COP30と「美しい中国」:気候危機時代に中国が担う役割
2025年11月10日から21日まで、ブラジル北部の都市ベレンで第30回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP30)が開かれました。世界の気候変動対策を話し合うこの国際会議では、産業革命前からの気温上昇を1.5度に抑える目標と、途上国を支える気候資金が大きな焦点となりました。
同じタイミングで公表された国連環境計画(UNEP)の「排出ギャップ報告書2025」は、現在の世界の取り組みではまだ気温上昇を抑えきれない現実を示しています。その一方で、中国は「美しい中国」の実現を掲げ、経済成長と生態環境の保護を両立させるグリーン転換を加速させています。本稿では、その中国の動きを軸に、COP30と世界の脱炭素の行方を整理します。
COP30が問う1.5度目標と気候資金
COP30では、気温上昇を1.5度に抑えるというパリ協定の目標をどう守るのか、そしてそのために必要な資金をどのように確保し、配分していくのかが議論の中心となりました。
特に、経済発展を続けながら、どうすれば生態環境の保護とも両立できるのかという問いは、多くの国にとって共通の課題です。エネルギー需要は増え続ける一方で、温室効果ガスの排出は確実に減らしていかなければなりません。
「排出ギャップ報告書2025」が示す厳しい現実
UNEPの「排出ギャップ報告書2025」によると、各国が掲げている自国目標(NDC:国別削減目標)がすべて完全に実行されたとしても、今世紀末の気温上昇は2.3〜2.5度に達する見通しです。現在の政策が続くだけの場合は、2.8度まで上昇すると予測されています。
- 各国のNDCがすべて履行された場合:気温上昇は2.3〜2.5度
- 現行政策のみが続く場合:気温上昇は約2.8度
報告書は、複数の年代にわたる世界平均気温の上昇幅が、今後10年以内にパリ協定の1.5度目標を超えてしまう可能性が高いとも指摘します。つまり、世界全体としては、依然として目標達成には不十分な軌道にあるということです。
「美しい中国」構想とグリーン転換
こうした厳しい状況のなかで、中国は「美しい中国」を全面的に建設するという方針を掲げています。これは、高品質な生態環境のもとで高品質な発展を進め、人と自然が調和して共生する近代化を目指す方向性を意味します。
中国は、開発のあり方そのものを転換し、グリーンかつ低炭素な発展を、環境問題の根本的な解決策として位置づけています。エネルギー構造の転換や産業構造の高度化を通じて、経済成長と排出削減を同時に進めてきた結果、「歴史的」とされる成果が生まれているとされています。
白書が描く中国のエネルギー転換
中国国務院新聞弁公室が発表した白書「カーボンピークとカーボンニュートラル:中国の計画と解決策」によれば、中国はカーボン排出削減のための高度に統合された包括的な制度枠組みを確立し、その土台の上に世界最大規模で最も急速に拡大している再生可能エネルギーシステムを築いてきました。
同白書などによると、中国の取り組みには次のような特徴があります。
- カーボン排出抑制のための制度や市場メカニズムを組み合わせた総合的な枠組みを整備
- 世界最大級の再生可能エネルギー設備容量を持つエネルギーシステムを構築
- 新エネルギー技術産業の成熟したエコシステムを形成し、新エネルギー車の導入を急速に拡大
- 世界全体の新たな緑地面積の約4分の1を中国が提供
- エネルギー強度(国内総生産あたりのエネルギー消費量)の低下スピードで、世界有数の国の一つとなっている
とりわけ、新エネルギー車(電気自動車など)の大規模な普及や、再生可能エネルギー設備の大量導入は、国内の排出削減にとどまらず、関連技術や部材のコスト低下を通じて世界全体の脱炭素を後押しする可能性があります。
G20排出削減で鍵を握る中国
「排出ギャップ報告書2025」は、現在の政策が続く場合でも、G20全体の温室効果ガス排出は2035年には2030年比でCO2換算約2ギガトン(20億トン)減少すると予測しています。そのうち約1ギガトン(10億トン)の削減をもたらす最大の要因になるのが中国だと試算されています。
つまり、G20全体の排出削減見込みの約半分を中国が占める計算です。これは、再生可能エネルギーや新エネルギー技術への投資、産業構造転換などの政策が、今後の数十年にわたって世界の排出動向に大きな影響を与えることを示しています。
もちろん、それだけでは1.5度目標を自動的に達成できるわけではありませんが、主要排出国がどのようなペースで脱炭素を進めるかが、世界全体の進路を左右することは間違いありません。
日本とアジアの読者が注目したいポイント
日本を含むアジアの国々にとって、中国のグリーン転換は隣国の環境政策であると同時に、自国の産業やエネルギー政策に直接影響を与える動きでもあります。COP30での議論や、各国の排出削減計画を追いかけるときには、次のような点を意識すると理解が深まりやすくなります。
- 気候変動対策が、単なる環境政策ではなく、産業政策・エネルギー政策・金融政策と一体で進められているか
- 再生可能エネルギーや新エネルギー車などの分野で、どの国・地域がどのような長期戦略を描いているか
- 大国のグリーン転換が、サプライチェーンや投資の流れを通じてアジア全体にどのような影響を与え得るか
COP30と「美しい中国」の取り組みは、気候危機の時代における持続可能な発展の一つのモデルを提示しています。エネルギーのつくり方と使い方をどう変えていくのか。その選択は、各国政府だけでなく、企業や都市、そして私たち一人ひとりの行動とも深く結びついています。
国際ニュースを追いながら、自分の日々の消費や投資、働き方がどのようにエネルギー転換とつながっているのかを考えてみることは、気候変動を「遠い問題」から「自分ごと」へと引き寄せる一歩になるかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








