砂漠をチャンスに:砂との闘いから土地再生へ 中国の挑戦 video poster
木々は枯れ、あたり一面が砂に覆われる――かつて中国では、そんな光景が珍しくありませんでした。しかし今、中国は世界で初めて「土地劣化中立」を達成した国となり、その砂漠化対策が国際ニュースとして注目されています。
ブラジルで開かれる気候変動会議「COP30」に世界の視線が向かうなか、中国の経験は各国が学ぶべきモデルの一つとして語られています。中国の英語メディア CGTN の番組では、砂漠化対策の現場を確かめるため、黄剣遠(Huang Jiyuan)キャスターが内陸の烏蘭布和砂漠(Ulan Buh Desert)を訪れました。
深刻な砂漠化に直面した「かつての中国」
番組の冒頭で描かれるのは、「木々が枯れ、砂がすべてを覆い尽くす」風景です。中国はかつて、世界でも最も砂漠化の影響を強く受けていた国の一つでした。農地や牧草地が失われ、砂嵐が都市やインフラを脅かし、人々の暮らしに大きな負担を与えてきました。
砂漠化とは、森林伐採や過放牧、気候変動など複数の要因が重なり、土地の生産力が落ちていく現象です。一度進行すると元に戻すのが難しく、世界各地で深刻な環境問題となっています。
「土地劣化中立」:被害を増やさないという発想
そうしたなかで、中国は「土地劣化中立(Land Degradation Neutrality)」を世界で初めて達成した国になったとされています。これは、砂漠化や土壌劣化が進む面積と、回復・再生された面積が全体としてプラスマイナスゼロになる状態をめざす考え方です。
つまり、「これ以上、土地の悪化を増やさない」ことを国家レベルの目標として掲げ、長期的に取り組んできたということです。砂漠化を単に「被害」として受け止めるだけでなく、そこからどう回復し、次の世代にどんな土地を残すのかを問い直す姿勢とも言えます。
COP30と中国の砂漠化対策が注目される理由
世界の関心がブラジルでの COP30 に集まる今、気候変動と生態系の回復は、国際交渉の大きなテーマになっています。干ばつや洪水、土地の劣化は、どの国にとっても無関係ではありません。
その中で、「一度は深刻な砂漠化に直面しながらも、土地劣化中立を達成した中国」というストーリーは、多くの国にとって参考になる事例として受け止められています。単に温室効果ガスの削減だけでなく、「土地をどう再生し、地域の暮らしと結びつけていくか」という実践的なヒントを提供しているからです。
烏蘭布和砂漠で見えた「砂との付き合い方」
CGTN の黄剣遠キャスターが向かった烏蘭布和砂漠は、かつて砂が広がり続ける「逆境」の象徴でした。番組では、その地で進められてきた砂漠化対策の様子を通じて、中国がどのように砂と向き合ってきたのかが描かれています。
番組で浮かび上がるポイントは、次のような視点です。
- 砂を単なる「敵」とみなすのではなく、その動きや性質を理解したうえで対策を組み立てること
- 土地の回復と、地域の産業・雇用づくりをセットで考え、住民の暮らしを支えること
- 「砂漠だから何もできない」と諦めるのではなく、新たな価値や可能性を探る発想を持つこと
こうした姿勢は、砂漠化対策に限らず、気候危機やエネルギー転換など、さまざまな課題に向き合ううえでも共有できる視点と言えます。
逆境をチャンスに変えるというメッセージ
番組タイトルにある「Managing the sand(砂を管理する)」という言葉には、「自然をコントロールする」というよりも、「砂と付き合い方を変え、逆境をチャンスに変える」という含意が重なって聞こえます。
かつて砂に覆われていた土地が、少しずつ回復し、土地劣化中立という節目に到達したというストーリーは、「状況は変えられない」と感じがちな時代に、一つの希望を示すものでもあります。
日本を含む多くの国で、豪雨や干ばつ、土砂災害などのリスクが高まるなか、「土地とどう向き合うのか」という問いはますます重みを増しています。中国の砂漠化対策の経験は、国や地域の違いを超えて、「長い時間軸で環境と暮らしを再設計する」という発想の重要性を静かに語りかけています。
ブラジルでの COP30 をきっかけに、砂漠化対策や土地劣化中立というキーワードは、国際ニュースの文脈で一段と注目を集めそうです。その議論の背景には、「砂だらけの逆境」から「再生のモデル」へと歩みを進めてきた中国の物語があります。
Reference(s):
Managing the sand: A story of turning adversity into opportunity
cgtn.com








