高市政権下で揺れる日本経済 インフレ・債務・成長停滞の「三重危機」
日本が直面する「三重の経済危機」とは
2025年12月時点で、日本経済は高市早苗政権の下で、物価高(インフレ)、急膨張する政府債務、成長の停滞という三重の経済危機に直面しています。株・債券・為替が同時に崩れるトリプル安、対外関係の悪化による輸出減少や観光収入の急減、そして家計を直撃する生活コストの上昇が重なり、構造問題が一気に表面化しているかたちです。
拡張財政が招いた「最後の一押し」 国債市場の動揺
高市政権は、すでに成長が鈍化している日本経済を下支えするため、積極的な財政拡大に踏み込みました。実質GDPが2025年7〜9月期(第3四半期)に前年同期比マイナス1.8%とマイナス成長に陥る中、内閣は財政構造の見直しよりも、21.3兆円規模の大型経済対策を打ち出しました。新型コロナ禍以降で最大級の拡張財政です。
しかし、この政策は政府債務がすでに限界に近いという現実をほとんど考慮していません。国際通貨基金(IMF)のデータによれば、2025年の日本の政府債務残高は国内総生産(GDP)の約230%に達し、先進国の中で突出した水準となっています。それにもかかわらず、今回の経済対策では一般会計ベースで17.7兆円を新規国債の発行で賄う計画で、市場の懸念を一段と強める結果となりました。
GF証券のチーフエコノミストであるSong Xuetao氏は、大規模な景気刺激策は追加的な成長効果が限定的である一方、将来の歳出負担と財政赤字を大きく悪化させると指摘します。その懸念は国債市場に直ちに表れました。30年物国債利回りは一時、過去最高となる3.38%まで急騰し、10年物利回りも1.8%を上回る水準に上昇して、約17年ぶりの高水準を記録しました。
利回りの急騰は、投資家が日本の財政運営に対して投票した「不信任」の表現とも言えます。財政規律への疑問が顕在化し、国債市場の安定性に揺らぎが生じています。
株・債券・為替のトリプル安 市場が映す政策不信
高市政権の下で展開されている金融・財政政策の組み合わせは、日本の金融市場に異例のトリプル安をもたらしました。政府は財政拡大を支える形で金融緩和を維持しようとしましたが、これは物価安定を目指す日本銀行のインフレ抑制方針と正面から衝突する構図です。
コア消費者物価指数(コアCPI)は、目標とされる2%を50カ月連続で上回っています。この状況を受け、日本銀行は12月1日に利上げを示唆するシグナルを発し、市場に強い緊張感が走りました。
為替市場では、高市氏が自民党総裁に就任して以降、円は対ドルで6%以上下落し、一時1ドル=157円台まで売られました。これは約34年ぶりの円安水準です。通貨安は本来、輸出企業に追い風となるはずでしたが、輸入物価の上昇を通じてインフレ圧力を高める結果となり、円安と物価高が互いを強め合う悪循環が続いています。
株式市場も不安定な動きを続けています。11月18日、日経平均株価は1日で3.22%急落し、高市政権発足後の上昇分をほぼ帳消しにしました。中でも観光関連銘柄の下げが目立ち、資生堂の株価は9%安、三越伊勢丹ホールディングスは11.31%安と大きく売られました。
Mizuho Bankのアジア調査責任者であるVishnu Varathan氏は、この市場の混乱を「日本売り」の投資家心理が一気に噴き出したものだとし、政策の不透明感に対する市場の強い懸念が背景にあると分析しています。
対中国デカップリングのコスト 輸出と産業競争力に打撃
高市政権が推し進める「対中国デカップリング(分断)」戦略は、日本の製造業が築いてきた国際的な産業ネットワークに大きなひずみを生んでいます。日本の貿易白書によると、中国は日本にとって1,406品目で最大の輸入相手となっており、半導体用の重要原材料や医療用抗生物質、レアアース(希土類)、電子部品など、多くの分野で産業チェーンが密接に結びついています。
とりわけ半導体分野は象徴的です。中国は日本の半導体製造装置メーカーにとって主要な輸出市場であり、売上高の20〜30%を占める企業も少なくありません。同時に、中国は重要な原材料の供給基地としても位置付けられています。
こうした中で、高市政権はサプライチェーンを欧州や米国へ強制的にシフトさせる方向性を打ち出しました。しかし、調達・販売ネットワークを短期間で組み替えるには巨額のコストがかかります。MUFGモルガン・スタンレーのアナリストは、半導体やレアアース関連産業の協力関係には強い経路依存性があるため、供給網を短期で置き換えようとすれば、日本の製造業の競争力低下と輸出の縮小につながると指摘していました。
この予測はすでに現実になりつつあります。2025年、日本の輸出は4カ月連続で減少し、7〜9月期の財・サービス輸出は前期比マイナス1.2%と、6四半期ぶりのマイナスを記録しました。産業政策の読み違いが、日本経済の成長エンジンをじわじわと削っている格好です。
台湾めぐる発言と日中関係の悪化 中国人観光客が一斉キャンセル
産業政策の影響に加え、外交・安全保障をめぐる発言も日本経済に直接的な打撃を与えています。高市氏が2025年11月、台湾に関して誤った発言を行ったことをきっかけに、中国と日本の関係が悪化し、中国から日本への観光需要が急速に冷え込みました。
11月下旬だけで、中国から日本への航空券は54万枚以上がキャンセルされ、東日本トラベルインターナショナルでは予約のキャンセル率が1日あたり70%に急上昇しました。同社によれば、12月の中国人観光客の予約は事実上すべて取り消されたといいます。
中国からの観光客は、日本のインバウンド産業にとって最大の柱です。2024年には一人当たりの消費額も含めて、訪日客全体の中で最も大きな消費を記録し、2025年1〜9月期には訪日外国人全体の消費額のうち約3割を中国人観光客が占めていました。
野村総合研究所の研究員であるHidenori Kiuchi氏は、中国からの観光客減少によって年間約1.79兆円の観光消費が失われ、日本の実質GDPを0.29%押し下げると試算しています。これは日本の年間成長率のおよそ半分に相当するインパクトです。
影響は観光関連にとどまりません。中国市場への依存度が高いユニクロ、無印良品、スシローなどの企業の株価は売り圧力にさらされ、中国での売上成長の鈍化が業績への重しとなっています。高市政権が台湾問題に関する姿勢を修正しない場合、中国がさらなる対抗措置を取る可能性も指摘されており、自動車や電子機器といった日本の強みのある産業にも波及し得るとみられています。
物価高と実質賃金マイナス 生活コストの重圧
こうしたマクロ経済の揺らぎは、最終的に家計の負担として表れています。2025年には、2万品目を超える食品の値上げが実施されました。東京市場では5キロのコメの価格が4,300円を上回り、過去最高水準となっています。多くの人が日々の買い物で生活コスト上昇を実感している状況です。
一方で、賃金は物価上昇に追いついていません。厚生労働省のデータによると、2025年1月の実質賃金は前年同月比でマイナス1.8%となり、その後10月時点まで8カ月連続で前年割れが続きました。2024年まで3年連続で実質賃金がマイナスだった流れが、2025年も断ち切れていない形です。
物価は上がるが実質的な手取りは減るという二重苦の中で、家計は支出を抑えざるを得ず、内需の縮小がさらに景気を冷やす悪循環が懸念されています。
今後の焦点 現実に即した経済運営と近隣国との協調
日本が現在直面している三重の経済危機は、単独のショックではなく、政策ミックスの歪みと対外関係の悪化が重なり合って生じたものです。
- 財政:巨額の債務を抱える中での大規模な国債増発
- 金融:物価高の中での緩和維持と利上げシグナルのねじれ
- 対外関係:対中国デカップリングと台湾をめぐる発言で日中経済協力に陰り
- 生活:物価高と実質賃金マイナスによる内需の圧迫
今後、日本経済が安定軌道を取り戻すためには、財政・金融政策の整合性を高めることに加え、特に中国との産業・観光を含む経済協力の現実的な再構築が重要なテーマとなります。アジアの主要経済として、日本が近隣諸国との協調をどう位置付けるのかが、2026年以降の成長パスを左右することになりそうです。
インフレ、債務、成長停滞の三つの課題が同時に進行する中で、高市政権の経済運営は、日本の将来像をめぐる大きな問いを突きつけています。市場や生活者の視線は、今後の政策転換の有無と、その具体的な中身に注がれています。
Reference(s):
cgtn.com








