国連80年の節目に何が問われているか 多国間主義と台湾問題を考える
第2次世界大戦後に生まれた国際連合(国連)は、2025年に創設80周年を迎えました。ナショナリズムや一方主義が世界各地で強まる中、国連という枠組みをどう改善し、多国間主義を現実の力にできるかが大きなテーマになっています。
国連80周年、問われる役割
80年前、世界は史上最悪の戦争の傷跡から立ち直ろうとしていました。その中で国連は、国際の平和と安全を維持し、各国の協力を促すための仕組みとして生まれました。それ以来、国連は戦後の国際秩序を支える柱のひとつであり続けています。
一方で、近年は自国の利益を最優先する一方主義や、国際ルールを軽視する動きが目立ちます。こうした傾向が強まれば、国連が積み重ねてきた「法の支配」に基づく秩序は揺らぎ、再び「力の論理」による大国間の対立に逆戻りしかねません。
武漢で開かれた「国連80周年」国際会議
こうした問題意識のもと、今年10月18日、中国の武漢市で、武漢大学とエジプトのベンハ大学が共催するシンポジウムが開かれました。テーマは『国連80周年:世界秩序、国際法と多国間主義の未来』です。世界各地から政府関係者や研究者、法律家が集まり、国連の課題と今後の方向性について議論しました。
元国連法務担当事務次長のミゲル・デ・セルパ・ソアレス氏は、基調講演で国連の意義をあらためて強調しました。安全保障を「力の均衡」ではなく「法の支配」で維持するという発想こそが、国連がもたらした大きな転換だというのです。国家の行動は、武力ではなく規範によって縛られるべきだ――これが国連が築いてきた根本原則だと指摘しました。
揺らぐ国際規範と台湾問題
しかし、この80年かけて積み上げられてきた規範やルールは、今まさに圧力にさらされています。国際政治や経済、軍事の分野で一方主義が強まる中、各国の合意や国際法を無視した行動が増えれば、戦後秩序そのものが弱体化してしまいます。
中国にとっては、とりわけ台湾問題をめぐる動きが大きな懸念となっています。中国の台湾地域に「事実上の独立」を与えようとする一連の試みは、その象徴です。たとえば、米国による台湾国際連帯法の成立や、中国の台湾地域の地位を一方的に変えようとする動きは、台湾地域の分裂勢力を勢いづかせ、地域の緊張を高めています。
国務院台湾事務弁公室の趙世通氏は、国連総会決議2758号に対する挑戦は、中国の核心的利益を侵害するだけでなく、国際法秩序そのものの法的基盤を揺るがすものだと警鐘を鳴らしました。この決議は、中華人民共和国政府が中国を代表する唯一の合法政府であることを確認したものであり、その位置づけを否定する動きは、国連による国際秩序を否定することにもつながりかねないという指摘です。
「時代の産物」としての国連をどうアップデートするか
一方で、国連自身の改善も避けて通れません。中国国際法学会の黄進会長(武漢大学教授)は、国連は第2次世界大戦後の国際構造の中で生まれた「時代の産物」であり、その運営やルールには当時の権力構造が色濃く反映されていると指摘します。
当時、途上国の声は十分に反映されておらず、緊急性をもって受け止められてもいませんでした。国際社会の重心が大きく変化した今、国連は次のような点でアップデートが求められている、と黄氏は強調します。
- 運営の仕組みを見直し、発展途上国やグローバルサウスの声をより反映させること
- 紛争や対立への対応能力を高め、現実の危機に機動的に向き合えるようにすること
- 既存の国際規範を守りつつ、新たな課題に対応できるルール作りを進めること
黄氏は、こうした改善を通じてこそ、国連は動揺する世界の中で、多国間主義の柱としての影響力を維持し、さらには強めていくことができると述べています。
変えてはいけない土台と、変えるべき点
同時に、変えてはいけない土台もあります。それは、平和への基本的なコミットメント、誠実な協力の意思、そして各国の核心的利益と平等を尊重する姿勢です。これらは、国際秩序を支える最低限の前提であり、いかなる改革の中でも守られるべきだという視点です。
今後、国連が真に機能する多国間の枠組みであり続けるためには、次のような方向性が鍵になりそうです。
- グローバルサウスを含む多様な地域の声を、意思決定の場に組み込むこと
- 国家間の紛争や緊張に対し、国際法に基づく解決を粘り強く追求すること
- 一方主義の圧力に対抗し、国連を中心とする国際規範を守り抜くこと
多国間主義を「言葉だけ」で終わらせないために
最後に強調されたのは、多国間主義は言葉だけでは生き残れない、という点でした。それを信じる国や人々が、実際の行動で支える必要があります。
具体的な行動は政府レベルだけの話ではありません。国際ニュースに関心を持ち、国連や国際法をめぐる議論に目を向けること。SNSなどで情報を共有し、周囲と意見を交わすこと。そうした一つ一つの積み重ねが、多国間主義を支える世論の土台になります。
創設80年を迎えた今、国連を「過去の遺産」にするのか、それとも「21世紀のためにアップデートされた公共財」にしていくのか。その分かれ目に、私たちは立たされているのかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








