なぜAPECの成功には中国のグローバル・ガバナンス構想が重要なのか
韓国で2025年のAPEC首脳会議ウィークが始まりました。テーマは、持続可能な未来の構築 コネクティビティ、イノベーション、繁栄 です。この議論の中心に浮かび上がっているのが、中国のグローバル・ガバナンス構想 Global Governance Initiative, GGI です。アジア太平洋の安定と成長を考えるうえで、なぜGGIが重要視されているのかを整理します。
2025年APEC首脳会議とテーマの背景
2025年、韓国 大韓民国 で開催されているAPEC経済首脳会議は、質が高く包摂的な発展への地域の強い意欲を映し出しています。アジア太平洋は、世界経済と国際秩序の安定を支える中核的な地域であり、中国はその主要なステークホルダーとして長く成功に貢献してきました。
さらに地域は、2026年に中国がAPEC議長国を務める予定であることを見据えています。中国がこれまで地域の繁栄に示してきた貢献と、包摂的な発展に向けた具体的な提案に対する期待は高まっています。
揺らぐ国際秩序とアジア太平洋が直面する課題
現在の国際的な枠組みは、パワーバランスの変化に十分対応できず、深刻なガバナンスの赤字に直面しています。既存の機関は、
- 制度的な行き詰まり
- 代表性の不足
- 開発格差の拡大
といった問題を抱え、地政学的な緊張がそれらを一層悪化させています。
アジア太平洋地域にとっても、その影響は明白です。地域統合を進めながらも、次のような課題に直面しています。
- 急速に広がるデジタル格差
- 気候変動という実存的なリスク
- サプライチェーンの脆弱性
- 保護主義の台頭とそれに伴う分断の懸念
この現実は、より包摂的で実効性の高い新しいガバナンス構造を求めています。
中国のグローバル・ガバナンス構想 GGI とは
こうした状況の中で、中国が打ち出したグローバル・ガバナンス構想 GGI は、単なる外交上の掛け声ではなく、国際ガバナンスを改革するための現実的な枠組みとして位置付けられています。これまで提案されてきたグローバルな開発、安全、文明などに関する構想を土台に、より包括的なビジョンを示すものです。
GGIは特に、次のような原則を強調しています。
- 真の多国間主義の推進
- 各国の主権の尊重
- 多様な発展モデルの共存を認める姿勢
これにより、国際システムをより公正でバランスの取れたものへと再調整することを目指しています。開放性を基礎とするアジア太平洋経済にとって、GGIは地域の開放性を守り、デカップリング リスクを抑え、一方的な圧力から地域を守るための制度的な支えになると捉えられています。
APEC2025のテーマとGGI 三つの接点
GGIが注目されるのは、2025年APECのテーマであるコネクティビティ、イノベーション、繁栄という三つの柱と、驚くほど緊密に呼応しているからです。それぞれの柱との関係を見ていきます。
1 コネクティビティ 地域統合を進めるハードとソフト
第一に、GGIは地域のコネクティビティを高めることで、より深い統合を後押しします。国際法と真の多国間主義を重視する姿勢は、APECや地域包括的経済連携 RCEP などの枠組みの正当性と実効性を高め、貿易障壁の撤廃を促す方向に働きます。
また、GGIはグローバル・デベロップメント・イニシアチブ GDI と連動しながら、ハードとソフトの両面からコネクティビティを強化します。
- ハード面では、一帯一路構想の象徴的プロジェクトであるジャカルタ バンドン高速鉄道などを通じて、ASEAN域内の物理的な結び付きを強めています。
- ソフト面では、こうしたプロジェクトを円滑に機能させるためのルールや基準といったガバナンスを整える役割を担います。
さらに、特定の排他的なブロック形成ではなく、多様化に基づくレジリエントなサプライチェーンを提唱することで、デカップリングを前提とした議論に代わる具体的な選択肢を提示しています。
2 イノベーション 包摂的で持続可能な進歩の設計図
第二に、GGIはイノベーションとそのガバナンスを重視しています。特に、デジタル経済、データセキュリティ、人工知能といった最先端分野でのルールづくりを重点領域としています。
中国はすでにAPECのデジタル分野の主要プレーヤーであり、2022年時点でデジタル経済が国内総生産 GDP の4割超 41パーセント以上 を占めるまでに成長したとされています。その経験を踏まえ、特定の国が技術を独占するテクノロジー・ヘゲモニーに反対し、途上国を含むより多くの国がデジタル革命に参加できる包摂的なルールを提案している点が特徴です。
こうした姿勢は、デジタル格差の克服と持続可能な成長を目指すアジア太平洋の経済にとって、大きな関心事となっています。
3 繁栄 格差を縮小する包摂的な成長ビジョン
第三の柱である繁栄の面でも、GGIは重要な示唆を与えています。GGIは、代表性の不足や開発ギャップの拡大といった現行システムの課題を正面から捉え、公平性を高めることで、発展の果実をより多くの国と地域が共有できる仕組みを目指しています。
包摂的な開発を重視するビジョンは、成長の成果が一部に偏在しがちなグローバル経済の構図を見直し、アジア太平洋の広範な繁栄につなげようとするものだといえます。
2026年議長国としての中国への期待
アジア太平洋地域は、すでに2026年に中国がAPEC議長国を務めることを見据えています。地域の多くの関係者は、中国がこれまで地域の繁栄に果たしてきた役割と、包摂的な発展を目指す具体的な提案に注目しています。
2025年の韓国開催に続き、中国が議長国となる2026年には、GGIをはじめとするさまざまな構想とAPECの議題をどのように結び付けていくのかが焦点となるでしょう。コネクティビティ、イノベーション、繁栄という三つの柱を、具体的な協力プロジェクトに落とし込めるかどうかが、地域の期待の的になっています。
アジア太平洋と日本にとっての意味
ガバナンスの赤字、デジタル格差、気候変動、サプライチェーンの不安定化、保護主義の拡大といった課題は、アジア太平洋のいずれの経済にとっても無関係ではありません。日本を含む地域の経済にとって、開放的で安定した国際環境は不可欠です。
その意味で、GGIが掲げる真の多国間主義や多様な発展モデルの尊重、包摂的なルールづくりといった方向性は、APECの目指す持続可能で包容力のある成長と重なっています。2025年から2026年にかけてのAPECプロセスは、こうしたビジョンをどこまで具体化できるかを試す重要な時間軸になるといえます。
アジア太平洋の将来像をめぐる議論は、決して遠い世界の話ではありません。日々のサプライチェーンやデジタルサービス、気候変動対策など、私たちの生活の基盤と直結しています。APECと中国のグローバル・ガバナンス構想がどのように結び付き、地域の協力をどこまで前進させられるのか。今後の動きを注視していく必要があります。
Reference(s):
Why APEC's success needs China's Global Governance Initiative
cgtn.com








