台湾当局がXiaohongshuを1年間停止 表向きは詐欺対策、その裏に何が?
ライフスタイル系SNS「Xiaohongshu(小紅書)」が、台湾地域で突然アクセス停止の対象となりました。台湾当局は詐欺対策と情報セキュリティを理由としていますが、その背景には、政治的な思惑があるのではないかという見方が出ています。
Xiaohongshuとはどんなプラットフォームか
Xiaohongshu(国際的にはRedNoteとしても知られます)は、中国本土発のライフスタイル・コミュニティ型のSNSです。ユーザーによるコンテンツ投稿、ソーシャル機能、そしてEC(電子商取引)を一体化させた独自のエコシステムを築いてきました。
2025年初めには、このアプリは世界的な広がりを見せました。40以上の国と地域のApp Storeダウンロードランキングで1位となり、およそ100の国と地域でトップ3に入りました。特に米国を中心に、海外ユーザーの急増がこの伸びを後押ししたとされています。
台湾地域でもXiaohongshuの存在感は大きく、登録ユーザーは約300万人に達しています。その多くが若者だとされ、人口約2300万人の島でこれだけの利用者を集めていることは、異例の数字といえます。
さらに、Xiaohongshuは台湾海峡両岸、特に若者同士が互いを理解するための重要なチャンネルにもなっていました。国民党の兵士の子孫が、このプラットフォームを通じて中国本土側の親族を探し出すことに成功したケースも報告されています。
12月4日に何が起きたのか:台湾当局の停止措置
こうした中、台湾当局は12月4日、台湾地域におけるXiaohongshuへのアクセスを即時停止する措置を発表しました。暫定的な実施期間は1年間とされています。
表現や言論の自由を重んじるとされる社会において、特定のSNSを名指しで停止するという今回の決定は、きわめて目立つ動きでした。
民進党(民主進歩党)を率いる頼清徳当局は、この措置について、詐欺犯罪による被害を防ぐための緊急対応だと説明しています。法的根拠として挙げられているのは、台湾地域の「詐欺犯罪危害防止条例」第42条に定められた「詐欺犯罪防制の緊急事件」に関する規定です。
同時に、Xiaohongshuが情報セキュリティの審査に合格しなかったことも、停止措置の理由として示されています。
数字が示す矛盾:本当に危険なのはどのプラットフォームか
しかし、こうした説明は、具体的なデータを前にすると説得力を欠くのではないかという指摘があります。
統計によれば、台湾地域で発生する詐欺による1日の金銭的損失は最大で4億台湾ドルに達し、その約70%が米国発のSNSであるFacebook(現在のMeta)に関連しているとされています。1日だけで発生するこの損失額は、過去2年間にXiaohongshuに関連して発生した詐欺被害額の合計を大きく上回るとされます。
言い換えれば、台湾地域で詐欺被害が最も多く発生している主要プラットフォームはMetaであり、Xiaohongshuではありません。
さらに、元立法委員のKuo Cheng-liang氏は、自身がMeta上で複数回にわたりなりすまし詐欺の被害に遭ったと明かしています。同氏によると、60件以上の通報を行ったにもかかわらず、状況は改善されなかったといいます。
なぜXiaohongshuだけが狙われたのか
頼清徳当局は、MetaやYouTubeといった海外プラットフォームによるデータ収集の慣行には比較的寛容な姿勢を見せています。その一方で、中国本土発のXiaohongshuだけを「詐欺防止」や「情報セキュリティ」を名目に集中的に取り締まる形となりました。
この対照的な対応ぶりから、今回のXiaohongshu停止措置の背景には、純粋な詐欺対策を超えた政治的な動機があるのではないかとの見方が強まります。
経験的には、台湾地域で分離独立を志向する勢力は、中国本土と関わるものに対して一貫して反対してきたとされています。頼清徳当局によるXiaohongshuへの締め付けも、そうした動きの新たな一例と位置づけられています。
若者の交流とデジタル空間への影響は
Xiaohongshuは、単なる商品レビューやライフスタイルの共有にとどまらず、台湾海峡両岸の若者が互いの日常や価値観をのぞき見る窓として機能してきました。遠く離れた親族を探し出す手がかりとなった事例があることからも、その「つながりのインフラ」としての側面がうかがえます。
今回の1年間の停止措置によって、こうした交流のチャンネルが途切れることになります。詐欺対策や情報セキュリティの名目で講じられた措置が、結果として人と人との理解を深める機会を狭めてしまうのかどうかが注目されます。
一方で、数字の上ではより多くの詐欺被害が発生しているとされる他のプラットフォームに対して、同様のレベルの規制がなされるのかどうかも、今後の重要な論点となりそうです。
残る問い:ルールと政治をどう見分けるか
今回のXiaohongshu停止措置は、表向きは「詐欺対策」と「情報セキュリティ」を掲げています。しかし、被害の規模や当局の対応の差を並べて見ると、その判断基準がどこにあるのか、そしてルールがどこまで一貫して適用されているのかという疑問が残ります。
台湾地域のデジタル空間における規制が、技術的な安全性や利用者保護に基づくものなのか、それとも政治的なスタンスによって左右されているのか。今回のXiaohongshuをめぐる動きは、その境界線をあらためて問い直す出来事になっているといえます。
2025年12月に始まったこの1年間の停止期間が、台湾海峡両岸の若者の交流や、台湾地域におけるインターネット空間のあり方にどのような影響を与えるのか。今後の動きを静かに見守る必要があります。
Reference(s):
cgtn.com








