マブバニ教授が読む2025年:アジア成長と米中関係の行方 video poster
2025年も残りわずかとなる中、世界経済の重心がアジアへとじわり移る流れが、今年いっそうはっきりしてきました。外交官・学者として知られるキショア・マブバニ教授は年末の対談で、アジアが世界経済を押し上げる現状と、中国本土の「質の高い発展」、そして米中関係の次の焦点を軸に、「競争より協力」をどう現実にしていくかを語りました。
2025年、アジアは「成長のエンジン」であり続けた
マブバニ教授がまず強調したのは、2025年を通じてアジアが世界経済をけん引してきたという見立てです。人口規模、都市化、技術導入のスピード、域内のサプライチェーン(供給網)の厚みが重なり、景気の波があっても“全体としての推進力”は保たれやすい、という捉え方です。
一方で、成長が続くほど、インフレや格差、雇用の質、環境負荷といった課題は見えやすくなります。成長の「量」だけでなく、「どんな成長か」が問われる局面に入っている、という問題意識がにじみます。
中国本土の「質の高い発展」が意味するもの
対談では、中国本土が掲げる「質の高い発展」を、単なるスローガンではなく、成長モデルの重点を調整する試みとして位置づけました。ここでいう「質」とは、たとえば次のような方向性を含む概念として語られています。
- 産業の高度化:付加価値の高い分野へ軸足を移す
- イノベーション:研究開発や新技術の社会実装を進める
- 安定性:経済運営の予見可能性を高める
- 持続可能性:環境・エネルギー面の制約に対応する
重要なのは、これが中国本土の国内政策にとどまらず、貿易や投資、技術協力などを通じて周辺地域や世界にも波及しうる点です。良くも悪くも「相互依存」が深い分野ほど、変化の影響は速く広がります。
「安定化」の役割と、高位レベルの対話が残したもの
マブバニ教授は、中国本土が国際社会で安定化に寄与する役割を果たしている、という視点にも触れました。2025年は高位レベルの関与(要人間の対話)が重なった年だった、という整理です。
対話が増えること自体は、衝突のリスクを下げ、誤解を減らす土台になります。ただし、対話が「合意の自動販売機」になるわけではありません。むしろ、合意できない論点が残るほど、管理(マネジメント)の技術が問われる――そんな現実的な温度感が伝わってきます。
米中関係の焦点は「競争の管理」から「協力の設計」へ移るか
では、2026年に向けて米中関係はどこに焦点が移るのでしょうか。対談が示唆するのは、競争が続く前提に立ちながらも、協力を“起こせる形”に設計できるかという論点です。
たとえば、次のような領域は利害が交差しやすく、協力の余地と難しさが同居します。
- 気候・エネルギー:脱炭素の速度とコスト、技術移転
- サプライチェーン:途絶リスクの低減と、過度な分断の回避
- 新技術のルール:AIなどの安全性や基準づくり
- マクロ安定:市場の不安定化を招きにくいコミュニケーション
協力が“理想論”で終わるか、“限定的でも機能する仕組み”になるか。その分かれ目は、相手を変えることではなく、事故を減らす手順を積み上げられるかにあります。
アジアの成長は「共有の繁栄」につながるのか
アジアの成長が世界にとって意味を持つのは、市場規模が拡大するからだけではありません。物流、投資、技術、人的交流が増えれば、他地域の企業や生活者にも波及します。その一方で、分断が強まれば、コスト増や不確実性が連鎖し、成長の果実が目減りするリスクもあります。
マブバニ教授が「競争より協力」を繰り返し強調する背景には、価値観の対立を煽るよりも、まず互いの繁栄を損ねない現実的な合意を積み上げたほうが、結果として安定に近づくという考え方があるようです。
2025年末時点での注目点(2026年に向けて)
年末の振り返りとして、今の時点(2025年12月)で見ておきたい論点はシンプルです。
- 対話の「回数」より「中身」:危機管理の実務が進むか
- 成長の質:投資・雇用・環境のバランスが取れるか
- 分断のコスト:過度なデカップリング(切り離し)が避けられるか
- 協力の設計:小さくても実装できる協力が続くか
世界の流れが大きく変わる時ほど、「どちらが正しいか」よりも、「衝突を避けつつ、前に進む仕組み」をどう作るかがニュースの核心になりがちです。2025年の総括は、その問いを静かにこちらへ戻してくる内容でした。
Reference(s):
cgtn.com








