海南、12月18日に「全島特殊関税運用」開始へ——三亜のヨット産業が映す転換点
2025年12月18日、海南省は「全島特殊関税運用」を開始します。言葉は難しく聞こえますが、島にとっては貿易・投資のルールが大きく切り替わる“節目”であり、現地では新たな成長航路のスタートとして受け止められています。
三亜湾が感じさせる「制度の切り替え」と期待
11月の海南・三亜湾は、ターコイズから深い青まで変化する海と、マリーナを行き交うヨットが印象的です。三亜国際ヨットセンターでは夕日を撮る旅行者や、ヤシの木陰でデッキを手入れするオーナーの姿があり、穏やかなリゾートの空気が流れます。
その一方で会話の中心になりやすいのが、「12月18日」。海南が全島で特殊関税運用を始める日で、観光客には“手続きの話”に見えても、地域の事業者や関係者にとっては、政策の開放度や実験の余地が広がる転機だと語られています。
「ゼロ関税」拡大など、制度変更のポイント
海南自由貿易港(FTP)の制度変更を解説する参考資料として、海南省の中国共産党(CPC)委員会・宣伝部が作成した「海南自由貿易港の全島特殊関税運用に関する100の質問」を編纂する専門家の一人は、変化の分かりやすい例としてヨット産業を挙げています。
ヨット輸入のコスト感:10億元ではなく「1000万元」で約4割軽減のイメージ
最適化が進む貿易・投資の円滑化策のもと、輸入ヨットに対するゼロ関税政策(観光・運輸関連企業向けの試行)は、全島運用開始後も継続するとされています。例えば、評価額1000万元(約141万ドル)のヨットを輸入する企業は、関税や消費税などで約4割の負担が軽くなり、運営コストの低下につながるといいます。現地では、こうした余地がサービスや価格に波及する可能性も意識されています。
12月18日以降に見込まれる主な拡張
- ゼロ関税の対象:関税分類(タリフライン)の74%まで拡大
- 加工増値(付加価値)政策:域内で加工した商品の国内販売に関する制度が改善
- 中古の機械・電気製品:60品目コードで求められていた輸入許可を取り消し(従来許可対象の約80%をカバー)
ヨット製造にも追い風:三亜産の競争力はどう変わるか
製造側にとっても、設備や原材料・補助材料にかかる輸入関税や付加価値税(VAT)の免除が、コストを約2割下げる可能性があるとされています。さらに国内市場で販売する際、条件を満たせば加工増値の関税免除によって、追加で約6%のコスト低減が見込まれる、という試算も示されています。
こうした制度設計が実装されれば、三亜で製造されるヨットは、価格だけでなく品質やサービス面も含めた総合力で、海外や中国国内の他地域の競合と比べて優位性を得る、という見立てもあります。その結果として、国内外のメーカーや修理・メンテナンス企業が島内に拠点を置く動きが加速することが期待されています。
三亜が描く「沿岸都市に産業を集約する」構想
三亜は政策メリットと海洋資源を組み合わせ、ヨット産業のパイロット区(試行エリア)を整備し、製造・観光・展示会・文化クリエイティブまでを束ねる形を狙います。目標は、生産/修理/研究開発(R&D)/消費を一つの沿岸都市に集めた“フルチェーン化”です。
訪問者のなかには、三亜をマイアミ、サントリーニ、バルセロナのように「ライフスタイル」と「海の文化」、そして高付加価値産業が相互に育つ場所として語る人もいます。実際にそこまで到達するかは今後の積み上げ次第ですが、制度変更を前にした熱量が高まっていることは確かです。
自由貿易港は世界でどう位置づくのか
自由貿易港(FTP)を目指す動きは海南だけではありません。提示された情報によれば、2025年時点で世界には130超のFTP、そして3,900超の自由貿易区が運用されているとされます。また中国本土の開発区の蓄積も大きく、世界の同種ゾーンの半数を占める、という説明もあります。
一方で、世界の事例から見えるのは「完成までの時間」です。シンガポール、ドバイ、香港、ロッテルダムはいずれも、関税面の革新から、貿易・金融・海運・物流・先端産業が連動する成熟した生態系へ至るまで数十年を要したとされます。政策の強度、産業の狙い、出発点、そして地政学的環境によって速度は異なるものの、最終的には地域の交通・経済ハブとして存在感を確立していった、という整理です。
「自由貿易港」と「法的地位」は同じではない
もう一つ重要なのが、自由貿易港の法的地位の違いです。提示された情報では、シンガポールは国、香港は独立の関税領域、ドバイやロッテルダムは自由貿易区または港として整理されています。
独立の関税領域とは、主権を持つ国家ではない「非国家主体」ですが、多国間貿易協定に基づき、世界貿易機関(WTO)においては国と同様の権利と義務を持つ枠組みだと説明されています。領域への貨物の出入りの監督や、関税その他の税の課税・免除は、その地域の政府が公布する通関規則に基づいて実行されます。
12月18日が意味するもの:観光地の先にある“制度の実験場”
海南の全島特殊関税運用は、旅行者にとっては見えにくい変化かもしれません。しかし、輸入・製造・サービスのコスト構造や、企業が拠点を置く理由を少しずつ変えていく可能性があります。三亜のマリーナで語られる期待は、ビーチリゾートの次に来る「産業と制度の物語」を先取りしているのかもしれません。
Reference(s):
Hainan after special customs operations: Hainan truly sets sail
cgtn.com








