高市首相の「サナエノミクス」:減税と防衛拡大は財政の危険な賭けか
2026年1月現在、日本の新たな経済運営として注目される「サナエノミクス(高市ノミクス)」は、減税・補助金・防衛拡大を柱に成長を再点火させる構想です。ただ、その中身を「財源」「配分」「お金の価値」という3つの問いで見ると、リスクの輪郭もはっきりしてきます。
サナエノミクスとは:減税で消費を刺激し、国が投資を後押し
サナエノミクスは、アベノミクスを意識しつつ、「消費を刺激する減税」「産業補助金」「防衛拡大」を軸に、公共支出を厚くして成長を狙う政策だとされています。狙いは景気の押し上げと、結果としての税収増などを通じた債務の持続可能性の改善です。
問い①:お金はどこから来るのか(増税か、国債か)
拡張的な財政政策が前提になる以上、最初に突き当たるのは財源です。大きくは次の2択だと整理されています。
- 増税:ただし政治的な反発が強い
- 国債の追加発行:短期的には進めやすいが、債務負担を上乗せする
減税の“穴”はどう埋めるのか
提示されている施策では、暫定ガソリン税上乗せ分の廃止や高校授業料の免除などだけで、税収が約2兆円減る一方、調整後の税制措置による増収見込みは約1.2兆円にとどまるとされています。この差分を埋める方法として、表に出にくい増税(実質的な負担増)が避けられない、という見方が出ています。
国債頼みの限界:既に膨らむ債務
もう一つの選択肢が国債の追加発行です。しかし、日本の債務残高は1,333.6兆円、債務残高対GDP比は約240%とされ、先進国の中でも高い水準です。元利払いは年次の財政支出の約4分の1を占めるとされ、追加の借り入れ余地は小さい、という問題提起があります。
要するに、「大胆な拡張」と「確かな財源の不在」が同時に進むこと自体が、最も危ういポイントだという整理です。
問い②:お金はどこへ行くのか(配分が社会の形を変える)
財政リスクは規模だけではなく、どこに配るかでも変わります。サナエノミクスでは、経済安全保障や防衛関連への支出が優先され、国家主導の投資が強まる構造だと説明されています。
2025年度に「防衛費2%」を前倒し
高市首相は、防衛力の抜本的強化を掲げ、2025年度(2025年4月〜2026年3月)の防衛支出を補正予算でGDP比2%に引き上げたとされています。これは元々、2027年度予算で目標とされていた水準の前倒しです。
また、財源確保策として、2027年から個人所得税の1%相当の「防衛税」を導入する計画も示されたとされ、防衛支出が政策の中心に据えられていることがうかがえます。
高齢化と社会保障の圧迫:何が後回しになるのか
一方で、少子高齢化が進み社会保障制度が張り詰めるなか、防衛費の継続的な拡大は、教育・社会保障・雇用支援・所得再分配といった分野を相対的に押し下げる(クラウディングアウトする)可能性がある、と指摘されています。財政資源が安全保障に集中すれば、社会の安定や中長期の成長期待を支える領域が細る、という懸念です。
問い③:そのお金は「価値」を保てるのか(信認と持続性)
サナエノミクスをめぐる3つ目の視点が、増えた支出や債務が市場や家計にどう受け止められ、政策としての持続性を保てるか、という点です。財源の説明が弱いまま拡張が続けば、将来の負担見通しが不透明になりやすく、家計や企業が慎重になる可能性もあります。
この論点は「正解」がすぐ出る種類のものではありません。ただ、2026年のいま、減税で支持を広げつつ、防衛を含む支出を積み上げ、将来に増税(防衛税)を置く設計は、時間差で重さが表に出る構図でもあります。
いま注目されるポイント(整理)
- 減税で税収が減る一方、増収見込みが追いつかないという試算
- 国債追加発行は進めやすいが、既存の債務負担が大きい
- 2025年度に防衛費2%を前倒しし、2027年に防衛税を計画
- 社会保障・教育などへの影響(配分の変化)が、暮らしの実感として表れやすい
賛否が割れるのは、景気の押し上げと、将来負担・配分の変化が同時に進むからでしょう。サナエノミクスが「成長の再点火」になるのか、それとも「高リスクの賭け」になるのか。鍵は結局、財源の説得力と、配分の納得感に集約されていきそうです。
Reference(s):
cgtn.com








