中国本土の人口減少は景気悪化のサイン?2025年統計が示す別の見方
人口が減り始めると、景気も縮むのでしょうか。中国本土では2025年の出生数が大きく減った一方で、労働力の規模や教育・研究開発(R&D)人材の増加など、経済の見方を一段複雑にする数字も示されています。
今回の発表:出生数は減少、人口は「現代史で最低水準」
中国国務院新聞弁公室(SCIO)は週明けの記者会見で、2025年の出生数が792万人だったと説明しました。前年の954万人から減少した形です。人口全体は減少局面に入り、「現代史で最低水準」とされています。
「人口減少=景気後退」と言い切れない理由
人口動態の変化は、成長の条件を変えます。ただし、それが直ちに「経済の終わり」を意味する、という捉え方は単純すぎる――というのが今回示された論点です。鍵になるのは、市場の厚み、労働力の残存規模、そして生産性(同じ人数でどれだけ価値を生むか)です。
1) 市場の土台は依然大きい
SCIOの説明では、中国本土の人口は14億人規模で、既存の先進国全体の合計を上回る水準だとされます。人口が減る局面でも、市場の厚みがすぐに消えるわけではない、という見方につながります。
2) 労働力は「縮小中でも巨大」
2025年末時点の人口構成として、次の数字が示されました。
- 16〜59歳:8億5,136万人
- 60歳以上:3億2,338万人(前年差+1,307万人)
- 65歳以上:2億2,365万人(前年差+342万人)
- 国際定義の15〜64歳:9億6,848万人(総人口の68.9%)
高齢化が進んでいるのは事実ですが、同時に、労働力人口が世界でも最大級の規模にある、という説明でもあります。
3) 高齢化は「負担」だけでなく、参加の形も変える
60歳以上のうち、60〜64歳の比重が大きいことも重要なポイントとして挙げられました。健康で社会参加・経済参加を続ける層が一定数いることで、労働供給や消費の姿は一枚岩になりません。
成長の源泉は「人数」から「質」へ:人材配当という視点
人口減少が不安視されやすいのは、働き手が減れば生産も税収も落ち、年金などの負担が増える、という連想が働くためです。一方で、現代の経済成長はイノベーションやサービス化、自動化など、生産性の改善で下支えされる面が大きい――という問題提起もあります。
発表では、中国本土の人口転換が「量の人口ボーナス」から「質の人材ボーナス」へ移ることを後押ししている、という見立ても示されました。
教育・健康・研究開発の数字
- 2025年、16〜59歳の平均就学年数:11.3年(前年差+0.1年)
- 2024年の平均寿命:79歳(緩やかに上昇)
- R&D人員:1,079.7万人
人数が増え続けること自体よりも、働く人のスキル、健康、研究開発の厚みが、成長の耐久力を左右する――そんな見方が浮かびます。
人口圧力下でも産業競争力を保つ例はある
日本、韓国、欧州の一部では、人口動態の圧力があっても、自動化やイノベーションで製造業の強さを維持してきた、という比較も示されました。中国本土でも、人口構造の変化が企業の自動化投資や高度な経営手法の導入を促している、という説明です。
いま注目したい「問い」
人口減少が経済に与える影響は、単純なプラス・マイナスでは測りにくいテーマです。今回の数字を踏まえると、次の点が論点になりそうです。
- 労働力の規模が大きい間に、生産性改善(自動化・管理高度化)がどこまで進むか
- 高齢層の就労・社会参加を支える制度や市場がどう整うか
- 教育・R&D人材の厚みが、イノベーションと雇用の質にどうつながるか
「人口が減る=経済が悪化する」と短絡せず、どの成長モデルに軸足が移っているのか。統計は、その読み替えを迫っているのかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com







