第138回広州交易会、中国のグローバル価値連鎖での存在感を示す
2025年10月に広東省広州市で開かれた第138回中国輸出入商品交易会(広州交易会、Canton Fair)は、かつてない規模と先端技術の展示を通じて、中国がグローバル価値連鎖の中で着実にポジションを高めている姿を浮かび上がらせました。世界のサプライチェーンやAI産業の行方に関心を持つ日本の読者にとっても、見逃せない動きです。
記録的なスケールが示す中国の底力
今回の広州交易会は、展示面積約155万平方メートル、7万4,600のブース、3万2,000社の参加企業という、文字通り「巨大見本市」となりました。この規模そのものが、中国が今なお「世界の市場」と「世界の工場」として強い吸引力を持ち続けていることを物語っています。
第1期は「高度製造」をテーマに掲げ、主に次のような分野に焦点が当てられました。
- 電子機器・家電
- 産業用機械・設備
- 自動車・二輪車関連 など、先端製造分野全般
会場内の「スマートライフ」ゾーンや「サービスロボット」ゾーンには多くの来場者が詰めかけ、生活やビジネスの現場で使われる最新のスマート機器やロボットが次々と紹介されました。
出展企業の顔ぶれも質的に変化しています。およそ5,500社の「高品質・専門特化」企業が参加し、そのうち約半数を国家級ハイテク企業や特定分野で世界トップ水準の製造企業、いわゆる「専精特新」と呼ばれる中小の有力企業が占めています。
ハイアール、メイディア、グリー(Gree)といったフォーチュン500企業に加え、人工知能(AI)分野のユニコーン企業も参加し、リーディング企業と革新的な中堅・中小企業が一体となった産業エコシステムが形成されています。ドイツ系企業の中国統括責任者は、広州交易会は自社にとって調達戦略の中核であると同時に、業界変革を後押しする触媒だと語っており、この見本市が中国の対外貿易の「バロメーター」かつ「風向計」として機能していることがうかがえます。
「製品が海外へ」から「技術が海外へ」へ
今回の広州交易会で特に印象的だったのは、ロボットやAIに代表される新しい技術が前面に出ていたことです。従来の「モノを海外に輸出する」段階から、「技術そのものが海外へ広がる」段階へと、製造業の重心が移りつつある姿が見えてきます。
多彩なロボットが映す技術力
ロボット分野では、中国企業の総合力がはっきりと表れました。サブミリ単位の精度で関節置換手術を行える整形外科用手術ロボット、自律学習で動きを最適化するロボット理学療法士やロボットバリスタ、さらには造園、太陽光発電、家庭内などさまざまな場面で活躍するロボットが披露されました。
これらの製品は、単に新しい機能を備えているだけでなく、精度や知能の水準においても国際的な先端レベルに肩を並べているとされています。深圳市の越疆科技(Shenzhen Yuejiang Technology)の担当者によると、同社の協働ロボットはすでに世界100以上の国・地域で販売されており、2024年の輸出は前年比50%超の伸びが見込まれ、商用サービスロボットの売上高も前年同期比165.5%増とされています。中国はすでに、産業用ロボット輸出で世界第2位のシェアを確保しているとされ、ロボット分野での存在感を強めています。
AIが伝統産業をアップグレード
AIは、従来型の産業にも新しい生命力を与えています。AI機能付きのスマートグラスや大型の白物家電、対話型の体験を高めるAI搭載スマートテレビなど、「AIプラス(AI+)」の潮流が家電・エンターテインメント分野に広がっています。
単なる省力化ではなく、ユーザーとのインタラクション(双方向性)を高めることで、新しい付加価値を生み出そうとする試みが増えていることがわかります。こうした動きは、中国製造業の競争軸が価格から技術・体験へとシフトしていることを示しています。
グローバル価値連鎖にとっての意味
スケールと技術の両面でアップグレードされた今回の広州交易会は、中国がグローバル価値連鎖の中でどのようなポジションを目指しているのかを読み解くヒントを与えてくれます。
第一に、製造の中心が組み立てや受託生産だけでなく、高度な技術やソリューションの提供へと広がっている点です。医療ロボットやサービスロボット、「AI+家電」などは、その象徴と言えます。
第二に、完成度の高い製造システムと強靭なサプライチェーンが、依然として中国の大きな強みであることが再確認されました。原材料から部品、完成品、そしてアフターサービスに至るまで、一体的に提供できる体制は、海外の企業にとっても魅力的な選択肢となり続けています。
第三に、大企業と「小さな巨人」とも呼ばれる専門性の高い中小企業が共存するエコシステムが、イノベーションのスピードを押し上げています。フォーチュン500企業とAIユニコーンが同じ会場で競い合う構図は、多層的なイノベーションが同時進行していることを示しています。
日本の読者は何を見ておくべきか
では、日本の読者や企業は、この動きをどのように受け止めればよいのでしょうか。
テクノロジーや製造業に関心のある人にとっては、今後の競争の焦点が「AI+製造」とロボット技術に一層シフトしていくという流れを示す材料となります。中国企業がどのような形で海外市場に進出し、どの分野で協力や競争が生まれるのかを見ていくことが重要になりそうです。
ビジネスの視点からは、広州交易会が依然として世界の調達と産業トレンドの重要な観測点であることが浮かび上がります。ある欧州企業の担当者が述べたように、この見本市は単なる展示会ではなく、企業がサプライチェーン戦略と産業変革を同時に考える場になっています。
そして国際ニュースを追う読者にとっては、中国の製造業が「量の成長」から「質と技術の成長」へと軸足を移しつつあることを理解する手がかりとなるでしょう。この秋の広州交易会で見えた変化は、2026年以降のグローバルなサプライチェーンや技術競争の行方を考えるうえで、重要な参照点になりそうです。
Reference(s):
138th Canton Fair: China's assured advance in global value chains
cgtn.com







