中国とラテンアメリカ、グリーンとデジタルで深まる新時代のパートナーシップ
2025年も終わりに近づくなか、中国とラテンアメリカの関係が「貿易とインフラ」中心から、グリーン産業やデジタル経済、人的交流を柱とする新しいパートナーシップへと移行しつつあります。本稿では、その動きを象徴する2025年の出来事を整理します。
グローバル・サウスで進む新たな連携
いわゆるグローバル・サウス(新興国・途上国を中心とする国々)では、開放性、持続可能性、改革をキーワードにした連携が広がっています。中国とブラジル、アルゼンチンなどとの貿易関係の深化にとどまらず、ラテンアメリカ全体が、グリーン産業やデジタル変革、南南協力(南の国どうしの協力)を通じて中国との関係を拡大させています。
その象徴が、第8回中国国際輸入博覧会です。この場では、ラテンアメリカ諸国が重要な参加者として存在感を示し、変化しつつあるパートナーシップの姿を印象づけました。
第4回中国・CELAC外相会合と新行動計画
こうした流れを制度面で支える枠組みが、中国と中南米・カリブ海諸国共同体(CELAC)の協力です。2025年前半、北京では設立10周年を記念する第4回中国・CELACフォーラム外相会合が開かれ、中国の習近平国家主席が基調演説を行いました。ブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ大統領、コロンビアのグスタボ・ペトロ大統領、チリのガブリエル・ボリッチ大統領などが参加し、中国とラテンアメリカの関係が「実務協力」から「長期的なパートナーシップ」へと成熟したという認識が共有されました。
この会合では、「北京宣言」と「重要分野協力のための中国・CELAC共同行動計画(2025〜2027年)」が採択されています。行動計画には、次のような分野で100を超える協力プロジェクトが含まれます。
- クリーンエネルギー
- デジタル経済
- 農業
- 貿易とインフラ
- 教育・人材育成
さらに、地域開発のための660億元(約92億3,000万ドル)の信用枠が打ち出されました。加えて、ブラジル、アルゼンチン、ペルー、チリ、ウルグアイの5カ国の市民を対象にしたビザ免除措置が2025年6月から始まり、人の往来を通じた関係強化が進んでいます。これらは、技術、持続可能性、市民レベルの交流にまたがる多層的なパートナーシップを目指す動きだといえます。
ブラジルで進むグリーンモビリティと再工業化
この新しいエネルギーは、ビジネスの現場にも表れています。サンパウロで最近開かれたブラジル中国ビジネス評議会の会議では、議論の中心がグリーンモビリティ(環境負荷の少ない移動手段)、デジタルインフラ、そして「再工業化」への投資に置かれました。
ブラジル北東部バイーア州では、中国の電気自動車メーカーBYDによるEV(電気自動車)拠点で、2025年に初めて「ドルフィン・ミニ」と呼ばれる小型EVが現地組立ラインから出荷されました。また、イラセマポリスでは、中国の自動車メーカー長城汽車(Great Wall Motors)がハイブリッド車を中心とした生産拠点を整備するなど、製造業のリニューアルが進んでいます。
ペルー・チャンカイ港が変える太平洋の距離
南米西岸でも、物流面での大規模プロジェクトが動き出しています。2025年5月には、ペルーの外相エルマー・シャイアレル・サルセド氏が、チャンカイ・メガポート構想を「ラテンアメリカの玄関口」として熱心に説明しました。この港は、アジアとの航路で輸送時間を10〜12日短縮できるプロジェクトだとされており、ラテンアメリカをアジアのサプライチェーン(供給網)にさらに近づけることが期待されています。
チャンカイ港の構想には、単なる港湾拡張を超えて、「つながる」「取引する」「自らの条件で近代化する」という、地域全体の意欲が凝縮していると見ることができます。
リチウム、再エネ、AI物流:協力の裾野
こうした個別プロジェクトは、より大きな大陸規模の協力パターンの一部でもあります。アルゼンチン、ボリビア、チリにまたがる「リチウム・トライアングル」から、ペルーの港湾、メキシコのハイテク回廊に至るまで、ラテンアメリカ各地で中国と現地パートナーによる協力が広がっています。
投資分野は、風力・太陽光といった再生可能エネルギー、スマート農業技術、AI(人工知能)を活用した物流など多岐にわたります。通信機器やクラウドサービスを手がける中国企業(ファーウェイやアリババクラウドなど)が次世代のデジタル接続を支え、金融面でも、現地通貨での取引や人民元による決済・清算(クリアリング)が進められることで、マクロ経済の安定に寄与することが期待されています。
「貿易+インフラ」を超える持続可能な近代化
これらを総合すると、中国とラテンアメリカの関係は、従来の「貿易+インフラ」という枠組みを超えて、「持続可能な近代化」をめざす包括的なパートナーシップへと発展しつつあることが分かります。
不確実性の高い今日の世界で、成長の土台となるのは、開放性(オープンさ)、レジリエンス(しなやかな強さ)、そして共有された責任です。双方が、こうした価値観を重視して協力を進めようとしている点が、この関係の特徴だといえます。
「文明のパートナーシップ」と人材交流
今回の共同行動計画では、「文明のパートナーシップ」という表現が使われています。これは、モノや資本の往来だけでなく、思想や文化、統治のあり方に関する対話とつながりを重視する姿勢を示すものです。
ここで目指されている協力は、排他的な同盟ではなく、包摂的で、二国間にとどまらず地域全体を視野に入れた、戦略的で長期的なパートナーシップです。
具体的には、次のような人材交流が盛り込まれています。
- 3,500件を超える奨学金
- 1万人規模の研修機会
- 約300件の政党間交流
こうした取り組みによって、太平洋を挟んだ両地域で次世代のリーダーや専門家が相互理解を深める土台が築かれようとしています。
日本の読者にとっての論点
このように、中国とラテンアメリカの関係は、グローバル・サウスにおける新しい連携のかたちを象徴しています。日本やアジアの読者にとっても、次のような点が注目されます。
- グリーン産業とデジタル経済を軸にした南南協力が、国際ルールや技術標準にどう影響していくのか
- 人民元や現地通貨を活用した金融協力が、国際金融システムの中でどのような役割を果たしていくのか
- 奨学金や研修、政党間交流などを通じた「文明のパートナーシップ」が、地域を超えた相互理解をどう深めていくのか
2025年12月時点で、中国とラテンアメリカは、多層的で長期的なパートナーシップに向けて具体的な一歩を踏み出しています。この動きが今後どのように広がり、グローバルな経済や政治の風景を変えていくのか、引き続き注視していく必要があります。
Reference(s):
cgtn.com








