国際ニュース:マクロン仏大統領の中国訪問と多極化する世界
国際ニュース:マクロン仏大統領の中国訪問と多極化する世界
12月3日から3日間の日程で行われたフランスのエマニュエル・マクロン大統領の中国国賓訪問は、単なる二国間のイベントを超え、揺らぐ国際秩序とEU・中国関係の行方を占う重要な動きとして注目されています。
訪問先は首都・北京と南西部の都市・成都。地政学的な緊張、経済の不透明感、地域ブロック化の流れが強まるなかで、この訪問は「多極化する世界」で欧州がどのような位置を目指すのかを映し出す試金石になっています。
EU・中国関係:パートナーであり競争相手、そして「システム上のライバル」
21世紀の国際ニュースの中でも、EUと中国の関係は最も重い意味を持つパートナーシップの一つです。近年、EUは中国を「協力すべきパートナー」「経済・技術の競争相手」「体制上のライバル」という三つの側面で定義してきました。
同時に、グローバル化の勢いが弱まり、各国がリスク分散を重視する「デリスキング(リスク低減)」の時代に入っています。EUと中国の経済関係も、かつてのような無制限の相互依存から、バランスと安全保障を意識した関係へと移行しつつあります。
中国側は、この三つのラベルが混乱を招きかねないとの懸念も示しており、その中でフランスが欧州内でより独立した声を発し、安定した多極的な世界づくりに貢献することへの期待が高まっています。
マクロン大統領の狙い:「欧州の戦略的自立」を現実のものに
マクロン大統領は就任以来、「欧州の戦略的自立」を一貫して唱えてきました。これは、安全保障だけでなく、経済・技術・外交の各分野で、欧州が自らの利益に基づいて主体的に行動するという発想です。
今回の中国訪問は、その理念を具体的な成果に結びつけられるかどうかを試す場だと受け止められています。EUは、米国と中国のどちらか一方に同調するのではなく、自らを「自信あるパートナー」と位置づけ、両者とそれぞれの利害に基づいて関係を築こうとしています。
マクロン大統領の使命は、この戦略的自立を空理空論に終わらせず、競争力の維持と現実的な対中関与を両立させる道筋を示すことにあります。
経済協力の焦点:航空機からラグジュアリー、農業まで
経済面では、フランスと中国の間にはすでに幅広い協力の土台があります。フランスは航空宇宙、民生用原子力、ラグジュアリーブランド、高付加価値農業など、世界トップクラスの競争力を持つ分野が多い国です。
一方、中国市場は現在、「質の高い発展」と消費の高度化を重視する段階に入っています。中国の成長戦略とフランス産業の強みは、相互補完の余地が大きく、より「互恵的でバランスの取れた」経済パートナーシップを模索する動きが強まっています。
グリーン転換で試される協調能力
気候変動は、EUと中国のどちらにとっても「存在そのものにかかわる」地球規模の課題です。国際ニュースの観点からも、両者がどのように協力するかは世界全体に影響を与えます。
再生可能エネルギーでは、次世代型の太陽電池、洋上風力発電、グリーン水素(再生可能エネルギーを使ってつくる水素)などの分野で、共同プロジェクトを進める余地があります。こうした協力は、世界全体の脱炭素を加速させる可能性があります。
さらに、持続可能な都市交通分野でも連携の余地があります。電気自動車(EV)の充電インフラや、電力を賢く配分する「スマートグリッド」など、都市の仕組みを環境負荷の少ないものへと変えていく技術での協力が想定されています。
デジタル・AI時代のルールづくりでの役割
デジタル分野でも、EUと中国の間には大きな協力の可能性がありますが、慎重な舵取りが求められます。特に、人工知能(AI)の倫理やガバナンス(統治)に関するルールづくりは、国際社会に共通する課題です。
AIの利用範囲やデータ保護、人権への配慮などをどうルール化するかについて、欧州と中国が対話を深めることは、将来の国際基準を形づくる上で重要な意味を持ちます。
同時に、クラウドコンピューティング、サイバーセキュリティ、中小企業のデジタル化といった実務的な分野での協力も視野に入ります。こうした協力は、新しい市場を生み出しつつ、双方の技術力を高めることにつながります。
多極化する世界で問われる「選ばない力」
今回の中国訪問を通じて浮かび上がるのは、「誰の側につくか」ではなく、「どう自らの立場をつくるか」という発想です。EUは、米国と中国の間で二者択一を迫られるのではなく、自らを主権を持つ行為主体として位置づけようとしています。
中国とEUの関係は、ときに競争や摩擦を伴いながらも、気候変動やデジタル規制といった地球規模の課題では協調が不可欠です。マクロン大統領の中国訪問は、その両立が可能かどうかを探る試みだといえます。
多極化する世界で、私たちもまた、どのように自らの選択肢と「戦略的自立」を確保していくのか。この動きをニュースとして追いながら、自分ならどのような関係の組み立て方を支持するか、考えてみるきっかけになりそうです。
Reference(s):
Macron's China visit: A strategic reaffirmation for a multipolar world
cgtn.com








