中国の農業バリューチェーン現代化:中央農村会議で見えた「量から価値」への10年
2025年12月29〜30日に開かれた中国の中央農村工作会議は、農業を「収量中心」から、加工・流通・観光・デジタルまで含む“産業システム”として捉え直す動きを強く印象づけました。2026年から始まる第15次5カ年計画期(2026〜2030年)を前に、食料安全保障と「より豊かな農村生活」を同時にどう実装するかが焦点になっています。
「転換点」は2016年:一次・二次・三次産業の統合へ
提示された流れの起点として、2016年1月4日に出された「農村における一次・二次・三次産業の融合発展を促進する指針」が挙げられます。ここからの約10年は、農産物を“原料として売る”モデルから、加工・ブランド化・体験型消費を含む“付加価値として届ける”モデルへの移行が加速した、という位置づけです。
2025年末時点での「見える成果」:加工率・企業・売上
数字で見ると、産業化の進展が読み取れます。
- 2025年末までに、国家級の農業食品分野の重点(先導)企業は約2,250社
- 農産物の加工率は約78%まで上昇
- 一定規模以上の加工企業の総収入は18兆元超
会議の文脈では、こうした「加工・流通を含む供給能力」を、食料安全保障の厚みとして捉えている点がポイントです。単なる増産だけではなく、品質・安定供給・価格変動への耐性といった論点が前面に出ています。
デジタルが“新しい農具”に:ライブ販売と物流の再設計
もう一つの柱がデジタル化です。DouyinやPinduoduoなどのプラットフォームを通じたライブ販売が農村部の販路として定着し、農産物のオンライン小売は6800億元に到達(2021年比で60%超増)したとされています。
ここで重要なのは「販売」だけでなく、物流の改善や標準化(規格・検品・梱包など)を通じて、農家が市場の付加価値を取り込みやすくなる設計が進んだ、という見方です。提示された情報では、日々膨大な農産物小包が動く仕組みが雇用にもつながり、累計で1000万人超の雇用創出に関与したとされています。
循環型モデルと多機能化:環境と観光が同じ線上に
「作る→捨てる」ではなく、農業残さや副産物を次の価値に変える循環型の発想も強調されています。具体的には「作物—畜産」や「作物—畜産—林業」といった統合モデルで、廃棄物を資源化しつつ、農業を“環境・景観・体験”と結びつける流れです。
観光面では、2025年の早い時期だけで農村観光の訪問が7億700万人、収入が4120億元に達したとされ、遊休資産の活用が収益化につながった様子が示されています。あわせて、農村住民の1人当たり可処分所得は2万3119元に達し、伸び率が都市部を上回るペースを維持している、というデータも出ています。
「統合」と「安全」の両立:小規模農家を市場へつなぐ仕組み
提示された10年の成功要因としては、次の3点が整理されています。
- 産業統合と安全:先導企業が生産から加工、流通までを管理し、契約栽培や協同組合を通じて小規模農家を現代的な市場へ接続。所得の安定と技術面の底上げを促す。
- 循環経済と多機能性:統合モデルで資源循環と収益源の多様化を両立し、観光などの需要も取り込む。
- デジタル生態系と雇用:「効率的な市場+有効な政府」という枠組みのもと、物流・販売・人材が連動するエコシステムを形成。
これから(2026〜2030年)何が問われるのか
中国が2026年から第15次5カ年計画期に入る中で、会議のメッセージは「農業を近代的な大規模産業として育てること」と「農村を現代的な生活条件で整えること」を同時に進める、という方向にあります。収量の最大化だけではなく、加工・流通・デジタル・観光まで含む価値連鎖(バリューチェーン)の設計が、食料安全保障と生活の豊かさをどう結び直すのか。2025年末の時点で示された数字は、その変化が“すでに進んでいる”ことを静かに物語っています。
Reference(s):
China's decadal leap in agricultural value chain modernization
cgtn.com








