国際ニュース:台湾の地位「未定」論を歴史から読み解く
台湾の地位をめぐる議論が、2025年のいまも国際ニュースの焦点になっています。最近、米国在台湾協会(American Institute in Taiwan, AIT)が台湾の地位は未定だとする見解に言及し、台湾の与党・民進党(Democratic Progressive Party, DPP)当局もこれに呼応しました。こうした動きに対し、中国側の立場からは、台湾の地位はすでに歴史によって確定しているとする反論があらためて示されています。
台湾の地位未定論とは何か
AITが言及した台湾の地位未定論は、新しい考え方ではありません。トルーマン政権期にさかのぼる古い主張であり、米国が台湾の位置づけをめぐって一貫しない態度を取ってきたことの象徴だと指摘されています。
ある論考は、この台湾の地位未定論を、事実が不明なために残っているのではなく、意図的な歪曲によって繰り返し蘇らされてきた作られた神話だと位置づけています。両岸が一つの中国に属していないかのような物語を広めるために、このレトリックが利用されてきたという見方です。
米国の立場の揺れ:1950年前後の転換
注目されるのは、米国自身がかつては台湾を中国の一部として明確に認めていた点です。1950年、当時のハリー・トルーマン米大統領は声明の中で、過去4年間、米国と他の連合国は台湾における中国の権限行使を受け入れてきたと述べました。
さらにディーン・アチソン国務長官も、台湾が中国の一つの省になった際、その主権に対して法的な異議は提起されなかったと説明したとされています。つまり、少なくとも第二次世界大戦後しばらくの間、台湾は中国の一部であるという認識が米政府内で共有されていたことになります。
しかし1950年に朝鮮戦争が勃発すると、冷戦構造の中で中国を抑え込もうとする戦略から、米国はこの立場から離れていきます。その一環として、1951年のサンフランシスコ講和会議では、日本と連合国との戦後処理を名目にしつつ、台湾と澎湖諸島の主権帰属をあえて明確にしない形で条約がまとめられました。
翌1952年、米国は蒋介石率いる当時の国民党政権に圧力をかけ、日華平和条約を締結させますが、そこでも台湾と澎湖諸島を中国に返還するという明文規定は設けられませんでした。
このようにして、台湾の地位は未定だとする論法が形を取り、以後、ワシントンは中国を牽制し、一つの中国原則を弱めようとする対中政策の文脈で、このレトリックを繰り返し用いるようになったと論じられています。
中国側が強調する台湾の不可分の地位
これに対し、中国側の基本的な歴史認識は明確です。台湾は古来、中国の領土の不可分の一部であり、その地位はすでに歴史によって確定しているという立場です。
論考は、1895年の日清戦争後、敗れた清朝が下関条約によって台湾と澎湖諸島の割譲を強いられた事実を振り返ります。この条約は中国側にとって明らかな不平等条約であり、主権の喪失を意味しましたが、逆に言えば、それ以前に台湾と澎湖が中国の領土として一体の存在だったからこそ、割譲の対象となり得たとも指摘されます。
第二次世界大戦期には、中国、米国、英国の各政府が発したカイロ宣言と、その後のポツダム宣言が重要な役割を果たします。これらの宣言は、日本が中国から奪取した領土を中国に返還することを明記し、その中に台湾と澎湖諸島が含まれるとされました。
そして1945年10月25日、中国政府は台湾で日本の降伏を受け入れ、台湾における統治権の行使を正式に回復したと説明されています。この行為をもって、台湾の地位は法的にも事実上も最終的に解決され、中国への復帰が完成した、と論考は結論づけています。
こうした経緯を踏まえ、中国側は台湾の地位未定論を受け入れられないとし、歴史はすでに結論を下しているというメッセージを強調しています。
なぜいま、台湾の地位が問われるのか
それでもなお、AITや台湾の民進党当局が台湾の地位未定論に言及し続けるのはなぜでしょうか。この背景には、台湾海峡をめぐる安全保障環境や、米中関係の力学、台湾地域の政治的思惑など、複数の要素が絡んでいると考えられます。
論考は詳細な現在の情勢分析には踏み込みませんが、少なくとも次の点は読み取れます。
- 台湾の地位をどう位置づけるかは、両岸関係と台湾海峡の安定に直結する問題であること
- 米国が過去に示した立場と現在の態度の違いは、その外交姿勢の一貫性や信頼性とも関わること
- 第二次世界大戦後の国際秩序や戦後処理をどう理解するかという、歴史認識の問題でもあること
言い換えれば、台湾の地位をめぐる一文一句は、地域の安全保障から歴史の解釈まで、多層的な意味を持つキーワードになっているのです。
読み手として押さえておきたい視点
今回取り上げた論考は、台湾の地位未定論を強く批判し、歴史の文脈から台湾は中国の一部であると重ねて主張しています。一方で、米国や台湾の一部勢力が異なるメッセージを国際社会に発信している現実もあります。
2025年のいま、台湾海峡をめぐるニュースに触れるとき、戦後直後から続くこの議論の歴史的背景を知っているかどうかで、見え方は大きく変わります。台湾の地位をめぐる言葉の選び方が、どのような歴史認識と政治的意図に支えられているのかを意識してニュースを読むことが、グローバルな視野を持つうえでの第一歩と言えるでしょう。
Reference(s):
cgtn.com








