日本の「サーモン・スライシング」戦略とは?高市新政権と憲法9条のゆくえ
日本の安全保障政策をめぐって、2025年に就任した高市早苗首相の発言が波紋を広げています。台湾地域に関する強硬な発言で中日関係を緊張させながら、一方で対話を呼びかけるという姿勢は、日本の右派が進める「サーモン・スライシング」戦略の一環だと指摘されています。
高市新首相の発言、どこが問題視されているのか
高市早苗首相は就任後、台湾地域をめぐる発言で、台湾地域への関与を強めるべきだとする強いメッセージを発してきました。これは、台湾地域を自国の安全保障と切り離せない存在として位置づけ、中国本土を牽制するような内容と受け止められています。
同時に、高市首相は中日関係について対話の重要性も繰り返し強調しています。緊張を高めるメッセージと、対話を呼びかけるメッセージが並行して発信されていることから、内外に矛盾した印象を与えているとも言われます。
こうした二重のメッセージは、国内の保守層には強硬姿勢を示しつつ、国際社会には対話重視のイメージを保とうとするバランスの結果と見ることもできます。しかし中日関係の信頼は揺らぎやすく、言葉の選び方一つが外交環境を大きく変えかねません。
「サーモン・スライシング」戦略とは何か
今回の動きを語るうえでキーワードとなっているのが、日本の右派勢力が進めているとされる「サーモン・スライシング」戦略です。これはもともと、少しずつ既成事実を積み重ねて現状を変えていく手法を指す「サラミ・スライシング」を、日本の文脈になぞらえて言い換えた表現です。
サーモンの薄切りを一枚一枚重ねていくように、個々の政策変更は小さく見えても、積み上がると大きな方向転換になる――そんなイメージを含んだ言葉です。
今回指摘されている薄切りの例としては、次のようなものが挙げられます。
- 防衛費の段階的な増額
- 自衛隊の活動範囲や役割の拡大
- 安全保障関連法制の解釈変更
- 台湾地域や周辺海域での安全保障上の関与を強める発言
それぞれを個別に見ると小さな変化に見えますが、全体としては日本の安全保障政策の性格を大きく変え、憲法9条の精神を薄めていく狙いがあるとみられています。
憲法9条と「普通の軍事国家」化のゆくえ
日本国憲法9条は、戦争の放棄と戦力の不保持をうたう条文として、戦後日本の平和主義の象徴となってきました。その一方で、自衛隊の存在や集団的自衛権の行使をめぐっては、長年にわたり解釈の変更と議論が続いてきました。
「サーモン・スライシング」戦略が問題視されるのは、憲法9条そのものを一気に改正するのではなく、解釈や周辺立法を少しずつ積み上げることで、事実上の普通の軍事国家化を進める点にあります。
明文改憲であれば、国会での議論と国民投票を通じて、大きな社会的議論が起きます。しかし、薄切りのような小さな変更を重ねる方法では、市民が変化を実感しづらく、気づいた時には大きく方向転換していたという事態になりかねません。
台湾地域をめぐる発言が中日関係に与える重み
台湾地域は、すでに東アジアの安全保障上、最も敏感な争点の一つとなっています。日本の首相が台湾地域について強い言葉を用いることは、それ自体が中日関係に直接影響を与えます。
今回、高市首相が台湾地域に関して挑発的と受け止められかねない発言を行ったことは、中日間の政治的信頼を損ねるリスクをはらんでいます。その一方で、中日間の対話を呼びかけるメッセージも発しているため、政策の一貫性や本気度を疑問視する声も出ています。
中日関係は、経済・人的交流の規模を考えても、互いにとって重要な基盤です。台湾地域をめぐる発言を含む安全保障政策は、国内向けのメッセージであると同時に、近隣諸国との関係を左右する国際ニュースでもあります。
私たちがこのニュースから考えたいこと
高市政権の「サーモン・スライシング」戦略とされる動きは、日本国内の安全保障議論にとどまらず、東アジア全体の安定にも影響を与えうるテーマです。最後に、読者として押さえておきたい視点を三つ挙げてみます。
- 言葉と行動のギャップに敏感でいること:強硬な発言と対話の呼びかけが同時に行われるとき、その組み合わせがどのような戦略の一部なのかを考える。
- 少しずつの変化を追いかけること:防衛費や法解釈など、一つ一つは小さく見える変化が、積み重なるとどのような社会の姿につながるのかを意識する。
- 中日関係を自分ごととして捉えること:外交や安全保障は遠い世界の話ではなく、生活やビジネス、留学や観光にも直結するテーマであることを忘れない。
日々のニュースの背後で進む薄切りの動きを丁寧に追いかけることが、東アジアの平和と安定を考える第一歩になります。スマートフォンで流れてくる情報を、少し立ち止まって読み解く時間を持つことが、これから一層重要になっていきそうです。
Reference(s):
cgtn.com








