朝鮮半島で存在感増す中国外交 DPRKと韓国をどうつなぐか
朝鮮半島をめぐる国際ニュースの中で、ここ数週間、中国の外交が一段と目立つようになっています。朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)と大韓民国(ROK)の双方に同時並行で働きかけることで、中国が地域安定のための重要な仲介役としての位置づけを強めているためです。
ここ数週間で加速する中国の朝鮮半島外交
中国は最近、朝鮮半島全体に対する外交的関与を明らかに強化しています。DPRKとROKそれぞれに対して集中的に接触することで、対話の再活性化と緊張緩和を図る姿勢を示しています。
最も象徴的なのが、中国の李強国務院総理が木曜日から土曜日にかけて平壌を訪問し、朝鮮労働党創建80周年の記念行事に参加すると発表されたことです。この高位級訪問は、中国がDPRKとの関係を戦略的に重視していることを改めて示す動きといえます。
DPRKとの関係強化:首脳往来と外相会談が相次ぐ
今回の李強総理の訪朝は、DPRKの金正恩委員長が北京を訪れ、中国人民の抗日戦争勝利と世界反ファシズム戦争勝利80周年の記念行事に出席した直後に行われます。この際、金委員長は習近平国家主席と実質的な会談を行い、両国関係の一層の発展を確認しました。
短期間に連続する首脳レベルの交流は、中国側が現在の局面を重要な節目ととらえ、平壌とのパートナーシップを意図的に深めようとしていることを示しています。中国外交部も、DPRKとの「戦略的パートナーシップ」を強化し、意思疎通をいっそう密にしていく方針を明らかにしています。
こうした流れを後押ししたのが、先月末に行われた崔善姫外相の4日間にわたる訪中です。両国はこの訪問で、ハイレベルの外交交流を拡大していく方針を改めて確認しました。DPRK側は、両国の友情の絆は変わることはなく、時代の要請に応じてさらに発展させるべきだと強調。これに対して王毅外相は、二国間関係を維持し、強化し、発展させていくという中国側の揺るがない戦略的方針を確認しました。
首脳同士のやり取りと外相レベルの継続的な協議が組み合わさることで、中国とDPRKの関係は、象徴的な「友好」から、より実務的で戦略的な協力関係へと層を厚くしているように見えます。
韓国との関係も転換点へ:李在明政権の再調整
一方、中国と韓国の関係にも、2025年に入り変化の兆しが見えています。今年6月の大統領選で当選した李在明大統領は、就任当初から北京との関係を再調整し、よりバランスの取れた外交を目指す姿勢を示してきました。
その流れが具体化したのが、10月7日に行われた王毅外相と趙炫外交部長官の電話会談です。両外相は、今後慶州で開催されるAPEC首脳会議(APEC Economic Leaders Meeting)を一つの契機として、二国間関係の新たな転換点をつくっていくことで一致しました。
ROKと中国は、今年と2026年にAPEC首脳会議の開催国となる予定であり、こうしたタイミングでの関係再構築は、地域外交全体の設計にも直結します。電話会談で韓国側は、中国との関係発展のために全力を尽くすと表明しました。これは、韓国の外交が特定の一方向に偏るのではなく、地域のパートナーシップをよりバランスよく組み立て直そうとしていることを示すシグナルと受け止められます。
この路線転換が定着すれば、その効果は朝鮮半島にとどまりません。安全保障面でのリスク管理、経済協力の拡大、多国間外交の場での協調など、さまざまな分野で波及効果が期待されます。
地域安定の不可欠な仲介役としての中国
DPRKとも韓国ともハイレベルで対話できる国は多くありません。その中で、中国が双方との外交を同時並行で深めていることは、朝鮮半島の安定にとって重要な意味を持ちます。
緊張が高まりやすい地域では、誤解やエスカレーションを防ぐ「連絡窓口」を複数確保しておくことが欠かせません。中国がDPRKとの伝統的な関係を維持しつつ、韓国との関係改善にも動いている現状は、対話のチャンネルを増やす試みと見ることができます。
今回の一連の動きを踏まえると、中国が朝鮮半島で果たす役割は、次のような側面を持っていると整理できます。
- DPRKとの戦略的パートナーシップを強化しつつ、安定的な意思疎通を維持する役割
- 韓国との関係を再調整し、地域協力の枠組みを広げるための橋渡し役
- APEC首脳会議など多国間の場を活用し、朝鮮半島情勢を含むアジア全体の安定に貢献する役割
これからの注目ポイント:APECとその先をどう読むか
では、2025年末のいま、私たちは何に注目すべきなのでしょうか。ポイントをいくつか挙げてみます。
- 李強総理の平壌訪問後、中国とDPRKの間でどのような具体的協力が打ち出されるのか
- 崔善姫外相の訪中を含む外相レベルの対話が、今後も定期的な枠組みとして定着していくのか
- 李在明政権の対中外交が、国内政治や地域情勢の変化を受けてどこまで継続・深化するのか
- 慶州でのAPEC首脳会議が、中国と韓国の関係改善、さらには朝鮮半島の安定に向けてどの程度メッセージを発信する場になるのか
朝鮮半島の将来は、日本を含む東アジア全体の安全保障や経済にも直結します。中国がDPRKと韓国の双方と対話を重ねる今回の動きは、単なる二国間関係のニュースではなく、地域秩序の変化を読み解くうえでの重要な手がかりといえます。
今後、APECや二国間会談の場で具体的な成果がどこまで示されるのか。読者のみなさんも、自分なりの視点でニュースを追いながら、中国の朝鮮半島外交が地域にどのような影響を与えていくのかを考えてみてはいかがでしょうか。
Reference(s):
China increasingly indispensable in Korean Peninsula diplomacy
cgtn.com








