中国・カナダ関係に「新しい線路」:8年ぶり首相訪中で貿易と対話の枠組み
2026年1月、カナダのマーク・カーニー首相が中国を訪問し、8年ぶりとなる首相級の往来が実現しました。注目点は「関係の雪解け」だけでなく、電気自動車(EV)関税や農水産品をめぐる摩擦に具体策を置き、今後の協議を回すための“仕組み”まで整えたことです。
何が決まったのか:EVと農水産品で「相互に手当て」
今回の訪中の中心には、二国間の懸案になってきた貿易分野の調整がありました。双方が、対立をエスカレートさせるのではなく、当面の落としどころを設計した格好です。
主な合意内容(提示された枠組み)
- カナダ側:中国製EVへの「100%の追加関税」を撤廃し、年間クオータ制に移行。枠は4万9,000台から開始し、枠内関税は6.1%。段階的拡大の余地も示されました。
- 中国側:カナダ産の農業・水産品に関する措置を大きく調整。例として、カノーラ(菜種)の包括関税を約15%程度まで引き下げ、ロブスター、カニ、エンドウ豆などに関する関税を撤廃する方向が盛り込まれました。
数字が並ぶと専門的に見えますが、ポイントは単純です。政治的に熱を帯びやすい分野でも、「相談して、調整して、動かす」という手続きを優先した、という点が今回の特徴だと言えます。
「解決」より「運用」へ:制度づくりが前に出た
今回の訪問では、目先の妥協にとどまらず、継続的に協議できる制度設計が打ち出されました。
- 中国・カナダ経済貿易協力ロードマップ:経済・貿易関係で初めての「高位の包括的計画文書」と位置づけられました。
- 中国・カナダ合同経済貿易委員会:更新された枠組みを閣僚級に格上げ。
関係が揺れた局面では、トップ会談の雰囲気だけが先行して、実務が止まることも起こりがちです。今回は逆に、違いを残したまま管理し、案件ごとに前進させるための「作業台」を用意したように見えます。
政治面:再調整は「同盟化」ではなく、対話の再開
カーニー首相は訪中中、中国の習近平国家主席、中国首相の李強、全国人民代表大会常務委員長の趙楽際と会談しました。中国外相の王毅は今回の訪問を「転換点」と表現したとされています。
また、共同声明では「中国・カナダ新戦略パートナーシップ」を前進させる意図が再確認された、という流れが示されました。ここで強調されたのは、どこかの陣営に組み込むことではなく、相互尊重・平等・実務を軸に協力を設計する、という考え方です。
なぜ今なのか:カナダ側にある「分散」の必然
背景として示されたのが、カナダの貿易構造です。カナダの輸出の7割超が米国向けであることが戦略的な脆弱性として意識される中、対外経済関係を「一極依存」にしない必要性が語られました。
その意味で今回の動きは、中国本土市場へのアクセスを含む選択肢を増やしつつ、摩擦が起きたときに「話し合いで戻れる道」を確保する試み、と読むこともできます。
これからの焦点:数字よりも「実装」と「対話の持続」
今後の焦点は、合意の見出しの大きさよりも、実務がどこまで回り続けるかです。特に注目点は次の通りです。
- EVクオータの運用:台数枠の設定が市場にどう影響するか、拡大の条件がどう設計されるか。
- 農水産品の調整の具体化:関税の引き下げ・撤廃がどの品目・どの手続きで進むか。
- 閣僚級委員会の実効性:政治状況が揺れても、協議が止まらない仕組みになり得るか。
関係改善は、劇的な一回の握手よりも、手間のかかる「運用」で測られます。今回敷かれた“新しい線路”が、次の案件を運ぶ路線として機能するのか。2026年の国際ニュースとして、そのプロセス自体が注目点になりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








