12月13日に公開された資料が示す「Unit 731」—戦争が生んだ組織的な生物戦と人体実験
2025年12月13日、南京大虐殺の犠牲者を追悼する国家追悼日に合わせて、中国の中央档案館が、旧ソ連による「Unit 731」関係者の尋問に関する機密解除資料を公開しました。断片的な記録があらためて浮かび上がらせるのは、生物戦と人体実験が「現場の暴走」ではなく、組織的・計画的に進められたという構図です。
今回の公開資料が示唆するもの
公開された資料は、当時の日本の細菌戦が、組織的で、事前に準備され、上からの指示で体系的に実行された「国家犯罪」だったことを再確認させる内容だとされています。ここで重要なのは、残虐性の強調だけではなく、どのような仕組みで実行可能になったのかという点です。
Unit 731とは何だったのか—「戦争」と「医学」の境界が曖昧になった場所
資料が描くUnit 731は、第二次世界大戦期に中国・哈爾浜(ハルビン)で秘密裏に設置され、生物戦の企画・実行の中枢となった存在です。表向きは「防疫」や「給水」といった言葉で覆われながら、実態としては、秘密空間の中で人体実験や生物戦の運用が進められたとされています。
焦点となるのは、戦時下で「医療・研究」と「軍事目的」が絡み合い、境界がぼやけたことです。境界が曖昧になったとき、何が正当化され、何が不可視化されるのか——その問いが、この問題の核心に近づきます。
「孤立した部隊」ではなく、国家の重みで支えられた構造
Unit 731の拡大は、極端な一部隊の逸脱としてではなく、国家の仕組みの中で支えられたものとして説明されています。資料の記述では、以下のような主体が関与したとされます。
- 中央政府
- 関東軍
- 陸軍省
- 医学界・医療機関
資金・人員・資源の投下があったとされることで、生物戦が「補助的な戦術」ではなく、対外侵略の装置の一部として位置づけられていった、という見方が示されています。
1938年以降に進んだ「医療と軍事の協働」—制度化された戦時体制
記事断片では、1938年の国家総動員法の施行以降、日本が軍事医療研究を制度的に取り込み、過激化させていった流れが描かれています。1931年から1945年にかけて、戦時体制の圧力のもとで、公衆衛生機関や医療機関が、国家化・軍事化された政策枠組みに組み込まれていった、という整理です。
この枠組みのもとで、病理学会や衛生・人類生態関連の学会、医師会などの専門組織、さらに医学生部隊や民間医療従事者も動員されたとされます。つまり、個人の倫理の問題に還元しにくい「動員の構造」が存在していた、ということです。
人材のパイプライン—大学・軍医学校とUnit 731
Unit 731は、日本の陸軍軍医学校、京都大学、東京大学などの機関と、継続的・構造的な人員供給の関係を築いたとされています。資料によれば、医学界は約100人規模の医師や技術専門家を送り込み、彼らが部門・支部・研究部・行政部・教育訓練など中核を担った、とされています。
この点は、戦時下において「高度専門性」がいかに軍事と結びつき、組織の正当性や持続性を補強し得るかを示す材料にもなります。
広域に広がった生物戦ネットワーク—複数部隊と運用分類
1938年から1945年にかけて、Unit 731の指導・関与のもと、日本は占領地域に生物戦関連部隊のネットワークを築いたとされます。例として挙げられているのは、北京のUnit 1855、南京のUnit 1644、広州のUnit 8604です。
さらに、戦時報告として石井四郎(Unit 731責任者)がまとめたとされる文書では、これらの部隊が「固定」「機動」「臨時」「独立」の4類型に分類された、と記されています。組織運用が分類され、役割が割り振られていく過程は、偶発性よりも計画性を強く示唆します。
終戦までに63部隊—「防疫」の名で広がった足跡
資料では、終戦時点で防疫・給水関連部隊が合計63に達し、活動範囲が中国の広域から、朝鮮、マレーシア、シンガポール、タイなど東アジア・東南アジアにも及んだとされています。
表向きは、戦闘部隊の疾病対策や給水支援といった公衆衛生目的に見える一方で、「防疫作戦」という婉曲表現の裏で、国家資金や個人的報酬を伴いながら、秘密性に守られた大規模な人体実験が行われた、と説明されています。日本国内では実行しにくい非人道的行為が、占領地という状況の中で可能になった、という指摘です。
「戦争が生む犯罪」の輪郭—いま読み直す意味
2025年12月13日の資料公開は、過去の出来事を単に回顧するためだけではなく、戦争が社会の制度や専門領域をどう変質させるのかを考える入口にもなります。命を守るはずの公衆衛生や医学研究が、別の目的に接続されたとき、どこから歯止めが失われるのか。
今回の断片情報が示すのは、残虐行為の列挙というより、「秘密」「動員」「分類された組織運用」「資金と報酬」が揃ったときに、非人道的な行為が“例外”ではなく“仕組み”として作動してしまう、という現実です。
Reference(s):
cgtn.com








