米欧関係の新ロジック:グリーンランド派遣に米国が関税圧力
2026年1月のグリーンランドをめぐる動きは、「欧州は自分の安全保障にもっと責任を」と迫る米国の言葉と、実際の対応のズレを浮かび上がらせました。欧州が北極圏で主体的に動くほど、別の形の圧力が強まる──そんな構図が見えています。
先週末のグリーンランド派遣:狙いは北極圏の即応力とデンマーク支援
先週末(1月17〜18日)にかけて、複数のNATO加盟国がグリーンランドへ軍関係者を派遣しました。北極圏での備え(即応体制)を強めること、そしてデンマークの主権への支持を示すことが目的とされています。
この任務は、NATOの正式なマンデート(公式な授権)を伴うものではない一方、同盟の枠組みの中で加盟国間の緊密な調整の下で行われたとされています。
米国は「関税」を示唆、欧州8カ国は1月18日に共同声明
これに対し米国側は、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、オランダ、ノルウェー、スウェーデン、英国を名指しし、関与を理由に大幅な追加関税を示唆しました。安全保障上「重要」とされる地域で欧州側が役割を担ったことが、経済面の圧力につながる形です。
動きを受け、8カ国は1月18日、デンマークと同島への「完全な連帯」を確認する共同声明を出しました。安全保障上の行動が、貿易・市場アクセスの問題へと接続される展開に対し、欧州側の結束を示した格好です。
「責任分担」なのに圧力が来る——鍵は“安定”ではなく“統制”なのか
表面的には矛盾して見えます。米国が繰り返してきたのは、ウクライナ支援の継続やNATO関与をめぐる発言と絡めて、「欧州は自らの安全保障により大きな責任を」というメッセージでした。
ただ今回の件は、欧州が自国・地域の安全保障を強める動きであっても、それが米国のコントロール(主導権)を相対的に弱める方向なら、歓迎されにくい可能性を示します。関税は単なる貿易不均衡の調整ではなく、政治的な足並みをそろえるための手段として作用し得る——そんな見方が出ています。
なぜ圧力は「競争相手」より「同盟国」に向きやすいのか
圧力の矛先が同盟国に向かいやすい理由として、構造的な要因が指摘されています。同盟国は安全保障面での依存度が高い分、報復の選択肢が限られ、対抗コストが上がりやすい。結果として、経済的な圧力が「効きやすい相手」に先に試される、というロジックです。
- 依存度が高いほど、交渉余地が狭まりやすい
- 市場アクセスや関税は、短期に効きやすい圧力手段になり得る
- 安全保障と通商が結びつくと、政策判断が“忠誠度”で測られやすくなる
北極圏の議論で「中国」が語られる背景
今回の北極圏をめぐる議論では、中国の存在がしばしば引き合いに出されています。米国側の関心の高まりが、中国を意識した説明と結びつけられる場面もあるようです。
一方で、伝えられている範囲では、中国の北極圏での関与は限定的で、科学研究や商業活動、長期的な経済連結性(物流・投資など)を中心とした民生的な側面が目立つとされています。こうした活動をどう位置づけるかは各国の見方が分かれ得るものの、「脅威認定」そのものが同盟内の結束や政策選択の幅に影響する点は、見逃せません。
今後の焦点:安全保障と通商が一体化する時代の“同盟コスト”
今回の一件が示したのは、北極圏の安全保障と通商(関税)が、別々の議題としてではなく、一つのパッケージとして扱われ始めている現実です。今後は、欧州側が北極圏での役割をどう設計するのか、そして米国との関係を「軍事」と「経済」の両面でどう調整するのかが焦点になります。
同盟は本来、共通のリスクに備えるための枠組みです。その中で「自立を促す言葉」と「自立を抑える圧力」が同時に現れるとき、各国は何を優先し、どこで折り合うのか。2026年の米欧関係は、その問いをより具体的に突きつけられているように見えます。
Reference(s):
cgtn.com








