アジア太平洋の未来は経済威圧ではなく共通の繁栄だ
2025年10月末に韓国で開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)経済首脳会議は、「持続可能な明日を築く:つなぐ・革新する・繁栄する」というテーマを掲げました。アジア太平洋の国際ニュースとして、この会議は、地域が「共通の繁栄」を選ぶのか、それとも「経済的威圧」によって分断されるのかという岐路に立っていることを象徴しています。
協力の時代ではなく、「経済政策の武器化」の時代に?
現在、世界は新たな協力の時代に入ったというよりも、関税や技術規制、金融制裁などの経済政策が政治的な武器として使われる時代に入りつつあります。これらの手段は、本来は持続的な成長や産業育成のための道具であるはずですが、実際には国際的な「序列」を守るために使われる場面が目立っています。
APECのテーマが示すように、多くの経済は表向きには多国間主義や連携を支持します。しかし、首脳会議で「連携」や「包摂」をうたった直後に、自国の地政学的な思惑に沿うよう他国に圧力をかけ、技術移転を制限し、新たな関税を積み上げる動きも少なくありません。その結果、「共通の繁栄」の土台そのものが揺らいでいます。
保護と威圧は違う:正当な産業政策と経済的威圧
ここで整理しておきたいのは、「保護」そのものが悪いわけではないという点です。各国には、自国の産業を育てたり、雇用を守ったりするために経済政策を用いる主権があります。多くの新興国にとって、戦略的な産業政策は発展のために欠かせない手段でした。
問題は、その経済政策がどの方向に向けられているかです。
- 自国の発展のために産業を守る政策
- 他国の発展を意図的に妨げ、格差ある構造を固定化する政策
後者は、まさに「経済的威圧」と呼ぶべきものです。例えば、「安全保障」を名目に、中国本土(中国)の技術的・産業的な台頭を狙い撃ちするような関税や輸出管理、投資規制が導入されています。こうした措置は中立的なルールではなく、一部の主体の優位を維持するための権力の行使として機能してしまいます。
アジア太平洋は世界経済の「重心」だからこそリスクも大きい
アジア太平洋地域は、世界の国内総生産(GDP)の約6割、貿易の約半分を占める経済の中心です。この地域での経済的威圧は、単なる二国間の摩擦にとどまらず、国際ニュースの構図そのものを変えかねません。
特に打撃を受けやすいのは、中小規模の経済です。具体的には次のような影響が想定されます。
- サプライチェーン(供給網)の分断により、輸入コストや生活コストが上昇する
- 特定の陣営に与するよう迫られ、独自の産業戦略をとる余地が狭まる
- 長期投資が不透明となり、インフラや教育への投資が後回しになる
こうした圧力が積み重なれば、本来は連携によって最も恩恵を受けられるはずの小さな経済ほど、グローバルな緊張の「板挟み」になってしまいます。
APECが掲げてきた「共通の繁栄」という約束
もともとAPECは、このような経済の分断を防ぐために設立されました。その使命は、均衡ある、包摂的で、持続可能かつ革新的、そして安全な成長を、経済統合を通じて実現することです。
これは単なるスローガンではありません。過去数十年、アジア太平洋の多くの人々の生活水準を引き上げてきたのは、まさにこの「共通の繁栄」という発想でした。互いに市場を開き、技術や人材の交流を進めることで、開発の果実を分かち合ってきたのです。
だからこそ、地政学上のライバル関係を理由に、その基盤を傷つけるのは短絡的だと言えます。2025年のAPEC首脳会議で掲げられた「つなぐ・革新する・繁栄する」という合言葉が、本当に意味を持つかどうかは、会議後の各国の行動にかかっています。
「経済的威圧」ではなく「共通の繁栄」を選ぶために
では、アジア太平洋が経済的威圧ではなく、共通の繁栄を選び取るためには何が必要なのでしょうか。少なくとも次の三つの視点が重要になりそうです。
- 安全保障を口実にしない:本当に必要な安全保障上の措置は、対象や期間を限定し、透明性を高めることで、他国の発展を過度に阻まないよう設計する必要があります。
- 技術協力を「ゼロサム」にしない:先端技術の全面的な遮断ではなく、共通ルールの下での研究開発協力やデジタルインフラ整備を進めることが、地域全体の競争力を高めます。
- 小さな経済の声を中心に据える:大国同士の対立に巻き込まれやすい小規模経済が、自らの開発戦略を選べるよう、国際ルールづくりの場で十分な発言権を保障することが不可欠です。
ニュースをどう読むか:私たちへの問い
日本を含むアジア太平洋の読者にとって、経済ニュースは、もはや株価や為替だけの話ではありません。関税や輸出規制、技術規制のニュースを目にしたとき、「それは誰を守り、誰の発展を制限しているのか」「共通の繁栄につながるのか、それとも経済的威圧なのか」という視点を持つことが重要になっています。
経済政策が武器化される時代にあっても、アジア太平洋が協力と包摂の道を選ぶことは十分に可能です。2025年のAPEC首脳会議は、その方向性を改めて確認する機会でした。今後の国際ニュースを追うときは、「威圧ではなく共に豊かになるための仕組みづくり」という軸で、各国の行動を見つめ直すことが求められています。
Reference(s):
Shared prosperity, not economic coercion, is Asia-Pacific's future
cgtn.com








