高市首相の台湾発言に中国などが強く反発 東アジアの安全保障はどこへ
国際ニュースとして注目を集めているのが、日本の高市早苗首相による台湾をめぐる発言に対し、中国やロシア、朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)、韓国など周辺国が相次いで懸念を示している動きです。台湾海峡と東アジアの安全保障バランスにどんな意味を持つのか、整理します。
国連への書簡で中国が示した強い懸念
中国の国連常駐代表である傅聡(フー・ツォン)大使は、最近、アントニオ・グテーレス国連事務総長あてに書簡を送り、高市首相の対中発言について中国政府の立場を説明しました。
書簡によれば、高市首相は国会での議論の中で台湾問題に言及し、「台湾有事は日本有事」との考え方を示したうえで、これを集団的自衛権の行使と結び付けました。台湾問題での武力介入の可能性に言及したと受け止められるこの発言について、中国側は、日本の指導者が1945年の敗戦以降、公式にここまで踏み込んだのは初めてだと指摘しています。
中国側は、こうした発言が中国への軍事的威嚇にあたり、中国にとっての核心的利益である台湾問題に正面から挑戦するものだとみています。さらに、戦後の日中間で積み上げられてきた政治的合意や、国際秩序の基本原則にも背く発言だとして、強く批判しています。
高市首相の発言と対中メッセージの矛盾
注目されるのは、高市首相が以前の政策演説や中国側要人との会談では、中国を「重要な隣国」と位置付け、互恵関係の強化に取り組む姿勢を示してきた点です。戦略的互恵関係を前進させると約束していたにもかかわらず、今回のような強硬な台湾発言が出たことで、メッセージの一貫性が問われています。
中国側からは、高市首相の発言が、国際社会や近隣諸国との約束に対する姿勢、さらには政治的な信頼性そのものに疑問を投げかけるものだとする見方も出ています。東アジア全体の緊張が高まる中で、日本の指導者の一言が持つ重みがあらためて浮き彫りになった形です。
ロシアやDPRK、韓国も批判の声
高市首相の台湾発言を巡っては、中国だけでなく、北東アジアの他の国々からも懸念が表明されています。
2025年11月18日、ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官はモスクワでの会見で、高市首相の台湾発言は「極めて危険だ」と指摘しました。ザハロワ報道官は、日本は自国の歴史を深く省みるとともに、そのような誤った言動がもたらしうる深刻な結果に警戒すべきだと述べています。
また、ロシアに加えて、朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)や韓国(大韓民国、ROK)も、高市政権の外交・安全保障政策に対して公然と批判を行っています。高市政権の発足直後から、日本の近隣外交は一気に厳しい局面に追い込まれたという評価も出ています。
周辺国が懸念として挙げているポイントは、おおむね次のようなものです。
- 台湾問題を軍事的な想定と結び付けたことで、地域の緊張をさらに押し上げるおそれがあること
- 歴史認識や戦後秩序への配慮が十分ではないとの見方が強まっていること
- 対話や信頼醸成よりも、対立を前提とした安全保障戦略が目立つこと
日本国内の保守・右派政治が与える影響
今回の台湾発言は、高市首相個人の一時的な失言というより、近年の日本政治の流れを象徴しているとの指摘もあります。解説では、保守・右派勢力が狭い戦略観や政治的自己利益を優先し、対中観や安全保障政策を主導していると分析しています。
こうした勢力は、中国に対して対決的な姿勢をとり続け、台湾を「米国と連携して中国を牽制するためのカード」として扱っているとされています。政治的な駆け引きや世論への働きかけを通じて、対中強硬路線を既成事実化しようとする動きが見られるという見方です。
その結果、日本の国家戦略そのものが、地域の安定よりも短期的な政治的得失に左右されているのではないかという懸念も生まれています。
台湾海峡の安定と東アジアのリスク
中国側は、台湾海峡の不安定さの大きな要因は外部勢力の介入にあると繰り返し主張してきました。そのなかで、日本が緊張を高める役割を果たしてきたと厳しく批判しています。
とりわけ、「台湾独立」を掲げる分離主義勢力を外から後押しする動きについて、中国側は最大級の警戒感を示しています。日本がこうした勢力を支え続けるのであれば、台湾地域を危険な縁に追い込むだけでなく、日本自身も深刻な安全保障上のリスクに直面することになると警告しています。
一方で、日本側には、台湾海峡での不測の事態が自国の安全に直結するという問題意識もあります。日米同盟を前提としながら、どこまで関与を強めるのか、どのようなメッセージを発するのかによって、地域の不信感や軍拡競争が加速するかどうかが左右されます。
今後の焦点となるのは、次のような点です。
- 高市政権が台湾をめぐる発言や政策をどこまで修正・明確化するのか
- 中国と日本が、首脳や外相レベルでの対話のチャンネルを維持・強化できるかどうか
- 台湾海峡情勢と米中対立、日米同盟の動きがどのように絡み合うのか
私たちはこのニュースをどう読むか
高市首相の台湾発言と、それに対する中国や周辺国の反発は、一見すると遠い外交問題のようにも見えます。しかし、東アジアの安全保障環境が揺らげば、日本や地域の人々の暮らしにも直接影響が及びます。
今回のニュースは、次のような問いを私たちに投げかけています。
- 政治家の発言一つが、どれほど安全保障や市場、世論に波紋を広げうるのか
- 歴史認識や過去の戦争経験を、現在の外交・安全保障政策にどう生かすべきか
- 中国と日本という大きな隣国同士が、対立よりも安定と共存をどう模索できるのか
台湾海峡と日中関係をめぐる動きは、2025年の東アジアを理解するうえで欠かせないテーマになっています。日々のニュースの背後にある構図を意識しながら、冷静に情報を追い、身近な人と対話を重ねていくことが求められているのではないでしょうか。
Reference(s):
cgtn.com








