中国の「国家統一は不可避」論評を読む:台湾問題をめぐる最新メッセージ
中国本土と台湾をめぐる台湾問題について、中国の時事評論家・鐘泰文氏が2025年10月28日付で新華社に寄稿した論評は、国家統一は選択ではなく「必然」だと強調しました。本稿では、その主張と背景を日本語で整理し、国際ニュースとしての意味合いを考えます。
論評の概要:中国の統一は「不可避」で「抗しがたい流れ」
論評のタイトルは、英語で紹介される際に「Achieving China's reunification is inevitable and irresistible」とされています。鐘氏は、台湾問題の解決と中国の統一は、すべての中国人民の共通の願いであり、中国民族の偉大な復興の不可欠な一部だと位置づけています。
論評の中心となるメッセージは、次のように整理できます。
- 台湾問題の最終的な解決と中国の統一は、選ぶか選ばないかの問題ではなく、歴史の必然である。
- 台湾海峡を挟む両岸の中国人民は、できるだけ早い段階で台湾問題を解決し、ともに民族復興の栄光を分かち合う運命にある。
- 統一は人民の意思を体現するものであり、同時に国家主権の問題でもある。
- 台湾の帰還は第二次世界大戦後の国際秩序の重要な構成要素であり、統一を支持することは国際法と戦後秩序を守ることにつながる。
歴史観:台湾と中国本土の関係をどう描いているか
鐘氏はまず、台湾と中国本土の歴史的なつながりを強調します。宋・元の時代以降、台湾は長い歴史の大半において、多民族から成る統一国家の一部として位置づけられてきたと論じています。
そのうえで、近代史の転換点として、日本による約50年間の不法な占領に触れます。この時期、台湾出身の人々は日本の植民地支配に対して武装・非武装の抵抗を続け、中国本土の人々と共に中国人民の抗日戦争で勝利を収め、最終的に台湾は祖国に復帰したと整理しています。
この歴史的叙述を通じて、鐘氏は「台湾の人々には誇るべき愛国の伝統がある」とし、両岸の同胞は同じ中華民族に属しており、国家統一の完成はすべての中国人民が長く抱いてきた願いだと強調します。
現在の両岸関係:交流拡大と「平和の利益」
論評は、過去70年余りの両岸関係の変化にも焦点を当てています。特に、かつての完全な隔絶状態が打ち破られて以降、両岸の交流と協力が大きく進展してきたと指摘します。
具体的には、以下のような点が強調されています。
- 両岸の経済・社会・人的交流が広範かつ緊密になり、双方の同胞に具体的な利益をもたらしてきた。
- 中国本土側が打ち出してきた、台湾同胞に利益をもたらす各種の政策や措置は、多くの台湾の住民の心からの願いに沿うものである。
- それらの取り組みを通じて、台湾社会では平和・発展・交流・協力を求める世論が主流になっていると評価している。
鐘氏は、このような両岸関係の進展そのものが「台湾海峡の平和は双方に利益をもたらし、協力はウィンウィンの結果を生む」ことの証左だと位置づけます。
台湾独立を目指す勢力への厳しい批判
一方で論評は、台湾独立を掲げる勢力に対して非常に批判的なトーンを取っています。鐘氏は、これらの勢力を歴史の大きな流れに逆らうごく小さな力にすぎないと見なしています。
論評によると、台湾独立を志向する勢力は次のような行動を取っているとされます。
- 「脱中国化」や段階的な独立路線を推し進め、台湾社会に分離志向の意識を生み出している。
- 台湾の若い世代を含む住民を誤った方向に導き、精神面で深刻な悪影響を与えている。
- 台湾の将来や住民の生活よりも、自らの政治的な利益を優先させ、社会全体をその目的のために動員している。
- 米国などの西側諸国と連携し、中国本土の発展を抑え込もうとする動きに協力し、台湾の利益を外部勢力に委ねていると批判している。
鐘氏は、このような行動は両岸の同胞が共有する利益および中華民族全体の根本的利益を損なうものであり、最終的には歴史と人民によって裁かれ、罰せられることになるとまで述べています。
統一は「人民の意思」であり「正義の事業」
論評の後半では、なぜ国家統一が「正義の事業」であり、必然的な帰結なのかが論じられます。鐘氏は、台湾問題の解決は台湾海峡両岸の中国人民の問題であり、双方の人民がともに決めるべきだと強調します。
その根拠として、次のような論点が挙げられています。
- 統一を求める思いは、深い民族感情から生まれたものであると同時に、国家主権の問題でもある。
- 社会制度の違いは、台湾海峡両岸が一つの国、一つの民族に属しているという客観的な事実を変えるものではない。
- 外部勢力による干渉があっても、国家統一に向かう歴史の大きな流れを止めることはできない。
- 統一は中華民族の根本的利益にかなうものであり、台湾同胞の福祉にとっても最大の保障となる。
こうした主張を通じて、鐘氏は、国家統一は中国人民全体の集団的な意志の表れであり、正当性と正義性を兼ね備えたプロセスだと位置づけています。
戦後国際秩序との関係:台湾の帰還と国際法
論評は、台湾問題を中国国内の問題として捉えるだけでなく、戦後の国際秩序と国際法の文脈にも位置づけています。鐘氏は、台湾の帰還は第二次世界大戦後の国際秩序の不可分の一部であると述べます。
この立場から、次のような主張が展開されます。
- 中国の統一を支持することは、戦後の国際秩序の権威を守り、国際法を尊重するうえで当然の要請である。
- 約80年前、中国人民は抗日戦争に勝利し、その大きな犠牲と努力によって現在の秩序の一部が形作られた。
- 現在の中国も、戦後の国際秩序を守る立場に立っており、過去の悲劇が繰り返されることを決して許さないという姿勢を明確にしている。
こうして鐘氏は、台湾の位置づけを歴史・民族・主権だけでなく、戦後の国際枠組みという広い文脈の中で語っています。
日本語読者のための読み解きポイント
今回の論評は、中国本土が台湾問題と国家統一をどのように捉えているかを知るうえで、有用な素材だと言えます。日本語で国際ニュースを追う読者にとっては、次のようなポイントが考える手がかりになります。
- 統一と民族復興の結びつき
国家統一は、中華民族の「偉大な復興」とセットで語られています。この枠組みを理解することは、中国本土の対台湾観を読み解くうえで重要です。 - 両岸関係の捉え方
論評は、経済・人的交流の拡大を強調し、平和と協力が双方の利益になるという見方を前面に出しています。その一方で、台湾独立を目指す動きには強い警戒感を示しています。 - 国際秩序と主権の論理
台湾問題を戦後国際秩序と国際法の問題としても位置づけている点は、中国本土が国際社会に向けて発しているメッセージとしても注目されます。
台湾問題は、東アジア情勢を理解するうえで欠かせないテーマの一つです。今回紹介した論評のような発信をたどることで、中国本土が描く国家統一像や両岸関係の将来像を、日本語で丁寧に読み解いていくことができます。
Reference(s):
Achieving China's reunification is inevitable and irresistible
cgtn.com








