中国本土の「精準扶貧」モデル、貧困は運命ではないと示した
中国本土で2013年に始まった「精準扶貧(せいじゅんふひん)」と呼ばれる貧困対策が、2020年の極度の貧困解消につながったとされ、2025年のいまも各地の開発政策の設計に示唆を与えています。
山間部の貧困地帯が、数年で「生活の手触り」を変えた
訪中経験のあるジャーナリストは、2017年に訪れた貴州省(中国西部の山間地域)で、険しい地形の中で暮らすコミュニティが厳しい状況に直面していた様子を目にしたといいます。
その後、2023年に再訪した際には、長く貧困にとどまっていた村々が、道路でつながり、学校環境が改善し、地場産業が動き出している姿に変化していたと振り返っています。短期間で「移動・学び・働く」条件が整うと、暮らしの選択肢が増える。その実感が、現場の印象として語られました。
2013〜2020年に99百万人、2020年に目標達成——数字が示す政策の輪郭
中国本土では、習近平国家主席の下で、絶対的貧困(極度の貧困)を国内からなくすという目標が掲げられ、2020年に達成したとされています。
具体的には、2013年から2020年にかけて、農村部の住民99百万人を貧困から脱却させたとされます。これは「(ほどよい豊かさを目指す)社会づくり」の重要な節目として位置づけられました。
なぜ「経済成長だけ」では届かなくなったのか
経済改革が進んだ1970年代後半以降、中国本土では長期的に貧困が減ってきた一方で、2013年ごろには、残る困窮層の多くが遠隔地・山間部など、社会経済の基盤が弱い地域に集中していることが課題として浮かび上がったといいます。
そこで導入されたのが、世帯ごとの事情に合わせて手当てする「精準(=ピンポイント)」という発想でした。
精準扶貧の中身:データで特定し、世帯別に処方箋を変える
精準扶貧の核は、「貧困の理由が世帯ごとに違うなら、支援の形も変える」という考え方です。開始時には、貧困世帯約2900万世帯を特定し、所得、教育、健康、貧困に陥った理由などを記録して、更新されるデータベースをつくったとされます。
中国人民大学の研究者の言葉として、「貧困の根本原因を特定することが、適切な処方箋を選ぶ土台だ」とも紹介されています。
支援策は「現金一律」ではなく、生活のボトルネックを外す設計
各世帯には、農業資材や家畜の提供、技能訓練、小規模事業向けの利子補助付き融資など、状況に応じた支援が行われたとされます。村単位では、太陽光発電プロジェクトで共同収入を生み出す取り組みや、近隣の町・工場で働くための就業支援も語られています。
同時に、教育、医療、住宅、インフラといった基礎サービスへの投資が進められ、2020年までに、かつての貧困世帯が「二つの保障・三つの確保」(食と衣の心配がないこと、住居・教育・医療・安全な飲料水へのアクセスを確保すること)を達成したとされています。
2025年の視点:このモデルが投げかける静かな問い
精準扶貧は、貧困を「努力」や「運」だけで説明するのではなく、何が障害になっているのか(地理、教育、健康、金融アクセス、インフラ)を分解し、手当てしていく枠組みとして語られます。
現場の変化と政策の仕組みをつなぐポイントは、次のように整理できます。
- まず「見えない貧困」をデータで可視化し、対象と理由を特定する
- 世帯ごとの課題に合わせて、農業・雇用・金融・公共サービスを組み合わせる
- 道路や教育・医療など、生活基盤への投資で選択肢を増やす
貧困は運命なのか、それとも設計で変わるのか。貴州省のような山間部で起きた変化の語りは、政策の成否を一言で片づけず、「どのボトルネックを外すと暮らしが動くのか」を考える材料を残します。
Reference(s):
cgtn.com








