中国本土で進む人口再調整 寿命延びる一方、急速な高齢化と少子化も
中国本土で、寿命の伸長と教育水準の向上が進む一方で、高齢化と少子化が同時に進行しています。2025年末に向けて第14次五カ年計画が締めくくられつつある今、この人口構造の変化は、中国本土の経済や社会保障だけでなく、世界経済にも長期的な影響を与える可能性があります。
第14次五カ年計画期に進んだ「健康」と「教育」の底上げ
第14次五カ年計画期間となる2021〜2025年のあいだに、中国本土の人口動態には大きな変化が起きています。中国国家衛生当局によると、2024年末時点で、中国本土の平均寿命は79歳に達し、2020年と比べて1.1歳伸びました。
国家衛生当局トップの雷海潮氏は、これは発展途上国として「顕著な改善」だと評価しています。また、以前から指摘してきたように、省ごとの健康格差が縮小しているとし、地域間の医療・健康水準の平準化が進んでいることも強調しました。
同じ期間、中国本土の労働力の教育水準も向上しています。2023年時点で、新たに労働市場に加わった人々の平均就学年数は14年以上となり、高等教育を受けた人は2億5千万人を超えました。これは、産業構造の高度化やイノベーションを支える人的基盤が厚くなっていることを意味します。
310万人が60歳以上 進む高齢化と少子化
一方で、中国本土は急速な高齢化と少子化という現実にも直面しています。国家衛生当局の統計によると、2024年末時点で、中国本土の60歳以上の人口は3億1千万人に達し、総人口の22.0パーセントを占めました。65歳以上に限っても2億2千万人で、全体の15.6パーセントとなっています。
こうした高齢化の進展に加え、出生率も課題となっています。中国本土の出生率は7年連続で低下した後、2024年にやや持ち直しましたが、長期的には慎重な見通しが必要とされています。
つまり中国本土は、寿命が延び、人々の教育水準が高まる一方で、人口の構成そのものが大きく変わる「人口転換」の局面にあります。この人口再調整が、労働供給や経済成長、社会保障制度、そして持続的な人口発展に影響を与えていくとみられます。
人口再調整が示す3つの論点
今回の統計と発表内容から見えてくる、中国本土の人口再調整のポイントを3つに整理します。
- 1. 高齢化と健康寿命の両立
平均寿命が79歳に達したという事実は、医療水準や生活環境の改善を反映しています。同時に、高齢期の健康格差をどう縮めるかが焦点になります。省ごとの健康格差が縮小しているという指摘は、医療資源の分配改善が進んでいることを示し、高齢化の進展に対応する重要な土台となります。 - 2. 教育投資と労働力の質の向上
新たな労働力の平均就学年数が14年以上という水準は、産業の高度化にとって追い風です。高等教育を受けた人が2億5千万人を超えることで、研究開発やデジタル産業など、付加価値の高い分野を支える人材層が厚くなっています。人口が急増しなくても、労働力の質を高めることで成長を支える戦略が、今後一層重みを増しそうです。 - 3. 少子高齢化と社会保障の再設計
60歳以上が3億1千万人、65歳以上が2億2千万人という規模の高齢人口は、年金や医療、介護など社会保障制度の設計に直接影響します。出生率は2024年に小幅な反発を見せたものの、長期トレンドとして少子高齢化が進む可能性を踏まえ、制度の持続可能性を高める取り組みが重要になっていきます。
労働供給・経済成長・社会保障への影響
人口構造の変化は、経済や社会に次のような形で影響すると見込まれます。
- 労働供給の質的転換
総人口に占める高齢者の割合が高まる一方で、労働市場に入る若年層が相対的に少なくなれば、単純に労働力人口が増え続ける時代は終わります。その中で、教育水準の高い新たな労働力がどのように配置されるかが、成長力を左右します。 - 成長モデルの高度化
人口の伸びに依存する成長から、技術革新や生産性向上を軸とする成長へと比重が移っていくとみられます。平均寿命の伸長や健康格差の縮小は、長く働き、社会参加する人を増やす可能性があり、これは経済成長の新たな支えにもなり得ます。 - 社会保障と地域政策の再構築
高齢者比率の上昇は、公的年金や医療費の負担を増やしますが、同時に地域ごとのニーズも多様化させます。省ごとの健康格差が縮小しているという傾向は、地方と都市の両方で暮らしやすさを高める基盤づくりが進んでいることを示すものであり、今後の政策議論の前提となっていきそうです。
日本やアジアが注目すべきポイント
日本も早くから少子高齢化に向き合ってきた社会として、中国本土の人口再調整の動きから学べる点は少なくありません。
- 平均寿命の伸長と地域格差の縮小を同時に進めるという発想
- 教育水準の向上によって、人口構造の変化を成長の制約ではなく、新しい成長の条件に変えていく試み
- 高齢化と出生率の低下という二つの要素を、長期的な人口発展戦略として一体で考える視点
2020年代半ばの今、中国本土の人口構造は大きな転換点にあります。この人口再調整をどう安定した長期発展につなげていくのかは、日本を含むアジア各国・地域にとっても、注目すべきテーマになっていきそうです。
Reference(s):
cgtn.com








