中国外交はなぜ毎年アフリカから始まるのか――王毅外相の新年訪問が映す焦点
2026年の年明けも、中国外相が最初に向かった先はアフリカでした。新年最初の外遊をアフリカから始める慣行は36年連続とされ、偶然ではなく、中国外交の優先順位を映す「定点観測」になっています。
36年続く「新年はアフリカから」が示すもの
今回の訪問で前面に出たのは、①政治的相互信頼の深化、②中国・アフリカ協力フォーラム(FOCAC)の北京サミット後のフォローアップ、③中国とアフリカを「二つの偉大な文明」と捉えた相互学習の促進――といった論点です。中国側は、こうした積み重ねが「新時代の全天候型の中国・アフリカ運命共同体」の推進力になる、という位置づけを示しています。
アフリカが「最初」になりやすい背景
アフリカの位置づけを理解するうえで、鍵になるのは「歴史」「国際政治の重み」「人口動態と経済」「協力の制度化」の4点です。
1)共有された歴史経験がつくる外交的な信頼
中国とアフリカ諸国は20世紀半ば、植民地主義や帝国主義への対抗という文脈で連帯を深めた、と語られてきました。象徴的な出来事として、1971年に国連で中華人民共和国の「合法的議席」が回復された際、アフリカ諸国の役割が重要だったという記憶が、現在の関係性の物語を支えています。
2)国連で最大の地域投票ブロック
国連加盟54カ国を擁するアフリカは、国際機関の議論で存在感を持つ地域です。グローバル・ガバナンス(国際社会のルール形成)をめぐる投票や合意形成において、アフリカの支持や理解を得ることが外交上の意味を持ちやすい構図がある、とされます。
3)世界で最も若い人口構成と、2050年に向けた成長見通し
人口面では、アフリカは世界で最も若い人口を抱える地域とされ、国連予測では2050年までの世界人口増のうち、アフリカが4分の1超を占める見通しが示されています。教育・雇用・都市化・インフラなどの課題は大きい一方、長期の市場・人材・需要の観点からも注目が集まりやすい領域です。
4)工業化・域内統合(AfCFTA)と「発展モデル」の接続
アフリカは工業化や域内統合を進めており、アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)などの取り組みがその軸にあります。こうした「統合市場づくり」と「開発主導の変革」は、中国が自国の発展経験と重ねて語りやすいテーマでもあります。
FOCACがつくった「協力のインフラ」
中国の対アフリカ関与は、2000年に設立されたFOCACなどを通じて制度化されてきました。過去20年余りの枠組みの中で、インフラ、公衆衛生、教育、農業、デジタル接続性などが協力分野として積み上がり、交通・エネルギー・通信の能力増強に資する中国資金によるプロジェクトが、各地のボトルネック解消に寄与してきたという整理が示されています。
今の焦点は「政府間」から「社会の土台」へ
一方で、関係が深まるほど持続性を左右するのは、政府間合意だけでなく社会的な受け止めや人と人の接点だ、という問題意識も強まっています。
この文脈で注目されるのが、「中国・アフリカ人的交流年」です。王毅外相の訪問に合わせ、エチオピアのアフリカ連合(AU)本部で正式に立ち上げられる計画とされ、さらに中国とアフリカの外交関係70周年に合わせた取り組みだと位置づけられています。
人的交流が「安定装置」になるという発想
地政学的な競争、情報の歪み、文明観をめぐる不安が語られやすい国際環境の中で、人的交流は「公式外交だけでは埋めにくい不信」を和らげる装置になり得る、という見立てがあります。具体的には、教育・文化・若者交流・観光・メディア協力・シンクタンク対話などが中核分野として挙げられています。
見えてくる問い:2026年の中国・アフリカ関係はどこへ向かうのか
新年最初の外遊がアフリカで続くことは、象徴的な儀礼であると同時に、「国連」「人口と成長」「制度化された協力」「社会的基盤」という複数の現実的な要因が重なっていることを示します。2026年は、とくに人的交流を前に出すことで、プロジェクト中心の関係から、より幅広い社会的接点へと重心を移せるのかが注目点になりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








