シンガポールと中国の国交35年 変化の中で続くパートナーシップ
シンガポールと中国の関係が国交樹立35年と複数の節目を迎えるなか、両国は2025年12月15〜16日に重慶で開かれる第21回シンガポール・中国政府間協力委員会(JCBC)で、パートナーシップの次の章を描こうとしています。
対話の「場」から、関係を支える「仕組み」へ
JCBCは、シンガポールと中国の関係を統括する最上位の二国間協議メカニズムです。閣僚級の代表が定期的に集まり、これまでの進捗を確認し、新しい協力分野の方向性を決める場として機能してきました。
シンガポールのガン・キム・ヨン副首相兼通商産業相は、JCBCについて「単なる対話の場ではなく、信頼を築き、実質的な成果を生み出すためのアンカー(いかり)の役割を果たしてきた」と評価しています。制度化された対話の積み重ねが、政権交代や国際情勢の変化を越えて関係を安定させる土台になってきたと言えます。
国交35年と3つの政府間プロジェクト
今回のJCBCは、いくつもの記念すべき節目と重なっています。まず、2025年はシンガポールと中国の国交樹立35周年に当たります。ローランス・ウォン・シンガポール首相と李強中国国務院総理が互いに公式訪問を行い、ハイレベルな交流を続けています。
また、両国の象徴的な政府間(G2G)プロジェクトも節目を迎えています。
- 蘇州工業園区(SIP):昨年、開発開始から30周年を迎えた最初のG2Gプロジェクト
- 天津エコシティ:2023年に15周年を迎えた環境配慮型都市開発プロジェクト
- 中国・シンガポール(重慶)戦略的相互接続実証イニシアチブ(CCI):今年で10周年を迎える第三のG2Gプロジェクト
今回のJCBCが重慶で開かれるのは、このCCIの節目を記念する意味合いもあります。ガン副首相は、CCIがグリーン成長、デジタル化、サプライチェーン(供給網)の強靭化といった新たな優先分野にどう貢献してきたのかを現場で確かめることに期待を寄せています。
広州ナレッジシティと人材交流の広がり
ガン副首相は今年9月、中国・シンガポールの国家級協力プロジェクトである広州知識城(Guangzhou Knowledge City)を訪れ、その15周年を記念しました。同プロジェクトは、新技術の実証や産業クラスターの形成を進めると同時に、シンガポールと広州の間で知識やノウハウを共有する場として機能しています。
さらに、先月には第10回シンガポール・中国リーダーシップフォーラムが開催されました。これは、両国の指導者や高官がリーダー育成や行政運営の経験を率直に交換するための対話プラットフォームであり、長期的な関係を支える人的ネットワークの基盤にもなっています。
経済連結性と「レジリエント」な貿易
地政学的な緊張、世界経済の逆風、そして急速な技術革新。こうした不確実性が高まるなかでも、シンガポールと中国の貿易・投資関係は拡大を続けています。ガン副首相は、蘇州、天津、重慶など各地の協力プロジェクトを通じて、シンガポール企業が中国市場で新たな投資ルートを開拓し、同時に貿易フローの安全性と「レジリエンス(しなやかな強さ)」を高めていると指摘します。
サプライチェーンが分断と集中の両方のリスクにさらされるなかで、複数の都市や分野にまたがる協力プロジェクトを持つことは、経済面でのショックを和らげる保険にもなります。単に貿易量を増やすだけでなく、「どのようにつながっているか」を多様化することが重視されているのが特徴です。
第三国市場とASEANへ広がる協力
両国の協力は、二国間の枠を超えて第三国市場にも広がりつつあります。李強総理の最近のシンガポール訪問では、第三国市場での協力可能性を探る協定が締結されました。
具体的には、蘇州工業園区で培われた経験を活用し、シンガポールをハブとして東南アジアと中国の企業の双方向の国際展開を後押しする構想が示されています。また、ASEAN諸国の持続可能な発展を支えるため、シンガポールと中国が共同で第三国向けの人材育成・研修を提供することも合意されました。
アジア各地でグリーンインフラやデジタル経済のニーズが高まるなか、こうした三者協力の枠組みがどのように具体化していくのかが、今後の注目点となりそうです。
変化の時代に試される「長期ビジョン」
ガン副首相は、世界各国が不確実性に直面するいまだからこそ、シンガポールと中国が前向きで長期的なビジョンを持ち続けることが重要だと強調します。35年にわたる関係の歩みを振り返ると、両国は常に新しい協力分野を探り、それぞれの強みを組み合わせる形でプロジェクトを設計してきました。
その結果、協力の内容は時代に合わせて変わりながらも、関係の土台はむしろ厚みを増してきました。工業団地からエコシティ、戦略的相互接続、知識と人材の交流へ――焦点は移り変わっても、「共に試行し、学び、次の段階へ広げていく」というアプローチは一貫しています。
制度としての対話メカニズム、具体的な協力プロジェクト、そして人材と知識のネットワーク。この三つを組み合わせたシンガポールと中国の関係は、変化の大きいアジアにおける一つのモデルケースとして、今後も静かに注目を集めそうです。
Reference(s):
Singapore and China at 35: Enduring partnership amidst change
cgtn.com








