世界子どもの日「My Day, My Rights」置き去りの子どもたちの声
11月20日の世界子どもの日は、子どもの権利条約の採択を記念し、「子どもの日」であると同時に、私たち大人が約束の未達と向き合う日でもあります。2025年のテーマ「My Day, My Rights(私の日、私の権利)」は、「子どもについて語る」から「子どもの声を聴く」へと視点を切り替えることを求めています。
本稿では、この国際ニュースの背景にある教育と子どもの権利の課題を、日本語で分かりやすく整理します。
世界子どもの日が問いかける「未完の約束」
世界子どもの日は、子どもの権利条約の採択を記念する国際的な記念日です。本来は、すべての子どもが尊厳をもって暮らし、学び、意見を表明できる社会を祝う日であるはずですが、多くの権利はいまだ「紙の上の約束」にとどまっています。
2025年のテーマ「My Day, My Rights」は、そのねじれを静かに浮かび上がらせます。世界中で子どもの権利についての演説や声明が繰り返される一方で、当事者である子どもたちの声は、十分に聴かれていません。「私の一日」「私の権利」を子ども自身のことばで語ってもらうことが、出発点になるというメッセージです。
学校に通えない2.72億人の子どもたち
世界の現状を数字で見ると、そのギャップはより鮮明になります。2023年時点で、世界では2億7200万人の子どもと若者が学校に通っていません。これは2015年と比べて3パーセント増えていて、「誰一人取り残さない」という目標とは逆行する動きです。
こうした子どもたちの多くは、低所得国や後発開発途上国に暮らしています。そもそも学校が十分に整っていないことが少なくありません。
- 3校に1校はトイレなどの衛生設備がありません。
- 半分以上の学校に電気がありません。
- 3校に2校は、コンピューターなどのデジタル機器がありません。
それぞれの数字の背後には、一人ひとりの子どもの現実があります。能力がないからではなく、機会が与えられないために、読み書きや計算を学ぶ機会、将来を描くチャンスが静かに失われていきます。
教育はあらゆる権利をひらく「鍵」
国連の持続可能な開発目標(SDGs)の4番目は、「2030年までにすべての人に質の高い教育を保障する」です。2030年まであと数年となった今、この目標の重要性は一層高まっています。
なぜ教育がそれほど重視されるのでしょうか。教育は単に知識を教えるだけでなく、次のような広い効果をもたらすからです。
- 貧困や格差の縮小につながる
- 健康や生活水準を改善する
- 紛争や災害からの復興を支える
- 異なる背景を持つ人びとへの寛容や、社会の回復力を育てる
- 新しいアイデアや技術を生み出す力を高める
だからこそ、本来教育は「余裕があれば投資する分野」ではなく、「国づくりと社会づくりの中核にある投資」として位置付けられるべきだとされています。
ネパール農村部に見る、地域で支える学び
抽象的な議論だけでは、問題の手触りはなかなか伝わりません。ネパールの農村部で進む取り組みは、数字の背後にある変化を具体的に見せてくれます。
かつてこの地域では、多くの子どもたちが畑仕事を手伝ったり、きょうだいの世話をしたりするために学校をあきらめていました。最近では、教育支援の取り組みと地域の努力が重なり、そうした子どもたちが少しずつ教室に戻り始めています。
同時に、これまで学校に通ったことのない母親たちが、キノコ栽培や手工芸品づくりといった収入につながる技能を学んでいます。小さなビジネスが家計を支え、子どもを働かせる代わりに学校へ通わせる選択を可能にしています。
一人の大人の行動が、子どもの未来を変える
変化は、必ずしも大規模なプロジェクトから始まるとは限りません。ある村では、バナナ農家の男性が週末の時間を使って、学校に通っていない子どもを一人ずつ訪ね歩き、保護者と対話しながら就学を後押ししています。
別の地域では、校長先生が自分の貯金を取り崩して、傷んでいた教室を修復しました。決して大きくはないこうした行動が、周囲の大人や子どもたちに波紋のように広がり、「学校に行くことは大切だ」という共通の認識を育てていきます。
地域の粘り強い取り組みと教育支援団体のサポートが組み合わさることで、複数の障害を一つひとつ取り除き、学校から遠ざかっていた子どもたちを学びの場に戻していくことができるのです。
「子どもの声を聴く」ことから始める私たちの一歩
世界子どもの日のテーマである「My Day, My Rights」は、国際社会だけでなく、私たち一人ひとりへの問いかけでもあります。遠い国の課題に見えるかもしれませんが、子どもの権利をどう保障するかというテーマは、日本社会にとっても決して他人事ではありません。
ネパールの例が示すように、変化は現場をよく知る人びとの小さな行動から始まります。家庭や学校、地域、オンラインの場で、次のようなことを意識してみることができます。
- 子どもの日常や感情について、先回りして決めつけずに耳を傾ける
- 学校や地域の学びの場づくりに関心を持ち、対話に参加する
- 教育の重要性をめぐる国際ニュースに触れ、自分の言葉で周囲と共有する
子どもの権利条約が採択されてから時間がたった今も、多くの権利は「未完のまま」です。それでも、世界各地の教室や村で起きている静かな変化は、約束を現実に変えていくことができると示しています。
世界子どもの日から少し時間がたった12月の今こそ、身近な子どもたちに「あなたにとっての一日は、どんな一日であってほしい?」と問いかけてみるタイミングかもしれません。その答えに耳を澄ますことが、「My Day, My Rights」というメッセージに応える最初の一歩になります。
Reference(s):
My day, my rights: Listening to children the world has left behind
cgtn.com








