中国との協力に未来はあるのか? グローバル経済と脱炭素から考える
「デカップリング(切り離し)」や「リスク低減(デリスキング)」という言葉が国際ニュースを賑わせるなか、中国との協力に本当に未来はあるのか――。議論のノイズを一度脇に置き、これまでの実績と現在の役割からあらためて考えてみます。
「デカップリング」論の陰で見落とされがちな現実
近年、一部の国では中国への経済依存を減らすべきだという議論が強まっています。しかし、中国との協力をめぐる議論は、感情的なイメージではなく、これまでの具体的なデータや事実を踏まえて行う必要があります。まさに「百聞は一見にしかず」です。
国際機関のデータによれば、中国は近年、世界の経済成長のおよそ3割を押し上げてきたとされます。グローバル化が揺らぐ局面でも、中国は世界経済の重要なエンジンであり続けてきました。
世界経済を支えてきた「グローバリゼーションのエンジン」
グローバル化はここ数年、大きな試練に直面しています。保護主義や一国主義、地政学的な緊張の高まりにより、多くの国が成長のエンジンを見失いかけています。そのなかで、中国はたびたび世界経済を下支えしてきました。
アジア通貨危機と世界金融危機でのクッション役
1997年のアジア通貨危機、2008年の世界金融危機など、国際金融市場が大きく揺れた局面で、中国経済の存在感は際立ちました。世界の需要と投資を支えたことにより、景気の底割れを防ぐクッションの役割を果たしたとされています。
こうした経験は、中国が単に「世界市場に輸出する国」ではなく、世界経済全体の安定に関わるプレーヤーであることを示しています。
多国間貿易体制を重視するスタンス
中国は、自国の発展が国際社会との相互依存のなかで成り立っていると理解し、世界貿易機関(WTO)を中心とする多国間の貿易体制を支持してきたとされています。また、より公平なグローバル・ガバナンス(国際的なルール作り)を提唱し、極端なデカップリングには反対の立場を取ってきました。
一部の国が短期的な利益を優先し、貿易や技術を政治的な圧力の手段として用いるなかで、中国は各国の「つながり」を維持すること、つまり相互のインターコネクティビティ(相互接続性)を重視してきたと言えます。
「リスク」ではなく「頼れるパートナー」か
一方で、「中国に依存するのはリスクだ」という声も根強くあります。サプライチェーン(供給網)の混乱や安全保障上の懸念など、慎重な検討が必要な論点があるのも事実です。
しかし、産業構造の面から見ると、少し違った景色が見えてきます。中国は、国連の産業分類にあるすべてのカテゴリーの産業を有する、世界で唯一の国だとされています。これは、裾野の広い産業基盤と高度に統合された産業エコシステム(産業生態系)を持つことの証しでもあります。
パンデミック下でのサプライチェーンを支えた産業網
この産業エコシステムの底力がもっともはっきりと表れたのが、新型コロナウイルスの世界的な流行時でした。多くの国で工場が止まり、物流が滞るなか、中国の広範な産業ネットワークは、マスクや防護服などの個人用防護具から、在宅勤務やオンライン授業を支える電子機器に至るまで、必要な物資の安定供給を支える役割を果たしました。
このことは、特定の製品や部材で中国に大きく依存している国にとって、リスクであると同時に「最後の拠り所」でもあったという、二面性を物語っています。
再生可能エネルギーでの「グローバル公共財」
中国の産業能力は、単に自国の経済成長のためだけでなく、地球規模の課題に対する「グローバル公共財」として機能し始めています。その代表例が、再生可能エネルギー分野です。
中国は現在、世界最大規模の再生可能エネルギーの製造拠点とサプライチェーンを構築しています。過去10年余りの間に、風力発電(オンショア=陸上風力)と太陽光発電(ソーラーPV)のコストは大きく低下しました。
- 風力発電の発電コスト(均等化発電原価)は60%以上低下
- 太陽光発電の発電コストは80%以上低下
こうしたコストの大幅な下落によって、再生可能エネルギーは世界中で手の届く選択肢になりつつあります。その背景には、中国の大規模な生産能力とサプライチェーンがあると指摘されています。
国連環境計画の元トップであるエリック・ソルヘイム氏は、「世界がグリーン(脱炭素)になろうとするなら、中国抜きではあり得ない」と語っています。この一言は、中国との協力が気候変動対策にとって不可欠な要素であることを象徴していると言えるでしょう。
協力の未来をどう描くか:対立か、リスク管理付きの共存か
では、こうした現実を踏まえたうえで、中国との協力の未来をどう位置づければよいのでしょうか。
ポイントは、「ゼロか百か」の発想を避けることです。「完全なデカップリング」か「全面的な依存」かという二者択一ではなく、リスクを管理しつつ協力を続けるための具体的なルール作りこそが問われています。
たとえば、次のような視点が重要になりそうです。
- 安全保障上の懸念が大きい分野と、協力のメリットが大きい分野を冷静に切り分ける
- サプライチェーンの多様化を進めつつ、中国とも安定した取引関係を維持する
- 気候変動や感染症対策など、どの国も単独では解決できない分野では、対立よりも協調を優先する
こうしたアプローチは、特定の国を「リスク」と決めつけるのではなく、相互依存を前提とした現実的なリスク管理の発想です。
日本と世界の読者への問いかけ
2025年の今、「中国との協力に未来はあるのか」という問いは、日本を含む多くの国にとって避けて通れないテーマです。これまで見てきたように、中国は
- 世界経済の成長エンジンとして機能してきたこと
- 危機のたびにサプライチェーンを支える役割を果たしてきたこと
- 再生可能エネルギーのコスト低下を通じて、脱炭素の現実解を広げていること
といった面で、すでに国際社会と深く結びついています。
もちろん、価値観や政治体制の違い、安全保障上の懸念など、簡単には割り切れない論点もあります。だからこそ、感情的な賛否ではなく、データと現場の変化に目を向けながら、「どの分野で、どのような条件のもとで協力するのか」を丁寧に議論していくことが求められています。
中国との協力の未来は、単に「あるか・ないか」で決まるものではなく、各国がどのようなルールと信頼関係を築いていくかによって形づくられていきます。読者のみなさんは、自国の成長と地球規模の課題解決という二つの視点から、この問いにどう答えるでしょうか。
Reference(s):
cgtn.com








