海南自由貿易港、2025年12月18日に「特別税関運用」開始へ―開放の次章
2025年12月18日、中国本土の海南省で「特別税関運用」が正式に始まります。専門用語に見えますが、モノ・資金・人の動きを大きく変える制度設計で、海南自由貿易港(FTP)が“次の開放”へ進む節目と位置づけられています。
コーヒー豆の話から見える「制度の変化」
海南のコーヒー産業で働いてきた黄海文さんは、「世界中からコーヒー豆を仕入れ、世界に売りたい」という夢を長年抱いてきました。工場の木材焙煎からガス化・自動化へと変わる現場を見てきた経験は、産業の競争力が設備更新や商品開発(イノベーション)に左右されることを教えたといいます。
2022年には社内に「労働者イノベーションスタジオ」が設立され、スペシャルティコーヒーの開発を内製化。さらに黄さんは全国人民代表大会(全人代)の代表として制度面にも関わり、2024年初めに財政部の担当者との会合で「海南FTPの“ポジティブリスト”に生豆(未焙煎のコーヒー豆)を加える」提案を行いました。
その流れの中で、2025年1月26日、財政部などは未焙煎コーヒーを海南FTPの「ゼロ関税の原材料・補助材料リスト」に加えると発表。原材料の調達先が広がり、コストも下がる――小さな豆が、制度の後押しで遠くへ届き始めた、という構図です。
2025年12月18日から何が変わる?「特別税関運用」の骨格
海南FTPのマスタープランでは、「5つの自由化・円滑化(貿易、投資、越境資金移動、出入境、輸送)+安全で秩序あるデータ流通」を柱に、国際水準の制度を目指すとされています。中心に置かれるのが貿易の自由化・円滑化で、島全体を対象にした税関監督の仕組みと、ゼロ関税政策が軸になります。
制度の要点は、次のフレーズに凝縮されています。
- 「一線」=より自由に(first line):海外との出入りをより円滑に
- 「二線」=適切に管理(second line):海南と中国本土(本文内では「内地」)の間の流れをルールで整える
- 島内=自由に流通:島の中ではスムーズな循環を確保
海南が島であること(地理的に区切りやすいこと)を制度設計に活かし、島内ではゼロ関税の恩恵を広げつつ、二線で管理を行う――このバランスが中核です。
「一線」は完全フリーではない
ゼロ関税は広く適用される想定ですが、課税対象の輸入品リストや輸出入の禁止・制限品目リストに該当する一部の品目には、関税や規制が残ります。また、バイオセキュリティや生態系保護、製品品質などの観点で高リスクとみなされる分野は、厳格な管理を行うとされています。
「二線」は“遮断”ではなく“ルール化”
特別税関運用の開始後、ゼロ関税で入った貨物が中国本土(本文内では「内地」)の税関領域へ入る場合、原則として全国ルールに基づき課税されます。一方で、海南で生産された製品、または海南で加工され付加価値が30%以上となる製品は、中国本土へ無関税で入れる仕組みが示されています。
この方式は、洋浦保税港区で先行的に運用され、2021年の取引(海南Ausca International Oils and Grains社の事例)を起点に、洋浦開発区や海口国家ハイテク産業開発区などへ拡大。参加企業からは、中国本土への移出コストが下がったとの声があるとされています。
「自由貿易港」モデルの中での位置づけ:似ていて、違う
自由貿易区(FTZ)や自由貿易港(FTP)は、世界の自由貿易の重要な器です。税関手続きの簡素化などを定める国際的な枠組み(いわゆる京都条約)では、FTZは関税・税の観点で「税関領域の外」とみなされる区域として説明されます。
海南FTPも、島全体を対象にした特別税関運用で国際的なモデルに沿う面があります。制度設計は香港、シンガポール、ドバイなどの事例も参照しているとされます。
ただし本文が強調する最大の違いは、海南が「独立した関税領域」ではない点です。だからこそ、中国本土との間に「二線」を設け、管理と円滑化を同時に成立させる必要がある――ここが海南モデルの難しさであり、挑戦でもあります。
税制改革もセットで動く:ゼロ関税、低税率、簡素化
特別税関運用は、税制改革と一体で進むとされています。マスタープランの原則は「ゼロ関税、低税率、税制の簡素化、法的基盤の強化、段階的実施」です。
- ゼロ関税:一線で入る貨物について、原則として輸入関税・輸入増値税(付加価値税)・消費税を免除(ただし課税品目リスト等の例外あり)
- 低税率(ダブル15%):奨励産業の企業所得税を15%、高度人材等の個人所得税は15%を超える部分を免除
- 税制の簡素化:全面実施後の適切な時期に、増値税・消費税・各種付加税などを整理・統合し、最終消費段階でのみ課す単一の小売売上税を導入する構想
海南に「中国本土と異なる制度空間」をつくることで、国際的な商流・物流・投資の動きに合わせた予見可能性を高める狙いが示されています。
2025年末の国際環境の中で:開放と規律を同時に進める発想
本文は、世界経済が輸出管理や投資審査、サプライチェーンの安全保障化を強める方向にある中で、中国が制度型の開放を前に進める点を「意図的」と描写します。より自由な流れを広げながら、同時に精緻な規制設計で秩序を保つ――海南の特別税関運用は、その両立を試す実験場になっていきそうです。
工場の改善から始まった一人の働き手の夢が、制度改革のタイムラインと重なっていく。海南の取り組みは、そんな“小さな現場”と“大きな制度”の距離を縮める形で進んでいます。
(注)本文は、提示された断片情報にもとづき、制度の狙いと仕組みが伝わるように整理しました。
Reference(s):
Hainan special customs operations: China's next era of opening-up
cgtn.com








