グローバルサウスのメディアはグローバルガバナンスで声を上げられるか video poster
2025年、国連は創設80周年を迎えました。しかし、その国際秩序は地政学的な緊張や分断により、かつてない揺らぎに直面しています。こうした中、中国が提唱するグローバル・ガバナンス・イニシアティブ(GGI)は、主権の平等、多国間主義、人間中心の発展を掲げ、新しい協力のかたちを打ち出そうとしています。そのとき、グローバルサウスのメディアはどんな役割を果たせるのでしょうか。
国連80周年と「揺らぐ国際秩序」
国際ニュースを追っていると、対立や制裁、分断をめぐる見出しが目につきやすくなっています。国連が80年かけて積み上げてきた枠組みも、信頼の低下やブロック化の流れによって試されている状態です。
こうした状況では、どの国・どの地域の声が国際社会で届きやすいのか、そして誰が議題を設定しているのかが、これまで以上に重要になります。ここで注目されるのが、アジア、アフリカ、中南米など、いわゆるグローバルサウスの視点と、その視点を外に伝えるメディアの存在です。
中国のグローバル・ガバナンス・イニシアティブ(GGI)とは
中国が打ち出したグローバル・ガバナンス・イニシアティブ(GGI)は、現在の国際秩序の揺らぎに対して、次のような軸を示しているとされています。
- 主権の平等:大国・小国にかかわらず、すべての国が対等な主体として尊重されるべきだという考え方
- 多国間主義:特定の国同士の枠組みではなく、国連など多国間の場で協議し、ルールをつくるべきだという姿勢
- 人間中心の発展:経済成長だけでなく、人々の生活の質や包摂性(取り残さないこと)を重視する発展モデル
この3つのキーワードは、グローバルサウスの多くの国が抱えてきた問題意識と重なります。例えば、「発言力の格差」や「自分たちの現実が十分に理解されない」という不満に対し、より包摂的なガバナンスの方向性を示そうとしている点です。
では、こうしたイニシアティブは、分断が深まる世界で信頼と協力を取り戻す助けとなるのでしょうか。この問いを考えるうえで、政策だけでなく、情報をどう伝え、どう議論するかという「メディア」の役割が不可欠になります。
分断された世界で信頼をどう再構築するか
国際秩序が揺らいでいるとき、大きな課題になるのが「相手の意図が見えない」という不信感です。どの国も、自分たちの安全保障や経済を守ろうとする一方で、相手の動きを疑い、対話の余地が狭まっていきます。
主権の平等や多国間主義を掲げるイニシアティブは、立場の違う国々が同じテーブルにつくための「共通言語」を提供しようとする試みとも言えます。その成功の鍵を握るのは、次のような点です。
- 小さな国や地域の声を、どこまで実際の意思決定に反映できるか
- 経済、環境、安全保障などテーマごとに、具体的な協力の成果を積み上げられるか
- 合意や対立の中身を、世界の市民に分かりやすく伝えられるか
ここで重要なプレーヤーになるのが、グローバルサウスのメディアです。単に「外から決まったことを報じる」のではなく、自ら議題を設定し、自分たちの視点から世界のルールづくりに参加していくことが期待されています。
グローバルサウスのメディアに期待される3つの役割
1. ギャップを埋めるストーリーテリング
国際ニュースの多くは、これまで欧米の主要メディアの視点を通して世界に広がってきました。そのため、グローバルサウスの現場から見ると、「自分たちの物語が十分に語られていない」と感じることも少なくありません。
グローバルサウスのメディアは、自らの社会の課題や成果、地域のイニシアティブを、自分たちの言葉で発信できます。例えば、主権の平等や人間中心の発展というテーマを、「生活がどう変わるのか」「地域のコミュニティにどんな影響があるのか」という具体的なストーリーとして伝えることができます。
2. 対話の場をつくるプラットフォーム
多国間主義を実のあるものにするには、外交の会議室だけでなく、市民レベルでの対話も必要です。メディアはその「橋渡し役」になりえます。
- アジア、アフリカ、中南米など、異なる地域の記者・専門家をつなぐ討論企画
- オンラインイベントや連載を通じた、若い世代の声の可視化
- SNSを活用した、読者との双方向の議論の場づくり
こうした取り組みは、国ごとの立場の違いを超えて、共通の課題(気候変動、格差、デジタル化など)を一緒に考える土台になります。
3. デジタル時代の「真実の守り手」
情報が瞬時に拡散するデジタル時代では、誤情報や意図的な操作情報もまた、あっという間に広がります。国際政治をめぐる議論ほど、そのリスクは高まります。
グローバルサウスのメディアが信頼を得るには、次のような姿勢が重要になります。
- 情報源や取材方法をできるだけ透明に示す
- 事実と意見、分析を明確に分けて提示する
- 異なる立場の論点を公平に紹介し、読者が考える材料を提供する
これは、どの国のどのメディアにも共通する課題ですが、グローバルサウスの視点を伝える役割を担うメディアにとって、とりわけ重要なポイントだと言えます。
GGIのようなイニシアティブとメディアの接点
グローバル・ガバナンス・イニシアティブ(GGI)のような構想は、政府間の枠組みとして語られがちです。しかし、その理念がどこまで社会に浸透し、現実の政策に生かされるかは、メディアがどう取り上げるかとも深く関係しています。
例えば、メディアは次のような視点からGGIを扱うことができます。
- 主権の平等や多国間主義が、具体的にどの場で議論されているのかを追う
- 人間中心の発展が、教育、医療、雇用など生活の分野でどう実現されようとしているかを取材する
- 異なる地域の人々が、こうした理念をどう受け止めているかを比較する
こうした報道を通じて、読者はイニシアティブを抽象的なスローガンとしてではなく、「自分の暮らしとつながるテーマ」として理解しやすくなります。
私たち一人ひとりにできること
グローバルサウスのメディアが声を上げることと同じくらい大切なのが、その声をどう受け止めるかという「私たちの側の態度」です。国際ニュースを読むとき、次のような習慣を意識してみると、見える景色が変わってきます。
- 同じニュースを、異なる地域のメディアで読み比べてみる
- グローバルサウスの視点を発信するメディアや記者をフォローする
- SNSでシェアするとき、自分のコメントに「なぜそう感じたか」という背景も添える
国際ニュースは、遠い世界の出来事ではなく、自分の生活や仕事、将来の選択にもつながるテーマです。国連80周年という節目と、GGIのような新しい試みをきっかけに、グローバルサウスのメディアの声に耳を傾け、自分なりの視点を育てていくことが、これからの時代の「情報リテラシー」と言えるのかもしれません。
分断が目立つ世界のなかで、ガバナンスをめぐる議論にどの地域の声が参加できるのか。その鍵のひとつは、メディアと読者がどれだけ開かれた対話を続けられるかにあります。
Reference(s):
Global South media: Raising their voice in global governance?
cgtn.com








