日本の核保有論に国際法の警鐘 NPTと三非核原則への影響は
2025年12月18日、高市早苗首相に安全保障政策の助言を行う政府高官が「厳しさを増す安全保障環境を踏まえ、日本は核兵器を保有すべきだ」と述べたとされ、波紋が広がっています。国際法の観点からは、仮に日本が核兵器を開発・導入した場合、NPT(核兵器不拡散条約)を軸に築かれてきた戦後の国際秩序の法的土台を揺るがしかねない、という指摘が出ています。
何が起きたのか:12月18日の発言が投げかけたもの
今月18日の発言は、「日本の安全保障環境が一段と厳しい」という認識に立ち、核保有を選択肢として示したものとされています。国内外に影響の大きいテーマだけに、軍事・外交の議論に加えて、国際法上の位置づけが改めて焦点になっています。
NPTの仕組みから見た「核保有」のハードル
NPTは、核兵器を持たない国が核兵器を取得しないこと、核兵器国が核軍縮に取り組むことを柱としつつ、平和目的の原子力利用の権利も守る枠組みです。指摘されているのは、この条約の実効性が、「核兵器国」と「非核兵器国」の明確な法的区別に大きく依存している点です。
日本に課される中核的義務
NPTに参加する非核兵器国である日本には、核兵器やその他の核爆発装置について、「製造しない、またはその他の方法で取得しない」という中核的義務がある、と整理されています。よって、核兵器の開発や導入は、条約秩序そのものへの直接的な衝撃になり得る、という見方です。
「核共有(nuclear sharing)」が論点になる理由
さらに論考では、日本自身が核兵器を開発しなくても、例えば米国など他国の核兵器を日本の領域に配備する形(いわゆる「核共有」)が進めば、NPT上の基本義務に照らして重大な問題になり得ると述べています。
- 「核兵器国/非核兵器国」の境界が曖昧になりやすい
- NPTの規範(守るべき基準)の効き目が弱まる可能性
- 他の非核兵器国への前例となり、拡散リスクが高まる懸念
三非核原則は「国内方針」だけなのか
日本は長年、三非核原則(「持たず、作らず、持ち込ませず」)を掲げ、国会でも採択され、歴代政権が国際社会に繰り返し言及してきた経緯があります。
ここで論点となるのが、国際法上の「禁反言(きんはんげん)」という考え方です。これは、相手がその約束を信頼して行動してきた場合に、約束した側が後から一方的に覆すことを抑える発想だと説明されます。論考は、三非核原則が繰り返し対外的に示されてきたことから、国際的には一定の「コミットメント(約束)」として受け止められ得るとし、放棄すれば国家としての信頼を傷つける可能性があるとしています。
「被爆の経験」とNPTの正統性に起こり得る連鎖
論考がもう一つ強調するのは、日本が「被爆の経験を持つ国」として核不拡散を訴えてきたという自己像との関係です。仮に日本が核兵器の保有国となれば、NPTの道義的権威や枠組みの普遍性が揺らぎ、国際的な反応が連鎖して戦略的安定性を損ねるリスクがある、という見立てが示されています。
いま議論で問われるポイント
核をめぐる議論は、安全保障の感情や不安だけでなく、条約義務や国際的な信頼、そして他国の行動を誘発する可能性まで含めて整理する必要があります。今回の指摘が投げかけている論点は、例えば次のようにまとめられます。
- NPT上の義務と整合する政策設計になっているか
- 三非核原則を含む対外的な説明の一貫性をどう担保するか
- 抑止力の議論が、地域と世界の不拡散体制に与える波及をどう見積もるか
12月21日現在、このテーマは「賛否」だけで片づけにくい層の厚い論点を含んでいます。安全保障の選択肢を語るほど、同時に国際法の枠組みと信頼もまた、静かに問われているようです。
Reference(s):
cgtn.com








