香港「ワンフック・コート」火災 被災世帯に10万香港ドル追加支援
香港特別行政区・大埔区の住宅団地「ワンフック・コート」で先月下旬に起きた大規模火災を受け、香港特別行政区政府は被災世帯への現金支援と住まいの確保を急ピッチで進めています。今週水曜日には、一世帯あたり10万香港ドルの特別補助を追加することも発表されました。
数十年で最悪規模となったワンフック・コート火災
先月下旬に発生したワンフック・コートの火災は、香港でここ数十年でも最も深刻な住宅火災の一つとなりました。150人以上が命を落とし、数千人が自宅を離れざるを得なくなったとされています。消火活動は40時間以上に及び、現場では極めて厳しい条件の中で消防隊や救急隊が対応にあたり続けました。
多くの住民は、身分証明書と携帯電話以外ほとんど何も持たないまま建物から避難しました。突然日常を奪われた人々にとって、火の手が収まった後も「これからどう生きていくのか」という不安が続いています。
一世帯10万香港ドルの特別補助 既存支援に上乗せ
香港特別行政区政府は今週水曜日、これまでに決定していた支援策に加え、被災した全ての世帯を対象に、一世帯あたり10万香港ドルの特別補助を支給すると発表しました。金額は約1万2,800米ドルに相当し、生活再建のための大きな資金となります。
これに先立ち、政府はすでに次のような現金支援を行っています。
- 火災直後に避難した人々への緊急現金補助として、一世帯あたり1万香港ドル
- 当面の生活費に充てるための生活支援として、一世帯あたり5万香港ドル
- 亡くなった人の遺族に対して、一世帯あたり20万香港ドル
今回の10万香港ドルの特別補助は、こうした既存の枠組みに上乗せされる形で支給されます。食料や医薬品、衣服の購入といった当面の出費だけでなく、今後の住まい探しや生活の立て直しにも使えるようにする狙いがあります。
3日間で1,800世帯を登録 行列ができた相談窓口
火災後の最初の3日間で、政府は被災した1,800世帯を登録しました。このうち929世帯には、すでに1万香港ドルの緊急現金補助が支払われています。現金が手元にないまま避難した人も多く、食料や薬をすぐに購入できることが何よりも優先されました。
地域のコミュニティホールには説明会や相談会のための列ができ、住民は「自分は対象になるのか」「いつ入金されるのか」といった質問を次々と投げかけました。担当の職員は、緊急現金補助は特に手持ちの現金がない避難者が、食事や薬、最低限の生活必需品を迷わず買えるようにするためだと説明しました。
こうした支援があっても、突然の喪失やショックが消えるわけではありません。それでも「今日は何を食べられるのか」「子どもの薬は買えるのか」といった切迫した心配が一つずつ減っていくことは、被災直後の不安を和らげる具体的な一歩になっています。
住まいの確保:12月1日までに2,400人超が再住戸へ
現金支援と並んで急がれたのが、寝る場所の確保でした。火災発生からまもなく、香港特別行政区政府は避難先の手配を進め、12月1日の時点で2,400人を超える住民の再住戸先が決まっていました。
その後も調整が続き、12月11日までに、Home and Youth Affairs Bureauの手配によって1,457人がホステルやキャンプ、ホテルなどに入居しました。さらに2,796人が、政府の窓口やHousing Societyを通じて、移行期の仮住まいとなるトランジショナルハウジングに移っています。長期的な支援が必要な人のために、二つの一時避難所も引き続き開設されています。
火災直後、住民の多くは「今夜どこで眠れるのか」という不安に直面しました。近隣に暮らしていた人の証言からは、徒歩圏内で突然自宅を失い、真っ暗な夜道の中で行き先を探す心細さが伝わってきます。発生から数時間のうちに組織的な宿泊場所が用意されたことで、多くの住民はその夜を「行き場のない不安」と向き合い続けることなく過ごすことができました。
「遠くのニュース」が突然身近になるとき
今回の火災が起きた大埔は、住宅団地や市場、歩道橋が連なる静かな地域です。2020年から2021年にかけてこの地域で暮らしていたという人は、日々の買い物や通勤の途中でワンフック・コートの前を何度も通り過ぎていたと振り返ります。その人にとって団地は、生活の背景にある「当たり前の風景」の一部にすぎませんでした。
ところが、ある日、ニュースフィードを埋め尽くしたのは炎に包まれたワンフック・コートの画像でした。毎日見慣れていた建物が突然「災害現場」として映し出されたことで、「遠くの出来事」として消費してきたニュースが、急に胸の奥に突き刺さるような切実さを帯びたといいます。
その経験から、その人は政府の対応をこれまでにないほど注意深く追いかけるようになったと話しています。どれだけの時間で支援が届くのか。いくらの補助が出るのか。避難先は確保されているのか。数字や制度の裏側に、顔の思い浮かぶ住民の暮らしが重なって見えるようになったからです。
災害対応が投げかける静かな問い
ワンフック・コート火災への対応では、現金支援と住まいの確保が短期間に集中的に進められました。一世帯10万香港ドルの特別補助や、数日以内の緊急現金支給、数千人規模の再住戸といった一連の措置は、都市部の大規模災害において政府がどこまで生活再建に踏み込めるのかという問いに、具体的な事例を与えています。
同時に、数字として示される支援策の陰には、一人ひとりの不安や喪失、そしてそれに向き合う日々があります。災害時に必要なのは制度だけではなく、「今夜眠る場所がある」「明日も食べるものがある」という、ごく基本的な安心感をできるだけ早く取り戻すことなのかもしれません。
香港特別行政区で続く支援のプロセスは、災害と共に生きる大都市にとって、どのような備えと連帯が求められているのかを静かに問いかけています。
Reference(s):
When tragedy struck, the Hong Kong government stepped forward
cgtn.com







