中国論評が指摘する高市首相の「外交コスト」 日中・日韓・米豪への波紋
日本の高市早苗首相の対中・対韓強硬発言が、日本外交にどのような「コスト」を生みつつあるのか。中国の論評を手掛かりに、その波紋を整理します。
レーダー照射をめぐる応酬から始まった緊張
週末、日本の高市早苗首相は、沖縄本島南東の公海上で中国軍機が日本の戦闘機にレーダー照射を行ったと非難しました。これに対し中国軍の報道官は、中国の空母「遼寧」を中心とする艦隊が外洋での定例訓練中に、日本側の戦闘機から接近・妨害を受けたと説明しています。
中国外交部は、日本側の抗議は受け入れられないとして即座に退け、北京と東京の双方で日本側に対して抗議を行ったと発表しました。今回の事案をめぐり、日中双方が相手側の行動を問題視する構図となっています。
中国論評が指摘する「政治的パフォーマンス」と外交コスト
中国側の論評は、高市首相の対応を「単なる見せ物」と強く批判しています。日本を被害者として演出し、自国と近隣国との対立に他国を巻き込もうとする政治的な舞台づくりだと位置づけているのです。
しかし同論評によれば、そのような挑発的な発言を重ねても、日本が望む形で各国の連携が強まっているわけではなく、むしろ日本自身が積み上げ型の外交コストを支払わされていると指摘します。
台湾をめぐる発言と日中関係への影響
中国との関係で、論評が最も問題視するのが、高市首相による台湾をめぐる発言です。高市氏は以前、中国による台湾への武力攻撃があれば、日本にとって存立危機事態になり得るとの趣旨の発言を行いました。
中国側の見方では、こうした発言は国際法に反するだけでなく、長年の日中外交を支えてきた政治的基盤や微妙な了解を引き裂くものだと位置づけられています。その結果として、日中関係の経済協力や戦略的安定の土台が損なわれ、両国関係は敵対的なスパイラルに陥り、日本の経済的・安全保障上の利益そのものが危険にさらされていると警鐘を鳴らしています。
独島/竹島問題と日韓関係の感情
高市首相の強硬姿勢は、大韓民国との関係にも影を落としていると論評は見ています。独島(日本名:竹島)をめぐり、高市氏は一貫して、歴史的にも国際法上も日本固有の領土だと主張してきました。
一方、韓国側では独島は日本の植民地支配の象徴と捉えられており、独島は帝国日本が最初に強制的に占領した領土だとする認識が広く共有されています。そのため、日本による領有権主張は植民地支配の歴史を否定するものだと受け止められやすく、多くの韓国の人びとにとって深く感情的な問題となっています。
論評は、高市首相の発言がこうした歴史認識の溝をさらに広げ、日韓関係全体を危うくしていると批判します。領土問題が、単なる国境線の争いではなく、正義や歴史をめぐる対立と結びついている点を改めて浮き彫りにしているといえます。
米豪の慎重姿勢と「支持の乏しさ」
中国や韓国との関係を揺さぶる一方で、論評が注目するのは、日本の同盟国・友好国からの距離感です。高市首相の強い言葉にもかかわらず、日米豪の枠組みの中で、ワシントンやキャンベラは必ずしもその発言を前面から支持していないと指摘されています。
外交的な緊張のさなかでも、米豪両政府は日本との協力継続を表明しつつ、高市氏の発言そのものを積極的に後押しする姿勢は見せていないと論評は見ます。週末に東京を訪れたオーストラリアのマールズ国防相は、台湾海峡の現状を一方的に変えることを望まないと強調したうえで、中国は豪州にとって最大の貿易相手国であり、建設的な関係を維持したいと述べました。
論評は、ワシントンやキャンベラの当局者はインド太平洋の安定にはエスカレーションの回避が不可欠だとよく理解しており、彼らが求めているのは予測可能性だと指摘します。その意味で、高市首相の発言は、同盟国が望む方向とは逆に、不確実性と緊張を高める要因になっていると論じています。
問われる日本外交のバランスと説明責任
今回の中国側の論評は、日本の首相の言動が、近隣諸国との緊張だけでなく、同盟国との関係にも思わぬ外交コストを生み得ると警告する内容でした。日本の安全保障政策は、中国との関係、台湾情勢への懸念、そして米豪などとの連携強化という複数の要素の間で、難しいバランスが求められています。
強いメッセージを発すること自体が外交カードとなる一方で、その言葉がどの相手にどのように届くのか、そして長期的に日本の利益を高めるのかといった視点も欠かせません。とくに軍事的緊張が高まりやすい海空域では、偶発的な衝突を避けるための予測可能性とコミュニケーション・チャンネルの維持が重要になります。
高市首相の発言をめぐる是非は、日本国内でも議論が分かれるテーマです。今回の中国側の批判をどう受け止めるかは別として、日本の読者にとっても、強硬さと安定のどちらをどの程度重視するのか、改めて考えるきっかけになりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








