COP30が警告する2.6度の地球温暖化と迫る食料危機 video poster
ブラジル北部ベレンで開かれている国連気候変動会議COP30で、世界はこのままでは産業革命前より2.6度高い地球温暖化の進行軌道にあると指摘されました。これはパリ協定が掲げる1.5度目標を大きく上回る水準であり、極端な気象災害と食料危機のリスクが一気に高まることを意味します。世界食糧計画(WFP)の専門家たちは、この「気候×食料」の連鎖をどう見ているのでしょうか。そして、中国を含む各国は、どのように持続可能な農業と国際協力を進めようとしているのでしょうか。
COP30が示した「2.6度」の意味
COP30の議論の中で示された「2.6度」という数字は、単なる計算結果ではありません。1.5度以内に抑えられれば被害を減らせるとされてきたなかで、その安全圏を大きく超える方向に世界全体の排出と気温が向かっている現実を示しています。
気温上昇がわずかに見えても、その影響は累積し、極端な現象として表れます。
- かつては「数十年に一度」だった猛暑や豪雨が、ほぼ毎年のように発生する
- 干ばつと洪水が短期間に繰り返され、農家が立ち直る余裕を失う
- 病害虫の分布が変わり、これまで安定していた地域の収量も落ちる
こうした気候変動の影響が重なると、地球温暖化はやがて食料危機として、私たちの食卓に跳ね返ってきます。
気候危機が食料危機に変わるメカニズム
番組「The Hub」では、WFPのリチャード・チュラートン氏(気候・レジリエンスサービス部門ディレクター)とラファエル・レオン氏(パナマ担当地域プログラム政策官)が、気候変動が極端な気象、食料安全保障、そして貧困に与える影響を議論しました。両氏の視点を手がかりに、そのメカニズムを整理してみます。
- 生産量への直接的な打撃
干ばつや豪雨、ハリケーンなどの極端な気象現象が増えると、収穫そのものが大きく減ります。主食となる穀物だけでなく、果物や家畜にも影響が及びます。 - 価格高騰を通じた間接的な打撃
一度の不作が国際市場の価格を押し上げ、その余波が遠く離れた地域の食料価格にも波及します。輸入に頼る国ほど影響を受けやすくなります。 - 所得と貧困への二重の打撃
農業に依存する地域では、収穫が減ると同時に収入も減ります。食料価格は上がる一方で家計は苦しくなり、貧困が深刻化します。
このように、気候ショックは単なる「天候の問題」ではなく、食料、所得、健康、教育など、暮らしのあらゆる側面に連鎖的な影響を与えます。WFPが警戒しているのは、この悪循環が世界各地で同時多発的に進行している点です。
もっとも脆弱な人々に集中する被害
気候変動とそれに伴う食料不安の影響は、世界の中でもっとも脆弱な人々に集中していると指摘されています。特に厳しい状況に置かれやすいのは、次のような人々です。
- 雨水に頼る小規模農家や遊牧民など、気候に強く依存して生計を立てている人々
- 紛争や政治的不安定さに直面し、もともと社会インフラが脆弱な地域の住民
- 海面上昇や大型台風のリスクが高い沿岸部や島しょ地域に暮らす人々
こうした地域では、ひとたび収穫が大きく落ち込むと、貯蓄も保険も十分でないため、食事の回数を減らしたり、子どもを学校から退学させて働かせたりという、将来の可能性を削る選択を迫られます。WFPの専門家たちが警告するのは、これが局地的な問題ではなく、地球規模で進む傾向になりつつあるという点です。
WFP専門家が見る「避け得る危機」の条件
では、全面的な気候・食料危機を避けるには、何が必要なのでしょうか。WFPのチュラートン氏とレオン氏は、短期と長期の取り組みを組み合わせる重要性を強調しています。
- 1. 緊急支援とレジリエンスの両立
干ばつや洪水に直面した地域には、食料支援が欠かせません。同時に、次の災害に備えた農業技術やインフラ整備を進めることで、同じ被害を繰り返さない仕組みづくりが求められます。 - 2. 気候情報と早期警報の活用
気象データや予測モデルを活用して、異常気象の兆しを早くつかみ、種まきの時期の調整や作物の変更など、現場レベルの対応につなげることが重要だとされています。 - 3. 貧困対策と社会的セーフティネット
現金給付や学校給食などの社会保障制度を通じて、最も弱い立場の人々がショックから立ち直れるよう支えることも、長期的な飢餓削減には欠かせません。
こうした取り組みは、気候政策と開発政策、人道支援を切り離さずに進める必要があるという点で、従来の枠組みを超えた発想が求められています。
中国の持続可能な農業と途上国への経験共有
番組の議論では、中国の取り組みも一つの事例として取り上げられました。中国は、農業分野で持続可能性と食料安全保障の両立を図ろうとしながら、自国の経験を開発途上国と共有する動きを強めていると紹介されています。
具体的には、次のような方向性が挙げられます。
- 土壌や水資源の保全を重視し、環境への負荷を抑えつつ収量を維持・向上させる農業の実践
- 気候に強い品種や栽培方法、農業技術に関するノウハウを、研修や技術協力を通じて途上国と共有する試み
- 災害リスクを踏まえた貯蔵や物流の改善など、食料供給の安定性を高める取り組み
こうした取り組みは、南南協力と呼ばれる、開発途上国同士の連携の一環として位置づけられます。WFPの視点からも、現場に根ざした技術と知見の共有は、気候変動時代の食料安全保障を強化する上で重要な柱の一つだといえます。
COP30後の行動に何が問われるのか
COP30で示された「このままでは2.6度」という見通しは、避けられない未来を告げるものではなく、いま進路を変えなければならないという警鐘です。気候危機と食料危機が結びつく時代において、問われているのは次のような行動です。
- 各国政府: 排出削減の実行力を高めると同時に、農業や水資源、インフラへの投資を通じて、気候に強い食料システムを整えること。
- 企業: サプライチェーン全体での脱炭素や、気候リスクを考慮した調達方針を通じて、持続可能な食料供給を支えること。
- 私たち一人ひとり: 食品ロスを減らし、環境負荷の小さい食生活を意識すること。そして、信頼できる国際ニュースや気候関連情報に触れながら、社会全体の議論に参加していくこと。
地球温暖化と食料危機の関係は、遠い世界の話ではなく、2040年代、2050年代の私たち自身や次の世代の暮らし方を左右するテーマです。COP30で交わされている議論や、WFP、中国を含む各国の取り組みは、その未来を少しでも安全な方向へと導くための試行錯誤ともいえます。
2.6度という数字を前に、私たちは何を選び、どのような世界を次の世代に手渡すのか。ニュースを読み解き、日常の行動を見直すところから、静かな変化が始まります。
Reference(s):
cgtn.com








