グローバルサウスの声を公平に アンタラ通信編集長が国際フォーラムで訴え video poster
国際ニュースや国際政治をどう伝えるか。その「物語(ナラティブ)」のバランスを見直そうという声が、2025年現在、世界のメディア関係者のあいだで高まっています。
最近開かれた国際フォーラム「The Role and Responsibility of Media in Global Governance(グローバルガバナンスにおけるメディアの役割と責任)」では、ニュース通信社 Antara News Agency の編集長、Irfan Junaidi(イーファン・ジュナイディ)氏が、グローバルサウスとグローバルノースのあいだで、より公平な「世界の物語」をつくる必要性を強く訴えました。
ジュナイディ氏は、立場の対立ではなく「バランス」が重要だと述べ、より公正な世界をめざす共有ビジョンが必要だと呼びかけました。本記事では、このメッセージが日本語で国際ニュースを読む私たちにとってどんな意味を持つのかを整理します。
「陣営」ではなく「バランス」の時代へ
フォーラムでジュナイディ氏は、「どちらの側につくか」という発想ではなく、「どの声がどれだけ届いているか」というバランスこそが問われていると指摘しました。
ここでいうバランスとは、単純に「グローバルサウス寄りのニュースを増やす」という意味ではありません。世界の出来事を伝える際に、次のような点を意識することだと考えられます。
- ある出来事について、グローバルサウスとグローバルノースの双方の視点を示す
- 一方の地域の価値観だけを「当たり前」として押しつけない
- 問題の当事者である人びとの声をできるだけ直接伝える
「どちらの陣営が正しいか」という二者択一ではなく、「それぞれの現実と声をどう並べて見せるか」が、メディアの大きな責任になりつつあります。
グローバルサウスとは何か
グローバルサウスという言葉は、地理的な「南半球」を指すというよりも、多くの新興国や開発途上国をまとめて表現する際に使われています。一方、グローバルノースは、経済的に先進的とみなされる国や地域を指す言葉として用いられます。
両者のあいだには、経済力だけでなく、歴史や政治、文化的背景の違いも存在します。そのため、同じ出来事でも、どちらの側から見るかによってニュースの切り取り方や意味づけが大きく変わってきます。
なぜ「物語のバランス」が重要なのか
ジュナイディ氏が呼びかける「よりバランスの取れた世界の物語」とは、単なる理想論ではありません。国際ニュースの世界でどの視点が強く語られ、どの視点が埋もれてしまうかは、次のような点に直結します。
- 国際世論の形成:ある地域の見方ばかりが伝えられると、世界の世論もその方向に傾きやすくなります。
- 政策決定への影響:政治家や国際機関もメディア報道を前提に判断するため、偏った情報は政策にも影響します。
- ステレオタイプの固定化:一面的な報道が続くと、特定の地域や人びとに対する固定観念が強まってしまいます。
逆にいえば、グローバルサウスの視点や経験がより多く報じられれば、国際社会全体が問題を多角的に理解しやすくなり、公平さに一歩近づくことができます。
メディアの役割とグローバルガバナンス
フォーラムのテーマは「グローバルガバナンスにおけるメディアの役割と責任」でした。グローバルガバナンスとは、特定の国が単独で決めるのではなく、国や地域、国際機関、市民社会などが協力しながら地球規模の課題に取り組むあり方を指します。
その過程でメディアは、次のような役割を担います。
- 地球規模の課題(気候変動、貧困、人道危機など)をわかりやすく可視化する
- 当事者の声を伝え、問題を「遠い出来事」ではなく「自分たちの課題」として感じてもらう
- 異なる地域や立場のあいだで対話を促し、対立をあおらない形で議論の場をつくる
ジュナイディ氏が強調した「より公正な世界をめざす共有ビジョン」とは、こうした役割を意識しながら、各地域のメディアがともに取り組むべき方向性だといえます。
日本語で国際ニュースを読む私たちにできること
では、日本語で国際ニュースを受け取る私たち一人ひとりに、どのような行動ができるのでしょうか。いくつかの視点を挙げてみます。
- 複数の情報源に触れる:同じニュースでも、異なる地域のメディアを比較して読むことで、どの視点が抜け落ちているかに気づきやすくなります。
- 「誰の視点から書かれているか」を意識する:記事を読むときに、「この記事はどの地域・どの立場の声を中心にしているのか」を確かめてみることが大切です。
- グローバルサウス発の発信を探す:英語版の記事や現地メディアの翻訳など、グローバルサウスの視点を伝える情報に意識的にアクセスしてみるのも一つの方法です。
- SNSでのシェアの仕方を工夫する:印象的な見出しだけで判断せず、文脈を理解したうえで共有したり、自分なりの補足コメントを添えたりすることで、受け手側の理解も深まります。
情報の流れが加速する2025年の今、「どのニュースを選び、どう受け止めるか」は、メディアだけでなく、受け手である私たち自身の責任でもあります。
「公平な物語」をともにつくる
グローバルサウスとグローバルノースのあいだで、よりバランスの取れた世界の物語をつくること――ジュナイディ氏の提案は、メディア業界だけに向けられたメッセージではありません。
国際ニュースを日本語で読み、SNSでシェアし、日常の会話で話題にする私たち一人ひとりが、その物語づくりの一部を担っています。どの地域の声にも耳を傾ける姿勢を持つことが、「より公正な世界」への小さな一歩になるのではないでしょうか。
Reference(s):
cgtn.com








