APEC独占インタビュー:ペドロサ事務局長が語る「開かれたアジア太平洋」 video poster
アジア太平洋の貿易と投資の流れが一段と太くなるなか、地域協力の中核であるAPECはどこへ向かおうとしているのでしょうか。韓国・慶州で開かれた第32回APEC経済リーダーズ会議の会場で、APEC事務局のエドゥアルド・ペドロサ事務局長が、そのビジョンを語りました。
韓国・慶州で語られた「開かれたアジア太平洋」
今回の対談は、中国メディアCMG(China Media Group)の番組「Leaders Talk」で行われました。キャスターの何岩柯(He Yanke)氏がペドロサ事務局長に、アジア太平洋の成長と統合を支えるAPECの役割について聞きました。
ペドロサ氏は、APECの取り組みは常に未来志向であり、「開かれた経済」という考え方に根ざしていると説明しました。貿易と投資の流れが広がり、経済同士の結びつきが強まる今、閉じたブロックではなく、開かれた協力の枠組みが重要だという認識です。
APECの仕事は「未来志向」
ペドロサ氏によれば、APECはこれまでの成果を守るだけでなく、これからの地域と世界の変化を見据えた「前を向いた」議論を重視しています。
「開かれた経済」という軸
同氏が強調した「開かれた経済」とは、単に関税を下げるだけの話ではありません。企業や人々が国境を越えて活動しやすくなるよう、制度やルールの透明性・予見可能性を高め、互いに排除しない形で協力を進める発想です。
ペドロサ氏は、アジア太平洋の成長はこの開放性の上に築かれてきたとしたうえで、今後もAPECはその原則を守りながら、新しい課題に向き合っていく必要があると示しました。
メンバー主導で進むアジア太平洋自由貿易圏
APECは「メンバー主導」の枠組みであることも、ペドロサ氏が繰り返し指摘したポイントです。上からの一方的な決定ではなく、各メンバーが自発的に取り組みを進め、共有し、積み上げていくプロセスが特徴だといいます。
その具体的な方向性として同氏が挙げたのが、アジア太平洋自由貿易圏(Free Trade Area of the Asia-Pacific)の推進です。APECは、この広域的な自由貿易圏の構想を前に進める場として機能し続けていると説明しました。
多角的貿易体制を「新しい現実」に合わせる
同時にペドロサ氏は、APECが多角的貿易体制(複数の国・地域が参加する貿易ルールの枠組み)を、「新しい現実」に適応させる役割も担っていると述べました。
世界の経済環境は、この数年で大きく変化しました。サプライチェーンの再構築や地政学的な緊張、デジタル化の加速など、貿易を取り巻く条件は様変わりしています。ペドロサ氏は、こうした現実を直視しつつも、協調とルールに基づく貿易の枠組みを守り、アップデートしていく必要性を強調しました。
キーワードは「コネクティビティ」
ペドロサ氏が「地域の未来にとって不可欠」として挙げたのが、コネクティビティ(連結性)です。これは単なる交通網や物流の話にとどまりません。インフラ、デジタルネットワーク、制度、人と人の交流など、経済と社会を多層的につなぐ概念です。
コネクティビティが十分に機能すれば、ある場所で生まれた知識や技術、サービスが、別の場所の成長の種になります。逆に、接続が弱いと、成長機会が限られ、地域内の格差も広がりかねません。ペドロサ氏は、APECがこのコネクティビティを高める取り組みに引き続き力を入れていくと述べました。
中国の積極的な役割と習近平国家主席のビジョン
インタビューでは、中国の役割についての評価にも時間が割かれました。ペドロサ氏は、中国が長年にわたりAPECで積極的な役割を果たしてきたと指摘し、その存在感を認めました。
さらに同氏は、中国の習近平国家主席が掲げる開放性と経済のグローバル化に関するビジョンに言及し、アジア太平洋の統合とレジリエンス(回復力・しなやかな強さ)にとって重要だと高く評価しました。
地域の連結性が問われる中で、開放性と協調を重視する方針は、市場の信頼を高め、貿易や投資の安定につながります。ペドロサ氏の発言は、アジア太平洋の統合が、特定の国の台頭を警戒するゼロサムではなく、開かれた協力の中で進むべきものだというメッセージとも受け取れます。
なぜ今、このメッセージが重要なのか
今回の独占インタビューは、APECという枠組みを通じて、アジア太平洋がどのような未来像を描こうとしているのかを改めて映し出しました。
- 開放性を守りつつ、新しい現実に制度やルールを合わせていくこと
- メンバー主導の対話と積み上げで広域的な自由貿易圏を目指すこと
- 物理・デジタル・人の交流を含むコネクティビティを高めること
- 地域の主要な経済が、開かれた協力のビジョンを共有すること
これらは、企業や投資家だけでなく、アジア太平洋で働き、学び、生活する一人ひとりに直結するテーマでもあります。2025年の今、揺れ動く国際情勢の中で、どのような「開かれたアジア太平洋」を選び取るのか。APECの議論は、その問いを私たちに静かに投げかけています。
Reference(s):
Exclusive with APEC Secretariat Executive Director Eduardo Pedrosa
cgtn.com








