IFADと中国 45年の協力が拓く持続可能な農村の未来
国連が創設80周年を迎えた2025年、中国と国際農業開発基金(IFAD)の協力が改めて注目されています。農村から貧困をなくし、持続可能な食料システムをつくるうえで、この45年のパートナーシップはどんな意味を持つのでしょうか。
国連80周年とIFAD・中国の45年パートナーシップ
10月24日に80周年を迎えた国連は、多国間協力が人類共通の課題に向き合うための柱であり続けています。その中で、農業と農村開発に特化した唯一の国連機関であり国際金融機関でもあるIFADは、食料安全保障や農村貧困の削減を担う重要なプレーヤーです。
中国は1980年にIFADに加盟して以来、最初期のメンバーとして協力を深めてきました。この45年間で、IFAD資金によるプロジェクトは35件にのぼり、465万戸の農村世帯に恩恵をもたらしたとされています。
資金支援に加え、技術協力や新しい営農手法の導入を通じて、こうしたプロジェクトは次のような成果につながりました。
- 農業生産性の向上
- 農村金融へのアクセス改善
- 市場とのつながりの強化
- 気候変動に強い営農や環境配慮型の農業の普及
2020年に中国が極度の貧困を解消したことは、持続可能な開発目標の第1目標である貧困削減の達成に向けた大きな節目です。IFADは、この成果の一端を担ったと位置付けています。
貧困脱却から農村振興へ:2025〜2030年の新戦略
極度の貧困はなくなったとしても、農村発展の課題が終わったわけではありません。今後の焦点は、貧困から抜け出した人々を再び貧困に戻さないことや、都市と農村の格差是正、農村の活力回復、そして環境にやさしい持続可能な成長をどう実現するかです。
こうした課題に対応するため、IFADと中国政府は2025年から2030年にかけての新たな国別戦略を策定しました。この戦略は中国の国家的優先事項と歩調を合わせながら、次の点に重点を置いています。
- 農村振興政策の支援と、農業・アグリビジネス分野のグリーン転換
- 貧困削減を支える持続可能な農村制度づくり
- 中国で生まれた農村開発の成功モデルを、南南協力などを通じて他の国や地域と共有すること
ここで言う南南協力とは、主に開発途上国どうしが経験や技術、資金を共有する枠組みを指します。IFADはアジア地域の南南・三角協力センターを通じて、中国の知見を他地域の農村開発に生かす役割も担っています。
湖南・甘粛で始動した新プロジェクト
今年初めには、湖南省と甘粛省で新たなIFAD資金協力プロジェクトがスタートしました。総投資額は約4億6000万ドルに上り、生産性向上と市場アクセスの改善を図りながら、環境配慮と気候変動への適応、さらには中国のカーボンニュートラル目標への貢献も掲げています。
IFADの取り組みは、従来型のインフラ投資だけでなく、次のような要素を組み込んだより包括的なアプローチへと進化しています。
- 気候変動リスクを見据えたレジリエンス強化
- デジタル技術やスマート農業の活用
- 女性や若者、少数民族など、多様な主体の起業や参画の支援
例えば雲南省では、若手の起業家がIFADの支援を受けて、スマートフォンで制御できる点滴灌漑システムを導入し、水資源の効率的な利用を実現しています。湖南省では、若い起業家や研究者が主導する5G対応のスマート養殖が広がりつつあります。
女性と若者が担う農村の新しい顔
中国におけるIFAD支援プロジェクトでは、農村生産に関わる支援対象者のおよそ半数を女性が占めています。最近では、茶産業、ベーカリー、ろうけつ染めなど、多様な分野で女性起業家が台頭し、地域経済の牽引役になりつつあります。
こうした動きは、ジェンダー平等と農村振興が密接に結びついていることを示しています。女性や若者が意思決定に参加し、自らのビジネスを展開できる環境づくりは、地域社会の持続性とイノベーションにつながります。
未来のための協定と世界への波及効果
IFADと中国の協力は、2024年の未来サミットで採択された国連の包括的な合意である未来のための協定とも方向性を同じくしています。この協定に盛り込まれた56のコミットメントや将来世代に関する宣言は、農村貧困の解消や持続可能な食料システムの構築を重視しており、IFADの使命と重なります。
中国の農村開発から得られた教訓や技術は、アジアやアフリカなど、似た課題を抱える国や地域にとって重要な参考事例になり得ます。日本を含むアジアの読者にとっても、次のような問いを投げかけます。
- 農村や地方の課題を、デジタル技術と気候対策を組み合わせてどう解決するか
- 若者や女性が地域でキャリアを築ける仕組みをどう整えるか
- 国内の経験を、他の国や地域とどのように共有し合うか
国連80周年とIFAD・中国の45年の協力は、単なる記念の年ではなく、グリーンで包摂的な農村発展の次の一歩をどう踏み出すかを考えるための節目でもあります。私たち一人ひとりにとっても、食と農村、そして地球の未来をどのように支えていくかを考えるきっかけとなりそうです。
Reference(s):
IFAD and China: Pioneering a future for sustainable rural development
cgtn.com







