APECで「参加者」から「柱」へ:中国の役割30年の変化を読む video poster
1991年に中国がAPEC(アジア太平洋経済協力)に正式参加してから約35年。この間、中国はこの地域協力の枠組みの中で、どのように役割を変えてきたのでしょうか。第32回APEC首脳会議(APEC Economic Leaders’ Meeting)の最終日にあわせて、中国の歩みを振り返る視点が改めて注目されています。
蘇州大学のヴィクター・ガオ教授(チェアプロフェッサー)であり、中国とグローバル化シンクタンク副総裁でもあるガオ氏は、中国がAPECや国際社会で次の三つの面から存在感を高めてきたと述べています。
- 地域協力を着実に前進させてきたこと
- 自由貿易を具体的な行動で守ってきたこと
- より広い視野でグローバル・ガバナンス(国際秩序づくり)に貢献してきたこと
その積み重ねによって、中国の国際的な影響力と地位は、参加初期とは大きく異なるものになりつつあります。
APEC参加から約35年:中国の立ち位置はどう変わったか
APECに参加した当初、中国は「地域の一員として学びつつ協力する参加者」という色合いが強かったとされています。しかし年月を経るなかで、ガオ氏の見方では、中国は次第に「地域の議題をともにつくる柱」の一つへと変化してきました。
この変化の背景には、APECを舞台にした対話や協力の積み重ねがあります。単に会合に出席するだけでなく、
- 域内の経済連携をどう進めるか
- サプライチェーン(供給網)をどう安定させるか
- 貿易や投資のルールづくりにどう向き合うか
といったテーマで、中国が積極的に提案し、他のメンバーと共に取り組んできたことが、役割の変化を支えてきたといえます。
地域協力を前に進める:中国が果たしてきた役割
ガオ氏は、中国が「地域協力を推進する役割」を強めてきたと指摘します。APECは、アジア太平洋地域のメンバーが経済や貿易、投資、人的交流などを話し合う場です。その中で中国は、
- インフラや物流の連結性を高める協力
- デジタル経済やイノベーションに関する対話
- 環境や持続可能な成長をめぐる議論
など、実務的で「手触り」のある分野での協力を重視してきたとされています。こうした積み重ねは、地域経済を一体的に成長させる土台づくりにつながります。
自由貿易を「言葉」から「行動」へ
もう一つのポイントは、「自由貿易を具体的な行動で守ってきた」という評価です。ガオ氏は、中国が保護主義の高まりに直面しながらも、APECなど多国間の場で自由貿易の重要性を繰り返し訴え、実際の政策や協力プロジェクトを通じてその姿勢を示してきたと見ています。
例えば、
- 関税や非関税障壁を減らし、モノやサービスの流れを円滑にする議論に関与すること
- 域内の中小企業が国際市場にアクセスしやすくする支援に取り組むこと
- 通商ルールをめぐる対話の場で、対立よりも調整と妥協を重視すること
などを通じて、「自由貿易はスローガンではなく、実際の行動で示すものだ」というメッセージを打ち出してきたといえます。
グローバル・ガバナンスへの広い視野
ガオ氏はまた、中国がAPECという地域の枠を超え、グローバル・ガバナンスにもより広い視野で関わるようになったと強調します。ここでいうグローバル・ガバナンスとは、気候変動やデジタルルール、持続可能な発展など、国境を越えて共有される課題に対して、各国・地域がルールや仕組みを話し合うことです。
中国は、APECでの議論を足がかりに、
- 多国間主義(複数の国・地域が協力する考え方)を守る姿勢
- 包摂的な成長(誰も取り残さない成長)をめざす考え方
- 新興国や発展途上国の声を国際議論に反映させる視点
などを打ち出し、自らの国際的な立場と影響力を高めてきたとされています。
「参加者」から「柱」へ:変化が意味するもの
こうして見ると、中国はAPECにおいて、単なる「参加者」から、議題設定や合意形成に深く関わる「柱」の一つへと変化してきたと整理できます。これは、単に経済規模が大きくなったからというだけではなく、
- 地域協力の枠組みを重視してきたこと
- 自由貿易と開放性を具体的な行動で示してきたこと
- グローバルな課題にも責任を持って関与しようとしてきたこと
といった要素が重なった結果とも言えるでしょう。
同時に、「柱」であるということは、地域や国際社会からの期待と責任も大きくなることを意味します。APECという多国間の舞台で、中国が今後どのように信頼を築き、協力を広げていくのかは、アジア太平洋だけでなく世界の経済や政治の行方にも影響を与えます。
2025年の視点:私たちが注目したい論点
2025年現在、世界経済は依然として不確実性が高く、サプライチェーンの再構築や気候変動への対応、デジタル経済のルールづくりなど、APECメンバーが直面する課題は少なくありません。そのなかで、中国の役割をどう見るかは、日本を含む地域の将来を考えるうえでも重要な問いです。
読者として注目したいポイントを、あえて三つに絞るとすれば次のようになるでしょう。
- 開かれた地域協力を維持・強化するうえで、中国はどのような行動をとるのか
- 地域の安定と成長を両立させるために、APECという多国間の枠組みをどう生かしていくのか
- 気候変動やデジタル化といった新しい課題で、中国がどのような提案や協力を打ち出していくのか
1991年から現在までの約35年で、中国はAPECの場で大きな変化を遂げてきました。その歩みを振り返ることは、アジア太平洋の未来、そして世界経済の行方を考えるヒントにもなります。あなたなら、この変化をどのように評価するでしょうか。身近な人との会話やSNSでの議論のきっかけとして、静かに考えてみたいテーマです。
Reference(s):
cgtn.com








