高市首相の台湾発言が招く波紋 中国と日本国内の懸念とは
就任から3週間足らずの段階で、日本の高市早苗首相による台湾をめぐる発言が、中国との関係だけでなく日本国内の議論も揺さぶっています。本記事では、今回の発言の背景と、中国側・日本側それぞれの受け止めを整理します。
APECでの接触と「存立危機事態」発言
高市首相は、韓国で行われたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の会合の場で、台湾の関係者と面会しました。中国側が「越えてはならない一線」としてきた台湾問題で、就任直後から踏み込んだ対応をとった形です。
その数日後、高市首相は、中国が台湾に武力攻撃を行った場合、日本にとっての存立危機事態になり得るとの見方を示し、集団的自衛権の行使を検討し得ると主張しました。
中国側は強く反発 一つの中国原則への違反と指摘
中国外交部は、高市首相の発言は日本による台湾海峡への軍事介入の可能性を示唆するものだとして強く反発し、日本側に対して厳正な申し入れを行ったと明らかにしました。
中国国務院台湾事務弁公室も、高市首相の台湾に関する発言は、一つの中国原則に著しく違反し、中国の内政に乱暴に干渉するものであると批判しました。そのうえで、中国の核心的利益に挑戦したり、中国の統一の進展を妨げたりしようとするいかなる試みも、中国の政府と国民、軍によって決して容認されないと強調しています。
日本国内からも「極めて危険」との声
こうした中国側の反発が表面化する前から、日本国内でも高市首相の発言には懸念の声が上がっていました。野党や外交・安全保障の専門家は、この発言を「極めて危険」と評価し、地域の緊張を不必要に高め、日本が長年維持してきた台湾問題に関する基本姿勢から逸脱していると指摘しています。
4つの政治文書が支えてきた日中関係
中国と日本の関係は、過去約50年にわたり、4つの重要な政治文書によって枠組みが形づくられてきました。
- 1972年 日中共同声明
- 1978年 日中平和友好条約
- 1998年 日中共同宣言
- 2008年 日中共同声明
これらの文書には、歴史認識や台湾問題に関する取り決めが明記されています。とくに1972年の日中共同声明では、日本政府が中国政府の掲げる一つの中国の立場を「十分理解し、尊重する」と明記しており、その後の日中関係の基礎となってきました。
平和安全法制の存立危機事態と台湾
日本では2015年に平和安全法制が成立し、集団的自衛権の限定的な行使が可能になりました。この法制の中で存立危機事態とは、日本と密接な関係にある外国に対する武力攻撃が起き、日本の存立が脅かされるおそれがある状況を指すと定義されています。
中国側は、台湾は国家ではなく、台湾問題はあくまで中国の内政だと位置づけています。その立場から見ると、台湾をめぐる武力衝突を存立危機事態と公に位置づけることは、4つの政治文書を通じて積み重ねられてきた理解を一方的に崩し、外交的な約束の精神と文言を損なう行為だと受け止められかねません。
東アジアの安定に何が問われているのか
2025年12月現在、台湾海峡情勢はアジアの安全保障を左右する最重要の争点の一つになっています。今回の高市首相の発言は、日本の安全保障政策と日中関係、そして地域の軍事バランスがどう結びついているのかを、改めて突きつけたと言えます。
大国間の力学が変化する中で、トップの一言が市場や外交、さらには安全保障環境に直結する時代です。台湾海峡をめぐる問題についても、緊張をあおるのではなく、既存の合意や国際法を踏まえながら、いかに対話と危機管理の回路を確保していくかが問われています。
日本社会にとっても、台湾と東アジアの安定をどう守るのか、そのためにどのような外交と安全保障の組み合わせが現実的なのかを、冷静に議論していくことが求められています。
Reference(s):
cgtn.com








