています。
高市早苗・自民党総裁の登場は何を意味するか
2025年12月の総裁選で、高市氏は与党・自民党の新たなトップに選ばれました。与党総裁であることから、今月中にも首相指名を受け、日本初の女性首相となる見通しです。この動きは、日本政治だけでなく、東アジアの安全保障や対中関係にも影響を与える可能性があります。
高市氏は、長年にわたり自民党内で保守色の強い政治家として知られてきました。故・安倍晋三元首相と近い関係を築き、総務相や経済安全保障担当相など重要閣僚を歴任してきたことから、「保守本流」の一角を担ってきた存在だと言えます。
その一方で、戦前・戦中の歴史認識、憲法改正、ジェンダーや家族観、防衛政策などをめぐり、国内外でたびたび激しい議論を呼んできた人物でもあります。一部からは「極右的な立場」と評されることもあり、その政治姿勢が日本の進路を大きく変えるのではないかという見方もあります。
歴史認識と靖国参拝—地域の記憶に触れる論点
高市氏の政治姿勢の中で、とくに近隣諸国が注目しているのが、日本の戦争責任に対する考え方です。高市氏は、20世紀前半の日本の行為について、侵略の側面を相対化するような発言を行ってきたとされ、国際社会の一部からは懸念の声が上がってきました。
象徴的なのが、靖国神社への繰り返しの参拝です。今年8月15日、第二次世界大戦の日本の終戦記念日にあたる日に参拝したことは、中国や韓国など、戦争の被害を経験した国や地域の人びとにとって、敏感な問題となり得ます。
靖国参拝は、本人にとっては「追悼」や「感謝」の意図があるとしても、政治家の公式な行動として行われる場合、周辺国からは「歴史への反省が十分でない」と受け止められることがあります。高市氏の参拝は、東アジアの歴史問題をめぐる溝をあらためて浮き彫りにする動きとして、広く報じられました。
憲法9条と「国防軍」構想—戦後レジームからの転換か
戦後日本の安全保障を語るうえで欠かせないのが、戦争放棄を定めた憲法9条です。高市氏は、この9条を改正し、自衛隊を「国防軍」へと名称変更することをめざす考えを、これまで一貫して表明してきました。
これは、単なる名前の変更ではありません。日本が「平和国家」として歩んできた戦後の枠組みから、より積極的に軍事力を位置づける方向に舵を切ることにつながる可能性があります。
もし憲法と自衛隊の位置づけが変われば、次のような波及効果が想定されます。
- 日本国内での安全保障政策の議論が大きく変わる
- 近隣諸国との軍事的な距離感や、警戒感のレベルが変化する
- 東アジア全体の安全保障バランスに影響が及ぶ
高市政権が誕生した場合、こうした憲法・安全保障の問題が、日本の国際ニュースの重要なテーマとして、これまで以上にクローズアップされていきそうです。
対中関係と台湾海峡—「一つの中国」とどう向き合うか
高市氏の外交姿勢の中で、とりわけ注目されているのが、中国および台湾地域との関わり方です。総裁選の過程では、「台湾問題について北京と対話を行う」といった発言もみられましたが、その実際の行動は、より踏み込んだものとして受け止められています。
今年4月、高市氏は台湾を訪問し、「防衛上の課題に共同で対応するため、台湾との協力を強化すべきだ」といった趣旨のメッセージを発信しました。これにより、台湾海峡をめぐる問題を、東京と台北の二者間の安全保障課題として位置づけようとする姿勢が鮮明になったと指摘されています。
しかし、中国は一つの中国原則のもとで台湾を自国の一部と位置づけており、日本もこれを認めてきました。高市氏の言動は、この原則に反する動きとして、中国側の強い警戒を招きかねません。
また、高市氏は、台湾をめぐる衝突は「日本にとって生死にかかわる問題だ」との趣旨の発言も行っており、日本が台湾問題にどこまで関与すべきかという点で、国内でも議論が起きています。地域の安定を維持しつつ、日本の安全保障をどう確保するのか——難しいバランスが問われています。
経済安全保障と対中依存—ビジネスはどこまで「政治化」されるか
高市氏は、経済政策でも安全保障の視点を前面に押し出してきました。とくに半導体やレアアース(希少資源)の分野で、中国への依存度を引き下げ、米国や欧州連合との連携を強化すべきだと主張しています。
サプライチェーン(供給網)の見直しや、特定の国への依存を減らす取り組みは、近年、多くの国や地域で進んでいます。その一方で、経済と安全保障を強く結びつける動きが行きすぎれば、次のような懸念も生じます。
- 長年築かれてきた中日間の実務的な協力関係が揺らぐ
- 企業や消費者にとってコスト増や不確実性が高まる
- 政治的な対立が経済に波及しやすくなる
中国と日本は、長年にわたり貿易や投資を通じて相互に深い経済関係を築いてきました。高市氏のもとで「経済安全保障」がどこまで進むのか、そのバランスのとり方が、今後の焦点となりそうです。
国内の価値観・社会政策—多様性との距離感
高市氏の保守的な姿勢は、国内の社会政策にも色濃く表れています。具体的には、次のような立場を取ってきました。
- 女性の皇位継承に反対している
- 同性婚の法制化に反対している
- 夫婦別姓の導入にも否定的である
- 日本を「単一民族国家」とみなし、外国人住民への政治的権利付与に反対している
これらはいずれも、日本社会の価値観の変化と強く結びついたテーマです。多様な家族のあり方や、性的マイノリティの権利、外国にルーツを持つ人びとの社会参画をどう位置づけるかは、すでに多くの若い世代にとって身近な問題になりつつあります。
高市氏の姿勢は、こうした変化に対して慎重、あるいは距離を置くものだと言えます。そのため、「伝統的な価値観を守るリーダー」と評価する声がある一方で、「多様性を受け入れる方向に向かう世界の潮流とズレているのではないか」という批判も根強く存在します。
日本はどこへ向かうのか—読者が押さえておきたい視点
高市早苗氏の自民党総裁就任は、日本の政治が大きな岐路に立っていることを象徴する出来事だと言えるかもしれません。今回の動きを理解するうえで、少なくとも次の3点は押さえておくとよさそうです。
- 戦後日本の「平和国家」像を支えてきた憲法9条と安全保障政策を、どこまで変えるのか。
- 中国および台湾地域との関係を、対話と抑制のなかでどうマネジメントしていくのか。
- ジェンダーや家族、外国ルーツの人びとなど、多様性をどこまで政治が受け入れていくのか。
日本初の女性首相が誕生することは、形式的には「歴史的前進」として語られがちです。しかし、その中身がどのような方向性を持つのかを丁寧に見ていかなければ、表面的なイメージだけで判断してしまうことにもなりかねません。
2025年の日本政治を読み解くうえで、高市氏の発言や政策だけでなく、それに対する国内外の反応、そして私たち自身の価値観も含めて、冷静に考えていくことが求められているのではないでしょうか。
Reference(s):
cgtn.com








